Linuxの将来を考えるなら、イデオロギーの正当性を語るより、現実を見て、メリットをはっきり示すことから出発すべきだと思う。
→ 「1: 先ずは脱イデオロギー」
現時点で、Linuxが主に使われている領域ははっきりしている。無償のLinux上で無償のウエブサーバソフトApacheを稼動させるタイプである。
ここでは、商用UNIXと競争していると言ってよいだろう。
商用UNIXは、ベンダーがコンピュータ・ハードメーカーであり、ベンダー開発のCPUでしか動かない。このようなハードは高価である。
一方、Linuxは安価なハードでも走る。とても勝負にならない。一度、Linux-Apacheを使うと、要求が高度になっても、商用UNIXへの転換を図らず、ハードだけを高性能化することが多い。Linuxはメインフレームから、パソコンまでほとんどのCPUに対応しており、若干の対応で移植できるからである。
しかし、それほど高度な仕様が必要でない場合は、Windowsもよく使われている。もともと、他のサーバで利用しているから、ウエブサーバもWindowsになったと思われる。
収益好調な企業なら、無償のLinuxと無償のサーバソフトというだけでは、ほとんどメリットにならない。ハードのコストは同じだから、複数のOSを管理したくないのである。慣れ親しんでいるOSなら、既存人材でも対処できるが、新たにLinuxを学ぶコストや、新規人材登用を図れば、そのコストは小さくないから、当然である。
この状況を見ると、Linuxは、メインフレームやワークステーションといった高度な処理を要求される、高額なハードを用いている分野に浸透し易いと言えそうだ。
ハードが高価なので相対的にはOSが無償という意味は薄れる。しかし、どのCPUでも稼動するから、Linuxの基本スキルがすべての領域で生きてくる。システムすべてをLinuxで対処できる可能性があるということだ。
こうなると、システム構築は極めて楽になるし、構築した情報資産の移植も簡単になる。柔軟な構造になるから、構築費用もメインテナンス費用も削減可能だ。
まだ理想論に近い部分も多いが、こうした時代が迫っているのは間違いあるまい。
| IBM の eServer 製品ライン |
| ハード |
独自OS |
名称 |
IAサーバー (インテル構造CPU) |
OS/2 |
xSeries |
UNIXサーバー (RS/6000) |
AIX |
pSeries |
統合アプリケーション・サーバー (AS/400) |
OS/400 |
iSeries |
エンタープライズ・サーバー (システム390) |
z/OS (旧MVS) |
zSeries |
実際、LinuxのプロモーターであるIBMを見ると、メインフレーム時代からの方針、R
(Reliability)A
(Availability)S(Serviceability)を堅実に守りながら、すべての製品ラインでLinux化を終えている。
(尚、メインフレームでは、ディスクの別パーティションでLinuxを立ち上げる仕組みである。既存OSを代替する訳ではない。)
(http://www-6.ibm.com/jp/linux/hardware/)
顧客の要望があれば、どのハードでもLinuxを提供できる仕組みを立ち上げたのである。
メインフレームと共存できる仕組みを構築することで、顧客が保有しているIT資産を維持する姿勢を示したといえる。
アプリケーションを構築すれば、どのハードでも稼動できる体制を準備している訳だ。これが、IBMの「eServer」構想といえよう。
つまり、IBMは、Linuxを世界共通のインフラ化させ、Linux上で動く自社独自のミドルウエア群で勝負をする戦略に出た訳だ。
こうした流れは加速化されている。さらに先のハードが見えてきたからだ。
クラスター・コンピューティングである。安価なパソコンをクラスター化するだけで、高性能化が可能であり、ハードの価格は益々下がる。
各社独自OSのメインフレーム時代から、UNIXベースの独自サーバとWindowsパソコン時代に移ってきたが、さらに、Linuxのクラスター型コンピュータ時代が到来すると予想される訳だ。
この変化が激動を呼ぶのは間違いない。
誤解を恐れず、価格の感覚でその衝撃度をを示せば、メインフレームのシステムは3億円、サーバのシステムが3,000万円、クラスターなら300万円ということになろう。
実際、2003年12月には、HP Integrity rx5670を用いたクラスター型コンピューイングが圧倒的な処理能力を示した。OSはRed Hat Enterprise Linux AS 3.0で、Oracle Database 10gを用いた結果である。
すでに実用領域に入り始めたことを示すといえそうだ。
(http://www.oracle.com/corporate/press/index.html?2651475.html)
こうした状況を見ると、Linuxは高度なサーバや、クラスター型コンピューイング用の主流OSとして浸透していく可能性が高い。