■■■ 小篆文字検討@「說文解字」「爾雅」[耳]■■■
漢字では無く、 紀元前3000年頃のナイル河地区(エジプト+ヌビア)で使われていた合字型神官筆記文字の話。・・・

石碑記載の象形文字(ヒエログリフ)が余りに有名なので、神官筆記文字は、その派生と思いがちだが、そう考えるべき証拠は無い。しかも、ヒエログリフ筆記体の存在も確認された以上、両者は併存的に造られたと考えるしかない。重要なのは、神官文字は完璧と言えそうな程標準化されており、明らかに正書法が存在していたと考えられる点。
(ヒエログリフは、奉納用であるから、必要に応じて装飾や変体がなされて当然だし、宗教=政治上の忖度での改変も不可欠な筈。一方、神官文字は基本はテキスト用。両者は似てはいるものの、根本理念が違っており、全くの別文字と見なすべきだろう。
さらに、注意が必要なのは、テキスト用文字には、2種類の体系があり、官僚統治の根幹でもある行政用と、文学や科学といった精神性に係る書籍用があり、両者は峻別されていたという点。3者のゴチャ混ぜ分析は避ける必要があるのは自明。…これを考えると、甲骨→金文とするのはいかがなものか。同時期に併存していたのは考古学的に判明している訳だし。卜占用ではなく、甲骨刻でもない、テキスト文字での同時代もしくは古い時代の出土品もあるが、すべて一括りにして議論されるのが普通。これでは、母集団が異なる文字のゴタ混ぜ分析の可能性が強いが、今迄の成果のガラポンはできないからいかんともし難い。小篆のみを厳格に母集団としている「說文解字」の方針はこうした中で輝いている。しかも、見た目の字体に反する字義を平然と記載しているのも切れ味の凄さを感じさせる。もっとも、その部分は誤謬と見なされ検討対象外にされるのが普通。)


20世紀末になってようやくそのことに気付かされた訳だが、そんなことは、2000年近い前に「說文解字」が文字創成の本質として見抜いていたこと。
小篆は対象文字が縦書きなだけで、同様に正書法があり、合字ルールと構成用符号が設定されている筈として、字体系譜推定に踏み切った訳で。

前段が長過ぎたが、"耳"文字について。

ヒエログリフには名詞の"耳"は無いようだが、耳型文字は動詞として存在している。
つまり、祈りを聴いてくれる尊崇対象の神に届くために必要ということで用いられる標章ということになろう。神殿だけでなく、聖地からも出土しているらしいし。

一概には言えないものの、甲骨文字も、そうした概念が色濃そう。象形ではあるが、人体器官としての名詞とは言い難いようだ。(倭語からして、"みみ"とは<身実>かも知れず、earという語彙が無かった可能性さえある訳で。)
#439≪耳≫【耳】🅱㊎🆂:主聽[象形]
    耳目の聡明なのを合わせて聽という。@「字通」
  #439≪耳≫:通[耳+呈]
    神の声を聞きうる人をいう。@「字通」
  #439≪耳≫:察[耳+怱]
    明察をいう。@「字通」

もちろん、人体の肉体的突出部としての文字でもあるが、その関連合字は「說文解字」では≪耳≫部首以外で収録されることになる。その代表は2ッ。・・・
#137≪刀≫:斷耳
#006≪玉≫:瑱
白川論は余計なことは記載しないので、少々物足りない。
「山海經」で分かる通り、耳飾りはトーテム信仰と深く係わっている筈で、宝飾品を飾って栄華を見せつけるとか、目立つ為の工夫とは違うことは自明なのだから。要一言。
しかし、イヤリングはどうでもよい。重要なのは、耳削ぎ刑罰の記載。
これは古代風習由来。狩猟に成功してケモノの片耳("左")を取ってしまう行為がいわば元祖。車も無いのに、運べる筈もないが、苦労して仕留めた以上所有権を示す必要があり、それこそが耳削ぎ。当たり前の社会ルール。
それが、部族抗争に於いての敵方殺戮証佐としての👂削ぎに繋がったのは自明。(現代でも、その風習が受け継がれている軍隊があることが知られている。これは止めようが無い。もちろん、日本のよく知る国。)頭蓋運搬などそうそう何時までも続く訳がないのは当たり前。

さて一番重要な耳の機能だが、それに関係する"耳"文字として重要な文字で、現代の字義と一致していないことに驚かされる。・・・声はvoiceではなく、sound。聞と聴の違いは極めて大きい。宗教的観念の不連続性を示していそう。
 聲:音[耳+殸 殸…籒文磬]
    磬石を鼓つ形。@「字通」
 聞:知聞
    神の啓示するところを求める意である。@「字通」

 聽:聆[耳+㥁 壬]  聆:聽
    聡明の徳をいう字。@「字通」
  #408≪心≫:辱

≪取≫は明らかに合字の主部品として使われているものの、部首文字扱いはされていないが、[耳+手]なので、系譜上では重要な位置を占める。<主聽+手→take>という考え方が生まれたと書いているのかも。
 ---≪耳≫部非所属の<取>系---
#076≪又≫:捕取
#443≪女≫:取婦   #076≪女≫:女號
#443≪冃≫:犯而取
#441≪手≫:四圭


#439【耳】ear
#440【𦣞/𦣝】 ≒≪頁≫𩔞:頤🆂chin

 🢃

#441【手(扌)/𡴤/𠂿】
#442【𠦬】

・・・手に関係する"取"という文字はあるものの、下記の純然たる≪扌≫文字とは違う。そこから"字体"系譜の理屈をつけるのは難しそう。読者にどう説明していたのだろうか。
 挕:n.a. ≒扔
 攝[叙に見える。](摂):n.a. …引持 take in

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