■■■ 小篆文字検討@「說文解字」「爾雅」[雨]■■■ 一番の問題は、字体上の相似性評価の手法が無いこと。 分析によって字体類似の程度を判断する理屈が無い以上、いくら情報を提示したところで、個人の主観で決めていると言わざるを得ない。この状況で、俯瞰的に文字全体像を捉え、それに基づいて字体の象形を大胆、なかば強引韋推定する白川論の批判は、残念ながら無意味と言わざるを得ない。 ・・・地動説 v.s. 天動説はどちらも分析手法が整った上での概念の対立、白川論を批判するには、概念の提示が必要。 概念思考論者が提起した文字論は、今のところ3つしかないようだ。 ①人民史観で読み取るべし論。 (作成者目的ともに、書いてはいるが上手に曖昧化。) ②文字創成者は王朝公定書用文字管理役官僚と見る、 「說文解字」の小篆文字字体系譜的体系論。 ③呪術時代の祭祀国家の 卜占官僚(3分業)が管理していた、 白川甲骨文字論。 白川甲骨論も、「說文解字」も、造字には信仰や思想が絡んでいると見ている訳だ。甲骨とは絵文字であり、小篆は官僚統制のコンポーネンツ合字が基本となる。そして、両者ともに体系化がなされていることになる。これで、記号が文字に止揚されたと考えることになる。(概念無しの体系化はあり得ない。)「說文解字」の場合は、その体系には文字宇宙秩序観が見て取れると主張していることになろう。 論理的に考えれば、こうした概念無しに古代文字の読み取りができる理屈が無い。(文字の類似性とは、その時点で社会的に決められた見方に則っているからだ。換言すれば、大多数の感覚に合う様に、判定する以外に手がない。従って、人民史観から読み解くことも可能だが、) 「說文解字」を読むには、現時点では、「字通」を参考にするしかないのである。それは、甲骨文字を対象にしている入手し易い辞典だからではない。個々の文字を分析した書には統一概念が欠落しているので、用いることが憚られるということ。 思弁的な話は面白くないし、ともすれば屁理屈に陥りかねないのでここまでとし、例字で考えてみよう。 なかなか面白いのは雨。 楷書では単独字体で4つもの異体字がある。(点の形状違いは含めていない。)どれが選ばれていてもおかしくないし、甲骨からの変遷ということでも、雨になる必然性がある訳でもない。甲骨文字に対応する、文字コンポーネンツは無いのだから。 ⛆雨🅱㊎ 🅱→"n.a."[巾+Ⅲ] 巾の縦棒は突き抜けていない。 縦3本は記号で非文字。 ㊎→"⻗"[一+𠕒] 🆂→"雨"[帀{丅(一+h)+冂}+⺀x2] 帀は無縁。 𠕲[冂+{三+丅}x4] 現代的感覚だとhはetc.。 𠕘[冂+丶x3+小] 3筋が収まりがよいのだろうか。 㲾[宀+水(𡿭)] 家屋に降るならコレ。 雨は、字体系譜上、雲に繋がる。これを"⻗"という冠だから、と見ない方がよいと思う。上記の字体から見れば、雨は雨雲から降るのであって、雨文字にcloudが組み込まれているのだから。†・・・ #422雨/⻗:水从雲下[一象天 冂象雲 水霝其鐓 #423雲:山川气[雨 云象雲回轉形] 𩃬:雲覆日[雲+今] #109≪隹≫:飛聲 雨而雙飛者 其聲然 #319≪覞≫䨳:見雨而比息 #255黍:禾屬而黏者 以大暑而穜 故謂之黍[禾+雨省] #419≪水≫淒:雲雨起 渰:雲雨皃 溟:小雨溟溟 洓:小雨零皃 瀑:疾雨 澍:時雨 澍生萬物 湒:雨下 澬:久雨涔資 潦:雨水大皃 濩:雨流霤下 瀧:雨瀧瀧皃 滈:久雨 漊:雨漊漊 溦:小雨 濛:微雨 瀌:雨雪瀌瀌 #384≪K≫黴:中久雨青K #300≪衣≫衰:艸雨衣 秦謂之萆 #231≪日≫晵:雨而晝夝 旱:不雨 #241≪夕≫夝:雨而夜除星見 #119≪鳥≫鷸:知天將雨鳥 #003≪示≫禜:設緜蕝爲營 以禳風雨雪霜水旱癘疫於日月星辰山川 #012≪艸≫萆:雨衣 † "rain"という意味なら、天空から降る以上、文字の最上部に━を表記するのが自然。灌漑治水技術なかりせば、天水によって、旱魃や洪水に見舞われ、生存の危機に直面する以上、祭祀上最重要文字の1つと見て間違いなかろう。この場合、天からの降雨を示す自然体表現は、水滴を模した点を横3ッ(丶 丶 丶)並びということになりそう。段数は、1〜3になろうが、気分で変わっておかしくなかろう。デザインの工夫が必要と思えば、━+丶 丶 丶+丶 丶+丶という1+3段構成もあり得そう。 "雨"はこの造字とは異なっている訳だが、━+|構造が中心部に見て取れるから、天にある水溜めから流れ出す姿と解釈するとよさそう。つまり、<{━+|}+冂+水滴>という構成にしたことになる。この冂が天と関係する様な部品とは思えないが、降雨の実態を考えれば、あえてcloudの象形として挿入したくなるのもわかる。 この場合の、一番自然なデザインとしては、4点ではなく、2点の雨冠に、底部に水滴横並び3点とは言えまいか。しかし、そうした文字は使われていない。雨の兄弟文字である、雪雹霰が必要なので、底部を水滴にする訳にはいかなかったという単純な理由からだろう。 こうした、天信仰に反し、上部の━を省略し、冂を主骨格とする楷書が存在しているが、対応甲骨文字は存在していないのでは。 (C) 2025 RandDManagement.com →HOME |