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「我的漢語」
2018年7月10日

舟文字一瞥

部首"舟月"の複雑さを眺めたので、ついでと言ってはナンだが、"舟"部の文字を見ておこう。

その前に、フネが発着する場の文字を。船着き場であっても、船が係る土地を表記する"舟"系の文字はなさそうである。・・・
<水[み]な門[と]
 港[巷] 水路のある町
 津[聿] 水面を進むということで、渡し場@川
 湊[奏] お供え物を集める如し
 泊[白] 水深的にかなり浅い
<湖海の水辺の土地>
 浦[甫] 湾曲し陸に入り込んだ内裏側の地(河口付近)
 浜[兵] 砂泥小石の平たく屈曲しない 地(沿岸)
 磯[幾] 岩塊が露出した屈曲しない地(沿岸)

さて、それでは"舟"部へ。

フネの概念はわかっているように思うが、イザ考えてみると極めて漠然としていることがわかる。というのは、数える単位が矢鱈に色々あるからだ。考え方が異なるフネが存在していたことがわかるが、残念ながらすでにそれを説明できる人はいなくなっていそう。・・・
[そう],隻[せき],艇[てい],杯[はい],本[ほん],枚[まい],葉[よう],床[とこ],帆[ほ],台[だい],艦[かん]
ただ、これは大いなるヒントでもある。"本"は丸太の数え方だし、杯は船形盤だ。葉に当たりそうな水上乗り物も思いつく。

と言っても、常識的には文字としては、船そのものの名称だけではない。船の部分や工具備品類、船の運航や状況といった用語がすべて"舟"部に含まれている筈で、そうなると厄介極まる。
小生は、全長5m程度の木造和船を一本櫓で漕いだことがあるので、そう思うのだ。櫓の取り付け部の穴や出っ張りにも名前があるし、もちろん舟の各部にも耳慣れぬ名称が付いていた。そんな名称、関心が無いととても覚えられるものではないのである。(訓か音かも、さだかではなかった。)
マ、舟の名称も含め、ほとんどの用語は遠の昔に死語化していておかしくないから、眺めてもそれこそ五里霧中的にならざるを得ないかも。

そうそう、特に気になることと言えば、この名前。
"須慮"
  方舟航、買儀塵者、越人往如江也。
   治須慮者、越人謂船為須慮。[越絶書巻三呉内伝第四維甲令]


それは置いておくことにして、船の名称を並べてみよう。以下、すべての項で言えることだが、どこまで正しいかは全くわからないので、そのおつもりで眺めて欲しい。・・・
[白][帛] おおぶね
 海中大船[「廣韻」白]
[隻][]
  良工妙圖冩[「白蓮集」卷第十艘叟]
[監]…(盥状防御板)
  上下重床曰艦[「釋名」釋船]
[延]…(細長い)
  小舟也[「説文解字」]
[舞]…長艇
[帶]…2本柱艇船
[了]…小船 [鳥][了]
[甲]…小船
[青]…軽舟
[雙]
  春風低唱木蘭。[「花月痕」]
[凡]
  落日舟泊晩晴酒茅屋[「石倉歴代詩選」]
[]…(神意に沿って分流に乗る)ship
  陸行乘車,水行乘船,泥行乘橇,山行乘。[「史記」夏本紀]
[■]…一般的にはboat
  古者,共鼓、貨狄,刳木為舟,木為楫,以濟不通。[「説文解字」]
[反]…小型交通船
  遠去。[「全唐詩話」卷四]
[刀][兀]𦩍[周]…ナイフ形船
  蜑艇蠻,出沒風濤[「太平廣記」採藥民]
𥴣[竹+]…簾屋根の船
[山]…甲板無しの渡し船
[孚] はしけ
[良][芻]…大船
[𦐇]…〃
[習]…大船に繋ぐ小舟
[叉][差]…小船
[歩]…〃
[冒]…小さな[差]
[卓]…手漕ぎ船
[公]
[方]…舫い船
[古]…河川用戦船
[江]…〃
[童]…戦船
[蒙]…〃
[令]…家船
[雪]…雪舟、詰まり、橇(そり)
[度]…機動船牽引の客船
[]…合木船
[告]…天子
[宗]…船団
[旁]…二艘繋
[造]…船浮橋
[冨]/[富]…大量積載船
例えば、ShipとBoatはどう見てもマネジメントが全然違う訳で、これを大きさの違いとすることが多いがどうかナ。
どんな視点で分けているかを見ると、社会風土が想像できるのだが、残念ながらわかりにくい。しかし、漁民的文化はなさそうである。例えば、網舟と方舟の一組で漁をするものだが、そのようなコンセプトに沿うようにはなっていない。
それと、果たして一般名詞かも、はっきりしない文字も少なくない。

以下は、なんとなくだが、一種の固有名詞に近そうな舟の名前。
現代は、「第X○○丸」が多いが、注文仕様と言っても五十歩百歩の差でしかないから、車的に呼んでもよいが、愛称が習慣なのであろう。漁民の場合は網元の名前を冠するのではないかと思うが、もともとはそれぞれの部族が工夫して独特の舟を建造していたから、固有名詞的普通名詞としての船名が存在していたに違いない。(船名として登場していそうな単語は数多いが、それが何かはほとんどわからないようだ。)
"[工][夅]"
"𦨜[戈]"
"[乍][孟]"
"[巴]脚"
"[比]𦪭[達]"
"𦨢[氏][當]"
"[句]𦪇[鹿]"
"[付][符]"
"[共]"  越人乘舟浮江湖[「群書治要」主術]
"𦨻[光]"  𦨻船客愁遇酒退三舍梅信与春開
"[兆][可]"
"[弟]"
"[][雙]"
"[里]𦪆[基]"
"[其]𦪆[基]"
"[余][皇]"
"水[居]"(生活舟か?)
"[宛]𦨨[]"
"[侖]𦩞[]"
"[首][益]"(ボロ舟か?)
"[扁]"…呉の舟  水___舊作大處。[「水經注」]
"[]"  驛船迎。[「唐宋詩醇」卷二十四]
"[冒][宿]"(泊まれる小舟か?)
"𦪷[墨][冒]" "[婁]"  滿江櫓與旌旗。[「全唐詩」晉 新亭]
"
[]"  江中大船。[「廣韻」燿]
"[]"  塗丹焉[「顏氏學記」]

ここからは、船の部品、部位、等々に係る文字。一般人には、馴染みは薄いが、今でも使われている文字も多い。・・・
𠄭[二]=亘…端から端迄繋ぐ弦
[戸] とも
[盧]
[玄] ふなばた
[由] へさき
[嗇] ほばしら
[將][]…櫂かい(櫂)
[魯][][并]…櫓(ろ)
[它] かじ[]
[齊]…かい受け軸
[倉][]…船倉
[曹]…船槽
[賁]/船梁
[肖][尾]…船尾
[西][風]…帆
[]…帆的被
𣑮[木]…舟用丸太の楠
[義] ふなよそおい(艤装)
𥦧[穴]…小さな出入口
[令]
  舟上有。[「廣韻」]
[念]…隙間の詰め物
𦨮[代][]…漕ぎ手
𠣘[勹]…隅々まで拡がるカバー≒周

船の運航に係る文字。・・・
[亢(ヒトの首)]…筏代替の渡河
[水]…波紋 or 盤
[火]…火行
[彡]…一列で進む船団
 →𧡬[見+]…船からこっそり窺う
𤭂[瓦]…船体不安定
𦨉[]=𦨇[乙]…左右に揺れる
[]…座礁
[合]…舟動貌
𦨇[乙]…舟行
[太]…〃
[彡]…〃
[育攵]…〃
[止]…前途
 →𣦃…端を切り落とす
𧻖[走]𧽏[叟]…前進不能状況
𦨞[元][中]  那夜船泊江岸,生在中静坐未睡,正在遥憶二嬌。[「駐春園小史」]
[今]𦨽[岑]
[及]…船皃
𦨭[皮]  港口遭風,船𦨭打裂[「台案匯録戊集」]
[]  船著不行也。[「説文解字」]
[見]…船から窺う
𩗋[風]…風を受けて走る

アナロジー的文字展開。限定的である。・・・
[玉]…玉(舟玉だろうか?)
[人]…蔽い隠す 有廱蔽也。[「説文解字」]
𦪈[敖]…ひざまずく
[眷]…美的形状の目
𩢸[馬][叟]…大きな馬
[鳥]…G[@「玉篇」]≒鶚(みさご:海岸近辺岩棲魚食猛禽)
/𥎻[矢] くるりや…水鳥狩用矢
𥮙[竹]…水時計の矢形の針
𦐩[羽]…指揮用軍旗"羽旄"の別称(水兵団用か)
𧊓[虫]…日暮(蝉) 船に群がったか。
[豸]…狸的民族"貊"(高句麗系)に属す扶余(後に百済)か?
[車]…馬車の轅
[邑]…北天竺の小国@「酉陽雑俎」

情報不足で未検討。勝手な推定なら可能だが。・・・
𦨑[才]
𦨴[同]
[朶]
[夸]
𦩂[𠂉疋]
[]
𦩚[枚]
𦩛[具]
𦩑[来]
𦩒[亞]
𦩘[定]
[肩]
𦩰[重]
𦩳[者]
𦪂[徒]
𦪃[]
𦪌[寄]
𦪏[通]
𦪐[]
𦪦[掌]
[登]
𦪨[𧾷吏]
𦪵[箕]
𦪻[寛]
𦪼[稽]

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