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2005.2.24 |
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メディシナルケミスト不足…天然物の分子、コンビケムにより合成した分子、医薬品分子の3者の差が、データとして明瞭に示されたのは2003年のことである。(1)“By mimicking certain distribution properties of natural compounds, combinatorial products might be made that are substantially more diverse and have greater biological relevance.” これで、企業にとって、創薬の当座の重点課題が明らかになった。 職人芸的能力を持つメディシナルケミストが研究の鍵を握ることがはっきりしたのである。有能なメディシナルケミストの増員が至上命題になったといってもよいだろう。(2) しかし、もともと「メディシナルケミストリー」という明確な課程は、日本の大学には用意されていない。 複合的な分野だから、産業界から要求されない限り、自動的にカリキュラムは生まれないのである。 しかも、技術進歩は著しい。大学は変身を迫られていると言えよう。 ところが、医薬品企業が求める「化学」は「メディシナルケミストリー」だけではなく、反応プロセス最適化を狙う従来型の分野もあるため、どのように対応すべきか考えあぐねているように見える。 見つかった医薬品分子を販売可能価格に下げるためには、反応プロセス最適化も確かに重要だからである。特に、最近の分子は立体構造的に複雑化してきたから、この技術も結構重要なのである。 だが、こうした工業化学のセンスでは、「メディシナルケミストリー」には全く対応できない。確定した化学品の合成ルートを改良して、収率を上げる点で熟達しても、創薬能力向上に繋がらないからである。 と言うのは、「メディシナルケミストリー」に要求されるスキルには、“センス”が含まれているからだ。経験が長いからといって能力が高いとは言い切れないのだ。 その上、対象範囲は広い。 もちろん、最低不可欠なのが、高度な有機合成のスキルだ。但し、様々な化学反応の経験が必要なのではなく、反応を検討するゼネラルなスキルを身につけていれば十分である。ここら辺は、大学で真面目に研究していれば十分力がつく筈だ。 ところが、これに加えて分子設計のセンスが要求されるのである。 もちろん、コンピュータを駆使する力がなければ知恵も湧かない。コンピュータを駆使して、新しい構造を考え出す力が問われているのである。 ところが、この能力を獲得するため、大量にゼネラルな知識を詰め込んでも、たいした効果はないことがわかっている。肝要なのは、様々な情報を総合化する能力なのだ。 服飾デザイナーと同じで、基本ができていない人は埒外だが、長年経験を積んだからといって、素晴らしいデザインができる訳ではない。 あくまでも、センスが重要なのだ。もちろん、センスといっても、経験からくる勘というより、洞察力と閃きが重要となる。そのためには、実験データと既知情報を組み合わせて解析するツールを駆使する力は不可欠といえる。 さらに厄介なのは、この上、コンビケムの活用能力も必要なのである。コンビケム無しでは仕事にならないからだ。 闇雲に、大量の新物質をコンビケムで作って測定しても無駄とわかっているから、大体この辺に素晴らしいモノがあるとわかったら、コンビケムで絨毯爆撃を繰り広げるのだ。この力を借りずに開発に成功することなど考えられない時代である。いかに、最適な分子を早く見つけるかの競争を繰り広げているのだから当然だ。 要するに、メディシナルケミストリーは戦略的役割を果たすことになったのである。 ・どのような化合物を、どのような方法で作るか? ・多種多様な化合物を、どのように揃えるのか? ・短時間で化合物ライブラリーを構築するには、どのような体制で進めればよいか? 日本での一番の問題は、このような質問に答えられる人材がどこにいるのか、はっきりしていない点にある。又、どうやって育成すべきなのかも、余りわかっていない。 --- 参照 --- (1) Feher M, Schmidt JM :J“Property distributions: differences between drugs, natural products, and molecules from combinatorial chemistry” Chem. Inf. Comput. Sci., 43, 218-227, 2003 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=pubmed&dopt=Abstract&list_uids=12546556&itool=iconabstr (2) 創薬作りの流れ: 1. まずは、狙うべき化合物の骨格が与えられる。 2. その化合物の不満足な部分を検討する。 3. 狙うべき特性を決め、新たな化合物を設計する。 4. 合成経路を設計し、試行する。 5. 多種の化合物を揃える。 6. どの化合物が目標に届いているか、試験(アッセイ)を依頼する。 7. 試験結果を見て、化合物を再設計する。・・・ 理屈では、何度も繰り返せば、いつか素晴らしい化合物に出会うことになる。 しかし、センスが悪いと、試験をいくら行ってもなんの成果も得られないのが普通だ。 又、非効率な作り方だと、多種の化合物を作出するのに時間がかかりすぎ、見つかった頃は他社に先行されていたりする。 単なる人海戦術では、時間と金の無駄になりかねないのである。 ゲノムの時代の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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