■■■ 「說文解字」「爾雅」検討[15aa釋蟲]■■■
釋蟲記載の≪醜≫使用の別名を採り上げたが、釋草 釋木でも名称が記載されているから、極く基本的なものの見方を示していそう。
黎 庶 烝 多 醜 師 旅…【衆】@釋詁
乃立冢土 戎醜攸行@釋天
搴 柜朐 蘩之醜 秋爲蒿
  葦醜 芀
@釋草
槐 棘醜 喬
 桑 柳醜 條
  椒 樧醜 莍
   桃 李醜 核
@釋木
翥 醜鏬
 螽 醜奮
  強 醜捋
   蜂 醜螸
    蠅 醜扇
@釋蟲
  鵲鵙醜 其飛也翪
 鳶烏醜 其飛也翔
  鷹隼醜 其飛也翬
   鳧鴈醜 其足蹼 其踵企
    烏鵲醜 其掌縮
  鳥少美長醜爲鶹鷅
@釋鳥
熊 虎醜
  貍 狐 貒 貈醜
@釋獸
【醜】:可惡[鬼+酉]聲
 ≪酉≫:就 八月黍成 可爲酎酒[象 古文酉之形]
 ≪鬼≫:人所歸爲鬼[人 象鬼頭 鬼陰气賊害 厶]
  e.g.日有食之 亦孔之醜 [「詩經」小雅 節南山之什 十月之交]
   𥆞:目圍[䀠+𠂆] 古文以爲醜字
   𪅳:鳥少美長醜爲𪅳離[鳥+畱]聲
   㚇:斂足 鵲鵙醜 其飛 㚇[夊+兇]聲
   倠:仳倠 醜面[人+隹]聲
   䫶:大醜皃[頁+樊]聲
   頦:醜[頁+亥]聲
   䫏:醜[頁+其]聲今逐疫有?頭
   姡:面醜[女+𠯑]聲
   𡞜:醜[女+酋]聲
   𡠜:𡠜母 都醜[女+莫]聲
   螸:螽醜螸 垂腴[虫+欲]聲
   𧎥:蠅醜𧎥 搖翼[虫+扇]聲
   亞:醜[象人局背之形]
…"みにくい"(”葦原色許男"の"しこ"@「古事記」)という形容詞的に映る言葉だが。厭惡的憤怒という動詞が大元イメージか。 [hateful disgraceful] [ugly-looking] [numerous]

ところが、ここで金文の見方が登場してくるので、厄介なことになる。"ugly"イメージに合うとは思えない象形が浮かび上がってくるからだ。(ここらは注意が必要で、殷代の発掘結果からすると甲骨・金文・筆文は同時代性文字でもあった。金文は文字と図絵の境界についてもはっきり定義できない場合もあるので、そこらも混乱のもとになり易い。)

その文字的図では、上記の<亞>字形(四隅が刳り貫かれた墓室的様相…祖先を歓ばす祭祀場だろう。)内に、<醜>字形的な情景が収められている。饕餮文と呼ぶのだが、コレ、どう見ても、酉(酒壺)の酒を供している鬼らしき祭祀者の儀礼行為の図象。"ugly"イメージに繋がると見なすのはかなり難しそうだし、これが果たして鬼なのかという点でも大いなる疑問が浮かんで来てしまう。(少なくとも、これが鬼とすれば、北東からやってくる死霊[䰤]とは無縁だろう。)
誇示されている青銅器とは"亜醜"方罍(酒甕)ということもあるし。
…釋器でも触れたが、ここらの容器の説明をするとなると、うんざりする。矢鱈に複雑な文字と、訳のわからぬ容器分類が並ぶだけなら我慢もできようが、器の常識に全く当て嵌まりそうにない超芸術品だらけで、文章で云々してもなにもわかる訳がなく、泉屋尚古館所蔵品の細かな写真だらけにして長々と解説でもしない限り、骨折り損のくたびれれもうけだからだ。

最も、面倒を避け、<饕餮>文とは"ugly"イメージそのものと解釈してしまえば、一件落着である。そうなる背景についても気にしない必要があるものの。
天下之民 以比三凶 謂之 饕餮 舜臣堯 賓于四門 流<四凶>{渾敦 窮奇 檮杌 饕餮} 投諸四裔 以禦螭魅 是以堯崩而天下如一 同心戴舜 以為天子 以其舉十六相 去四凶也 [「春秋左氏傳」文公十八年]
  渾敦/渾沌:無七孔=帝江@天山[「山海経」]…鴻/黄帝
  窮奇:有翼人食虎[「山海経」]…少昊
  檮杌:凶悪性情(難訓 傲狠)…顓頊氏子孫
  饕餮:牛身人面…蚩尤

「古事記」では"其姉者因甚凶醜"とか"其弟王二柱者因甚凶醜"という表現になるので、どうしても"ugly"イメージは忌避したくなるという思い込みがあるが、それは島国の箱庭的風土での土着的人間の想いであって、大陸では部族闘争勝利なくしては部族消滅の憂き目確実であるから、"ugly"とは勝利に導く有り難き部族長のイメージだった可能性があろう。
<四凶>とは中国神話とするが、その様な仮装姿を見せつける呪術者の世界があったに過ぎないのではあるまいか。それが忘れ去られたのではなく、宗教革命の結果、トーテム祭祀から宗族祭祀に転換したと考えれば筋が通る。
  

     

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