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「我的漢語」
2018年7月6日

娚文字

女偏という部首はあるが、男偏でまとめられることはない。性で対照的な扱いを受けているとは言い難い。しかし、この性別という概念が曲者である。
 ♀⇔♂
 雌⇔雄
 牝⇔牡
 _⇔
 _⇔𩡶
 _鹿_
 𡚧⇔_
"土"は男性器の象形だろうから、"匕"も同等と思われるが、想像がつかぬ。ともあれ、♀♂ははっきりした概念である。

ところが、女と男という文字になると、そのような生物学的な差違とは無縁で、もっぱら社会で果たす機能的側面から定義されている。
女は跪く象形だし、男は田と力からなる2次的な文字だ。つまり、次元が違う訳である。
 女⇔男
しかし、対照的な文字として扱われてきたのは間違いなさそう。
 娚⇔_
 
 ⇔_
 𤲶
 姦⇔𪟧
 ⇔嬲

但し、男なのに、女偏の文字になっていたりする。
 奴⇔婢
   …"奴"派生文字: 努, 怒, 弩, 駑,
奴隷とは敗戦部族民を意味しただろうから、男は原則殺害されただろう。女的扱いを受けて命を留める手はあったということか。
本質的に男が該当しない場合は対応文字はなくて当然と考えがちだが、それは男系社会通念で見ただけのこと。
 妓
 娼
 娯
 宴
女系なら、男の文字があってもおかしくはないのである。
 ⇔_
 妾⇔_
と言っても、 妊娠や娩といった"女性でなければ"の文字もある訳だが。

男女非対称になっている典型は"夫婦"だ。本来的には"夫妻"の筈である。文字的には、婦は箒を扱う女になっており、"男女"と似た対応関係だ。おそらく、男系の群婚社会なので、婚姻関係で制限がある妻という文字では関係に対応できないのであろう。(婚姻等の文字についてはすでに取り上げたが、それにしても男系には矢鱈にこだわる。)
 妻⇔夫
男居型男系になると、これが一歩進む訳である。
 家内⇔主人

一般的には、男女系の文字は家庭内の用語と言えよう。
女系時代にできた概念が多いせいか、男でも女偏の文字になる場合があるようだ。
 母⇔父
 姫()⇔彦()
 嬢⇔_
 娘⇔(息子)
 _⇔嫡(子)
 姉⇔兄
 妹⇔弟
 嫁⇔婿
 姪⇔甥
 姑⇔舅
 婆⇔爺
 𡚧⇔考
 嬪⇔_
 姨…母の姉妹
 嫉 妬 媚
 =母 妣
 嫂…兄の妻
 [失]
 [今]…母の兄弟の妻
 [公]…夫の父
  or ⇔彼
 娯
ついでに、女偏文字をいくつかあげておこう。
 ⇔_
 ⇔_
 好⇔_
 娶⇔_
 ⇔_
 ⇔義
女偏文字でなく、木偏だが、居住にかかわる文字もご参考に。
 棲()⇔栖…子育てか巣の存在かの差。
 _⇔住…主人が居るということか。男系文字である。

子供を産み育てる系統の文字に女という部位が含まれるから、どうしてもその分漢字の数は増える。しかし、性的魅力とか、感情表現の文字が多いのは、単なる社会的現象で本質的ではない気がする。(桜, 姿, 妙, 妖, 嫉, 好, 嫌, 妨, 威, etc.…)ただ、"如"だけは、いかにも女性的なナヨナヨ感の表現用文字であるが。(恕, 茹, 絮, )
男の文字が少なく、女の文字が多いのは女系時代の名残と見てよいのかはなんとも。そこらを感じるためには、男だけではなく弟も含めて見る必要があろう。概略、以下のようになっている。・・・
  女⇔男⇔弟
《示》𫀁⇔_⇔
《宀》安⇔_⇔_
《人》
《子》𡥃⇔_⇔𡥩
《王》𤣷⇔_⇔
《水》汝⇔𪶀⇔涕
《金》𨦻
《土》_⇔_⇔𡌡
《火》_⇔_⇔
《木》𪱴⇔梯
《雨》𩁻⇔_⇔_
《白》_⇔𤽲⇔_
《虫》_⇔𧋱𧋘
《隹》_⇔𪟦𨿝
《鳥》_⇔_⇔鵜
《魚》_⇔_⇔
《貝》𧴱⇔_⇔_
《亀》⇔_⇔_
《鼠》_⇔_⇔𪕧
《豸》_⇔_⇔𧳋
《月》_⇔_⇔
《目》_⇔_⇔
《鼻》_⇔_⇔𪖦
《口》_⇔𠲸
《髟》髪⇔_⇔
《骨》𩨚⇔_⇔_
《爪》妥⇔_⇔_
《艸》𦬑𦯔
《生》𤯕⇔_
《米》⇔_⇔𥺀
《黍》𪏮⇔_⇔_
《禾》委⇔_⇔
《桑》_⇔_⇔𣜹
《豆》_⇔_⇔𧯪
《瓜》_⇔_⇔𤫼
《食》𩚔⇔_⇔
《臼》_⇔舅⇔_
  _⇔𦥶⇔_
《囗》𡇨⇔_
《門》𨳐⇔_⇔_
《邑》⇔_⇔_
《辛》𨐎⇔_⇔_
_⇔_⇔
《走》𧺜⇔_⇔_
《彳》_⇔_⇔
《言》𫌳⇔_⇔_
《乞》_⇔_⇔𤱘
《見》𫌜𧡇⇔_
《西》要⇔_⇔_
《虍》_⇔⇔_
《而》⇔_⇔_
《片》𤖩⇔_⇔_
《日》𣅓⇔_⇔_
《戸》𢨭⇔_⇔_
《心》⇔_⇔𢚖
  𢖵⇔_⇔
《亡》妄⇔_⇔_
《旧》𪥮𠢎⇔_
𢑒⇔_⇔_
_⇔_⇔
《冖》𠕷⇔_⇔_
《糸》_⇔_⇔
⇔_⇔_

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