|
↑ トップ頁へ |
2005.5.24 |
|
|
|
ヒトクローン実験のバリア…ソウル大のHwang Woo Suk(黄禹錫)教授らが脊髄損傷や1型糖尿病患者の体細胞を使ったクローン胚から、胚性幹(Embryonic Stem)細胞系を樹立した。(1)2004年2月の初クローンに引き続く快挙だ。今度は、初のテーラーメイドES細胞の登場と言えよう。10〜20個の卵子で成功するようだから、技術はかなり成熟してきたのは間違いない。 Hwang教授は、もともとは獣医学分野の研究者だったらしいが、牛で徹底的に磨いたクローニングのスキルをヒトの領域に広げたことで成功したのだろう。 欧米流のスマートな正統派科学者という感じではなく、猛烈に働く実験実務者という印象だが、これが成功の鍵でもあろう。(2) ともあれ、ここまで科学が進歩すると、実験によっては倫理的な危うさも生まれるが、疾病がどうして引き起こされるのかわかってくる可能性は高い。 治療法開発の期待がわいてくる。 (もっとも未分化細胞による癌化リスクがあるから、ヒト臨床実験に踏み切るのは簡単なことではない。) お陰で、今や“時の人”である。 ES細胞分野の研究は競争が激しい。その結果、手法は格段に進歩した。しかし、それでも職人芸的な細かさが必要で、面倒な作業が多いと言われる。 ヒトES細胞になったからといって、実験が格段に難しくなる訳ではないようだが、種が異なると最適条件が大きく変わる。そのため根気がいる研究になる。それに、やっかいなのは、不妊治療(体外受精)で余る精子・卵子・受精卵の入手問題だ。このバリアは結構高い。今回の成果も、200個近い卵子を使っている。 要するに、よく訓練された人手とサンプル入手のコネ(認可)がないと、力の発揮しようがないのである。 韓国での研究体制は、こうした観点では、圧倒的な優位らしい。 どこまで本当かわからないが、資金援助は膨大で、問題なくサンプルも入ってくる上、半導体試作のような流れで、100人を越す専門家による完全分業の体制が敷かれており、24時間実験が行われているとの話をきく。 これでは、小規模ラボが太刀打ちできる訳がない。 Clinton政権時代は、米国の大学がES細胞樹立の先頭を切っていたが、Bush政権で逆風が吹いて、急速に萎えてしまった感じがする。 (ヒトES細胞系を最初に樹立したのはウィスコンシン大のJames Thomson教授. 1998年のことである. その後, NIHがES細胞系を提供するようになった.) 今回も、Hwang論文発表の翌日(2005年5月20日)、米国大統領が間髪をいれずに反応した。 そのまま引用すると、・・・(3) PRESIDENT BUSH: I'm -- first, I'm very concerned about cloning. I worry about a world in which cloning becomes acceptable. Secondly, I made my position very clear on embryonic stem cells. I'm a strong supporter of adult stem cell research, of course. But I made it very clear to the Congress that the use of federal money, taxpayers' money to promote science which destroys life in order to save life is -- I'm against that. And therefore, if the bill does that, I will veto it. 要するに、受精卵を殺すような研究助成法案に対しては断固拒否権を発動するというのである。 ヒトクローン研究反対の姿勢を貫く堅い決意を示したのだが、イラク派兵や国内経済問題に比べれば、バイオ産業を牽引する科学技術の振興策などたいした意味はないと考えているともいえる。 もっともこれは連邦政府の政策であり、州政府は別な方針をとることができる。 カリフォルニアは州法を制定し、独自に研究助成を始めた。しかし、その一方で、制限をかけたり、原則禁止の州も多い。これでは、なかなか歯車がうまく噛みあうまい。 韓国との共同研究の方が合理的かもしれない。 ちなみに、独、仏も規制派と見てよいだろう。 ゆるいのは、東アジアの韓国、中国、日本と、英、イスラエルといった国々だ。(4) 今のままなら、こうした国々が先を進むことになりそうである。 --- 参照 --- (1) “Patient-Specific Embryonic Stem Cells Derived from Human SCNT Blastocysts” Science, 2005年5月19日 [有料] (2) http://www.nature.com/nm/journal/v11/n5/full/nm0505-464.html (3) http://www.whitehouse.gov/news/releases/2005/05/20050520-1.html (4) http://www.practicalbioethics.org/050405/FINALStemCellBrief032205.pdf ゲノムの時代の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
|
|
(C) 1999-2004 RandDManagement.com |