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日本のIT戦略
IPv6の意義とは
政府は平成14年度の事業として、IPv6利用の実証実験「e!プロジェクト」を推進してきた。情通審の情報通信政策部会でもIPv6移行のロードマップ作りがなされ、まさに官主導の新インフラ作りがまっさかりといえる。産業界もこの動きに応えて、世界最高のIPv6ルータを開発した。
次世代インフラ構築で先を走れば、国内産業活性化と国際市場でのシェア拡大の両方が一気に実現でき、不振なIT産業界が一気に活性化される、と考えているのだ。
しかし、用語の「IPv6」を「ISDN」に替えれば、かつてと同じ施策に見える。再度、世界に率先して、次世代インフラ作りを始めるらしいが、ISDNの二の舞になる恐れはないのだろうか。
少しでも技術がわかる人なら、IPv6が優れているのはわかる。従って、アカデミズムがこの技術を追求し、ビジネス界が支援する構図に、反対を唱える人はいまい。
しかし、アカデミズムの研究開発促進の話しと、次世代インフラ構築とは性格が違う。
アカデミズムが開発した技術は、コストがバリアとなり普及しないこともあるし、具体的な応用が見つからないことも多い。それでも、イノベーションが生まれる土壌を維持できるから、研究開発支援には、十分な意義がある。
同じ思想で、ビジネス界に適用する訳にはいかない。インフラで先行しても、利用者がいなければ収益があがらない。そうなれば、競争力向上どころか、ますます低下する。政府の支援策が逆効果になることもある。
企業は、リターンが期待できない投資に踏み込んではならないのだ。鉄則である。
従って、インフラ構築を始めるつもりなら、IPv6が実りある投資対象と言える証拠を見せるべきだ。
ところが、現時点でも、IPv6への投資メリットは曖昧である。次世代の主流になる条件が揃っているとは言い難い。
典型は、喧伝されたアドレス枯渇問題だ。端末すべてにアドレスを付与するつもりなら、IPv6は不可欠だが、そこまで社会が進んでいるとは思えない。社会全体にメリットがあると感じさせる利用シーンは提示されていない。
一方、1つのグローバル・アドレスを数百もの多数で共有できる仕組み、「NAT技術」が広く普及しており、通常の利用では問題が発生することはない。企業内のネットワーク管理者にすれば、アドレス増は管理コスト上昇を意味する。IPv6は、メリットより、デメリットの方が目立つ位だ。
要するに、アドレスが無ければどうしてもこまるのは、特例なのである。(例えば、「NAT技術」では、インターネット対戦ゲームには対応できない。)
一般に、IPv6推進者は、「NAT技術」をひどく嫌う。ネットワークの複雑化を阻止したいのである。
同様な理由で、キャッシュ・サーバーによる配信サービスをネットワーク上に設置する動きも問題視する。
こうした主張は間違っている訳ではない。正当な主張と言える。
しかし、一般利用者は、ネットワーク構築や環境設定を、自分で行うわけではない。ネットワークがいかに複雑化しても、利用方法や結果で差が無いなら、進んだ仕組みである必要などない。
IPv6導入で利用料が格段に安価になるなら、絶大な支持が集まるだろうが、現実は逆である。IPv6を導入するには多額の投資が必要だが、見返りは僅かである。これでメリットがあると考える人は稀といえよう。
にもかかわらず、IPv6を推進するなら、理想論の追求と言わざるをえまい。IPv6の導入で、P2Pですべてがつながる統一されたプラットフォームを実現しよう、との「思想運動」である。
確かに、シンプルな構造なら、ネットワークの拡張も簡単にできる。理論上、管理が楽になる。と言えないこともない。
しかし、ドグマは危険だ。この思想から見れば、ファイヤウオールや不要な情報流入を阻止するフィルタリングも有害となる。セキュリティはEnd-to-endで実現すべき、という建前論が前面にでてくる。
妥当に聞こえるかもしれないが、すべての端末が直接外部に接続する状態でEnd-to-endのセキュリティの話しである。下手をすると、情報が外部に筒抜けになりかねないリスクを、すべての端末が負うことになる。万全なセキュリティ対策をほどこせば、その費用は膨大となろう。現実的には対処など、できまい。
以上は、前からわかっている話しだ。
にもかかわらず、ビジネス界がIPv6を支援しているのは、政府による「不況」対策公共事業期待としか思えない。実際、「不況」は深刻である。光ケーブルのお蔭で通信容量は膨大に増えたが、それに見合った通信需要量増加は無い。需給ギャップがありすぎる。
このギャップを埋める知恵が浮かばないから、政府に頼るのであろう。このような産業が発展するだろうか。
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