■■■ 小篆文字検討@「說文解字」「爾雅」[辰蓐]■■■
"辰"は、殷代に於いてすでに一般化していた石器農具<鍬>の象形が出自との説が有力。原始的道具に映りがちだが、金属製と比較して、その効果は優るとも劣らない筈なので勘違いされぬよう。(黒曜石製が現代の高級ナイフの切れ味と遜色無しと同じ。)
言うまでもないが、小篆字体での話。

但し、甲骨には、下記表示と違って、相似性皆無の字体がある。横三日月の両端から線がゆるりと下垂しており、補助構成部分を欠く以上、これを貝殻製農具と見なせる筈がない。
#532≪辰≫【辰】🅱🆂
     :震 三月 陽气動 靁電振 民農時 物皆生
       [乙 匕 象芒達…厂]
     辰 房星 天時[二 二…古文上字]
    蜃蚌などの貝の類が、足を出して動いている形。@「字通」
#532≪辰≫ 辱 :恥[寸在辰下] 失耕時 於封畺上戮之
     辰者 農之時 故房星爲辰 田候

そういうことだと、「說文解字」の上記の解釈は、"当時の五行説によって説くもの"とされがちだが、下手をすればorannge-apple的議論になりかねないから、ここらは論理的整理が必要だろう。「爾雅」が示すとおり、生物類はすでに"体系的に"別類文字化されており、<子〜亥>文字も厳然として存在している以上、小篆創成官僚が"辰"の字義を貝や農具とする訳がないのだから。(「說文解字」は明らかに五行色と儒教観念を盛り込んでいるとはいえ、あくまでも小篆創成官僚が制定した字体と字義を描いている訳で。)
#471≪虫≫ 蜃/蜄 :雉入海 化為蜃

辞書的に羅列すれば、字義の変遷は以下と見ることになろう。各王朝の文字官僚が制定して来たのだから、ほとんどが移入文化取り入れ。その結果の複雑化と見て間違いないだろう。・・・
❶(振耕)…除草by石器(蛤貝殻器) @早春
❷震動@易
     ⇒ "𠩟"
❸序数詞@12進法
  ①5th
     ⇒ 生肖"龍/竜"
  ②3月@農歴(太陰)
  ③7〜9 am@24hr
  ④120°or ESE-SE@360°方位
❹転義的発展
  ②⇒(抽象概念[季節日時]Time)
     ⇒ [辰刻法]
  ③⇒"晨/㫳"early morning
  ④⇒(星座根本)[星辰]
     ⇒ "心宿"[辰宿]@28宿
       ⇒ 北極星[北辰]

こうして眺めると、「說文解字」は的確でよくまとまっていると思う。中華帝国の性情を十二分に認識して執筆していると見てよさそうだし、リスクのありそうな部分を上手に避けており、緻密に練り上げられていると言えそう。

上記の記載についても、相当に気にかかったようで、別途、部首文字を設定して状況を説明している。
#013≪蓐≫【蓐/𱾤】:陳艸復生[艸+辱]
{艸+辱}という合字だから、薅の存在を無視して、艸部に属させてもよさそうに思うがそうはいかない。{茻+辰=𱾤}でもあるからだ。<屮→艸→茻>の単純系譜に<蓐>を組み込む必要がある訳で。

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