■■■ 小篆文字検討@「說文解字」「爾雅」[山厂丸危石]■■■
<甲骨⇔小篆>問題がよくわかるのが"石"辺りの問題。

白川論では、「說文」○巻の字義解釈文が引用され、"(・・・とされている)が、〜の従うところ〜の形であり、〜を示す文字である。"型の文章で誤りを指摘することが多い。字形論の書が他に見当たらない以上止むを得ないが、誤謬の指摘自体にはたいした意味は無い。
両者は出自が全く違うからだ。
甲骨は対象母集団が卜占官僚が体系化した閉鎖的集団内でしか通用させない文字で、必ずしも完全に規格化されたものではないのに対して、小篆は国家の公的文章としてコミュニケーション上の要とされている以上、十分に規格化されていてオープン利用を旨とする。それに向く様に文字担当官僚が新たに創成した文字である。
後者が前者を参考にしたのは、時系列上当然であるものの、甲骨以外に用いられていた文字も存在していたのだから、甲骨→小篆という一方的な流れで文字が造られた確証などどこにもない。単なる古代のone of them的文字であり、字形がそっくりでも字義が同じであるとは限らないし、全く異なる字体でありながら字義は同じということもありえる。

・・・だからといって、白川論のこの指摘が不要ということではない。甲骨文字体系とは、呪術ベースであり、後世の発想で文字を解釈すべきで無いという真っ当な指摘に沿って解釈するとこうなるという実例が示されているからだ。
しかし、その主張には、個々の文字では、確たる論拠が無いのは事実。常識とかけ離れた見方と云えば否定もできかねる。従って、その手の提起は如何なものかと感じる人も多かろう。(いつの時代の文字も、為政者によってなかば強制され、"意図的に"体系化されて来たという現実を見たくないと、そう感じるかも。この体系論議こそが古代文化を理解する上で格段に重要なのだが。…文字は個別に人民が生み出し捨てて行くものという思想は流石に消えたようだが。)

前段話が長くて申し訳ない。

なんといっても驚いたのは、「字通」での【丸】の字義。弓で弾丸を発射する状況の象形とされているからだ。遊びで通行人に当てる話があるが、それは甲骨の体系とは無縁であって、飛ぶ鳥を矢でなく弾丸で落とす行為は巧者の誇る行為であり、おかしなことではない。しかし、この文字の字形のどこにそんな風情を醸し出す箇所があるのか、はなはだ疑問を覚えることになる。
しかし、収載されている甲骨文字を見ると、【丸】との相同性皆無。確かにその通りとも思える体裁。

一方、「說文」は仰天。字体は左右反転した【仄】。これ又、そうかもと思わせる。

・・・これを個々にいくら分析しても、たいした意味はない。問題は、どう体系化しているかにあるからだ。
その点で、「說文」は見事であり、<【厂】⇒【{丸 v.s. 危}&石】>という構造を提起していることになる。これが、グループということになろう。もう少し視野を広げれば、それは【山】も含むことになろう。

このグループの核は【石】臭いが、そうした体系を見事に示しているのが白川論。宕や祏という文字を示すだけで、余計な話をしていないが、石への古代信仰は桁違いに多いのはよく知られたこと。【石】文字にその標章があってしかるべしとの主張は当然だろう。(入山し石を賜るためには祭祀は不可欠では。)
この視点から云えば、拷コの石の象形を方形にする理由の方が不明朗ということになる。有史以前は石器時代であり、形は様々で、倭の場合は黒曜石文化圏が形成されていた程なのだから。

:高不平

#350≪山≫【山】🅱🆂:宣 宣气𢿱 生萬物 有石而高[象形]
│   【巖/巗/嵒/岩】🆂:岸
│   (敢:鬯酌の形)儀礼を示す字@「字通」
├┐
屾│
 屵:岸高
 ├┐
 广│
  厂#354≪厂≫【厂】🅱🆂:山石之惚ワ 人可居[象形]
  ├┬┐
  丸││
   危│
    石#357≪石≫【石】🅱🆂:山石[在厂之下 囗 象形]
       厂は崖岸の象@「字通」
  ↑↑
#355≪丸≫【丸】🆂:圜 傾側而轉者[反仄]…small & round
  弓弦にまるい弾をあてている形@「字通」
     #354≪厂≫【仄】:側傾[人在厂下]…not easy
#356≪危≫【危】🅱🆂:在高而懼[厃 自卪止之]…dangerous
  高フ上下に跪く人の形をそえて危うい意を示す@「字通」

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