■■■ 小篆文字検討@「說文解字」「爾雅」[小少]■■■
「說文解字」を読もうと思ったら、巻一と巻二の冒頭に記載されている"一"と"小"の2文字の字釋をどう評価すべきか、決める必要があろう。と言うか、この2文字に関しては、様々な解説がなされているので、どういう論理で字義が判定されているのか、確認しておくべし、ということ。

ここでは、先ず、巻二の頭"小"。「說文解字」では以下の系譜が提起されている。・・・
 h [#10]:上下通
 └┬───[#11〜#14]屮 艸 蓐 茻
  小[#15]/𡮐/𭕄🅱㊎🆂:物之微 [八 h見而分之]
  │ 少/𮱡🅱:不多
  │ 尐🆂:少
  八[#16]:別

字体だが、小生の感覚からすれば、🅱甲骨と🆂小篆が同一コンセプトという気がしない。前者は象形の沙粒三疊で、後者は、上下直線に"八"割りの表現だからだ。・・・"𠁼"のデザイン変更で、[h+八]という合字が生まれたとの解釈にはついていけそうにない。
悉曇文字"𑗘"indriyaの省略形漢字

しかも、小篆成立以前の用法では、小=少らしい。にわかに信じ難き情報であるが、角度は高いようだ。この少だが、尐の左右対称形でもある。そうなれば、両者が表現上必要だからこそ新たに創成されたと考えるのが自然だろう。同字義異体3文字を用いる必要があるとはとうてい思えないし。それに、異体といっても異なるセンスでの設計ではなく、甲骨字体では三疊字と四疊字の違いがあるのだから。

・・・細かなことは、どうでもよいが、小=[h+八]を否定すべきか否かが問題。

否定すれば、上記の系譜<h⇒小⇒八>は誤謬になってしまい、系譜論が成り立たなくなる。(本サイトでは、頭を捻って、記載系譜を見出そうとしてきたが、それは全く無駄な作業ということになる。…叙に、字体関連性で整理したと書いてあるにもかかわらず、系譜図検討はさっぱりみかけないし、系譜観点での順番記載の説明もされていないから、そう考える方が普通だろうが。)
白川甲骨論からすれば、「說文解字」は、時として老子的宇宙論を持ち出したり、陰陽五行を無理矢理当て嵌めている書。そうだとすれば、系譜を探る意味は薄い。当然ながら、推定原義が誤りである箇所も少なくない筈となろう。

小生の見方は全く異なる。

そもそも、呪術的祭祀官僚創出の甲骨と、秦帝国が強制的に標準化を進めた公的文書用の小篆文字が系譜的に繋がる必然性は無いと考えるからだ。(小篆及びそれ以後は、朝廷の文字制定官僚が創成しており、祭祀官僚の考え方と一致する可能性は低かろう。)

「說文解字」は辞書ではなく、文字宇宙論の書。秩序だった字体系譜の体系が存在しているとの思想提起でもある。だからこそ、明らかに索引の用をなさない、540部首文字一覧が添付されているのだと思う。(辞書とは、当代社会に価値がありそうな情報を取捨選択して、使い易いように整理したもの。自動的に王朝に都合の良い体裁にならざるを得ないが、それこそが、辞書編纂者の腕の見せ所。)

換言すれば、小篆創成官僚達は、なんらかの思想性を確立しており、それに則った方法論で文字のデザイン化を進めた筈で、それを推定したのが「說文解字」ということ。(文字の度量衡と言えなくもない。)
それだけの話では。

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