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■■■ 曼荼羅を知る [2019.2.19] ■■■
別尊 修法本尊

修法本尊/眷族と関係諸尊・護神で構成される曼荼羅を《別尊曼荼羅》と呼ぶ。いわば抜き出し版である。(十七尊曼荼羅や五部曼荼羅もそう言えないこともなさそうだが、発展版であるのは間違いないので別扱いした。)

但し、それは時間軸的にその通りだが、胎蔵曼荼羅・金剛界曼荼羅が登場して以後の解釈である。もともと、曼荼羅は別尊曼荼羅的なものであり、それを体系化した結果、大曼荼羅が生まれたと考える方が自然だろう。

もともと、密教経典/密教儀軌は顕教経典と違い秘儀満載。衆生救済を旨としている上に、すべての層から呪術が期待されているのだから、当然の結果と言えよう。
 形式:印契・像形・持物
 修法:観想法・護摩/壇法
 聖句:真言・陀羅尼

祈祷が必要となれば、それに対応して新たな方法を作出したのだろうから、数限りない種類が生み出されたに違いなく、社会的要請上重要で満足感が生まれたものが残ったと見てよさそう。

現実的な目的を達成するための"加持祈祷"だから、修法の対象も自ずと幅広くなってしまう。大きくは4つのカテゴリーに分けるようだが、課題は千差万別だからこれでは大雑把すぎるのは間違いない。
 息災法…災害・病苦
 増益法…福徳・繁栄
 敬愛法…和合・友好
 調伏法…対悪霊・対怨敵

と言うことで、別尊曼荼羅は数限りなく存在していそうだが、よく取り上げられる名称を並べておこう。
(参照) "仏に関する基礎知識:別尊曼荼羅"@高野山霊宝館

●仏頂系
《尊勝曼荼羅》
金剛界大日の周囲の八大仏頂の1つ"勝仏頂"が修法本尊。(善無畏 訳編:「尊勝仏頂儀軌修瑜伽儀軌」@#973、不空 訳編:「仏頂尊勝陀羅尼誦儀軌法」@#972)
○○○○○○《尊勝》
○○○○彌勒虚空蔵普賢
○○○○観音大日_○金剛手
○○○○地蔵除蓋障文殊
さらに、右に不動明王、左に降三世明王が配置されるのが、いかにも密教的。
(参照) 佐々木大樹:「仏頂尊勝陀羅尼概観」現代密教 20, 2009年
《一字金輪曼荼羅》
金輪仏頂が本尊。
《大勝金剛曼荼羅》
《摂一切仏頂曼荼羅》


●諸経系
《法華曼荼羅》
宝塔内に釈迦と多宝が並坐。内院八葉蓮華に八大菩薩。さらに周囲に菩薩・声聞・明王・諸天。
《仁王経曼荼羅》
《請雨経曼荼羅》
《理趣経曼荼羅》
《孔雀経曼荼羅》
《宝楼閣曼荼羅》


密教らしさという点では明王や各天を主尊とするものか。
●忿怒系
《愛染曼荼羅》
愛染明王が本尊。一七尊あるいは三七尊。
《安鎮曼荼羅》
不動明王が本尊。八方には天神。安鎮国家あるいは家宅鎮護。
《大威徳曼荼羅》
●天系
眷属が存在しているから、各天毎に曼荼羅があると見てよいのではないか。ただ、大衆信仰と直結しているので、密教の持つ理智的な雰囲気は消えている図絵かも。

顕教の三尊像の発展形とも言えるタイプも多かろう。
●如来系
《釈迦曼荼羅》
《阿弥陀曼荼羅》
《仏眼曼荼羅》

菩薩になると、修行一途ということもあろうから、俄然、密教的な雰囲気になってくる。
●菩薩系
《彌勒曼荼羅》
《八字文殊曼荼羅》
《五大虚空蔵曼荼羅》

○観音
《聖観音曼荼羅》
《千手観音曼荼羅》
《七星如意輪観音曼荼羅》
《不空羂索観自在曼荼羅》

不空羂索観音は変化観音としてはかなり古そう。ところが、名前が知られている割に残存仏像は少ない。[→京都の仏像拝観([2010年11月26日)]ところが、ネパール高原に住むネワール族は不空羂索観自在の曼荼羅を今に伝えているそうだ。三目八臂で大自在天/シヴァ神の習合像とも。敦煌莫高窟に存在するという。
(参照) 佐久間留理子:「ネパールの不空羂索観自在マンダラ――儀軌と布製絵画――」印度學佛ヘ學研究 65(2) 2017年

それぞれの修法の原点は基本的な経典にあり、その母性と憤怒的姿を用いたのが大元との見方も成程感がある。
 息災法…「般若経」釈迦→仏眼仏母---最勝仏頂
 増益法…「金光明教」観音→白衣観音---馬頭観音
 敬愛法…よくわからない。多羅が当たるか。
 調伏法…「華厳経」金剛手→摩摩枳---孫婆明王

(参考) 火供護摩homa儀式:曼荼羅を用いた唸誦法
 息災法śāntika…除貪瞋煩惱或止息國家之災難《佛部》
 揄v法pustika…搨キ定慧之功コ或外在之諸種福コ《寶部》
 降伏法abhicāruka…摧破無明、滅諸災殃《金剛部》
 敬愛法vaśīkarana…無戰亂諍鬥之事,並得諸佛菩薩之庇護《蓮華部》
 攝召法ākarsanī…諸善集生、萬法現集《羯磨部》


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