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2004.2.15
 
 


動植物園/水族館の再考は不可欠…

 パークといえば、昔から、動植物園/水族館が核だ。
 現在でも、こうした施設は全国に200箇所近くあるそうだ。(1)

 しかし、こうした施設は維持費が嵩む割には、入場料収入が少なく、経営が苦しいと言われ続けてきた。

 実際、東京都の平成13年度行政評価結果(2)によれば、東京都恩賜上野動物園は「動物園経営という視点が不足しており、仮定総経費に対する入園料収入等の割合も45%となっている。また、過去10年間の経営状況について、単純に見積もったとしても30億円(人件費を除く)を超える累積欠損を出している。 」
 東京都葛西臨海水族園も、「水族園経営という視点が不足しており、仮定総経費に対する入園料収入等の割合も33%となっている。また、過去10年間の経営状況について単純に見積もったとしても、累積欠損は76億円(人件費を除く)」に上る。
 土日祭日は、結構混雑しているのに、この程度である。これでは、単独事業としてはとても成り立つまい。

 にもかかわらず、狭い国土にこれだけ多くの施設が残っているのは驚異的だ。

 特に、動物園のように、檻を並べただけの時代遅れの施設が沢山残っているのは異常とも言える。続行派の力が強いから、閉園が難しいのだろうか。
 このままでは、閉鎖必至ということで、希少種の育成に注力したり、自然に近い飼育環境を実現し、存続を図っているようだ。
主要動植物園・水族館
- 動植物園 - - 水族館 -
北海道 札幌市円山動物園
東北 ふくしま海洋科学館
関東 東京都恩賜上野動物園
東京都多摩動物公園
千葉市動物公園
東武動物公園
よこはま動物園ズーラシア
桐生が岡遊園地動物園
東京都葛西臨海水族園
しながわ水族館
サンシャイン国際水族館
鴨川シーワールド
横浜・八景島シーパラダイス
(アクアミュージアム)
中部 名古屋市東山動植物園
日本モンキーパーク
名古屋港水族館
鳥羽水族館
関西 大阪市天王寺動物園
神戸市王子動物園
天保山ハーバービレッジ海遊館
神戸市立須磨海浜水族館
中国 下関市立しものせき水族館
(海響館)
四国
九州
沖縄
熊本市動植物園
主要公園
国営海の中道海浜公園
宇都宮市農林公園ろまんちっく村
国営ひたち海浜公園
国営武蔵丘陵森林公園
新宿御苑
東京都神代植物公園
グラバー園
豊橋総合動植物公園(のんほいパーク)
豊田市鞍ヶ池公園
岐阜県養老公園
神戸市立フルーツフラワーパーク
岡山後楽園
国営沖縄記念公園海洋博公園
牧場
阿蘇ファームランド
小岩井農場まきば園
南ヶ丘牧場
那須千本松牧場
マザー牧場

 そうまでして残さなければならない文化的意義があるとは思えないのだが。
 (そもそも、種の保存活動に、どうして娯楽的な見物行為が必要なのか理解できない。)

 もちろん、高尚な目的を掲げて事業を進めることは悪いことではない。
 しかし、「観客に見せる」業務に注力しなれば、自ら首を締めることになろう。観客の方は、見たいから訪問しているのだ。よく見れなければ、期待を裏切られる。その結果、入園者数は低迷することになろう。

 本来、娯楽性なき大型施設を作る意味はない。壮大な無駄というべきである。
 娯楽以外に、重要な目的があるなら、パークではなく、専門に特化した小規模施設を作るべきだ。余計な業務をカットすれば、重要な業務に専念できる筈だ。

 とはいえ、全国各地で様々な取り組みが行われている。

 努力はわからぬでもないが、おそらく、動植物園/水族館は、パークとしては中途半端な施設の域を脱することはできまい。動植物園/水族館の再興ではなく、再考が必要である。

 動植物園/水族館の最大の問題は、2〜3時間程度眺めて回る設計になっている点にある。

 ほとんどのパークは宿泊してまで、じっくり見るようなものでない。
 (主要施設を右表に示した。)
 従って、時間つぶし型訪問者しか来ない。
 これでは、いくら施設をリニューアルしても、見物して面白い仕掛けを欠けば、一時しか人は集まるまい。2〜3時間の楽しみでは、たいした金額は落ちないし、すぐに飽きて来園者数は先細りになるだろう。
 集客力を高めたければ、年中模様替えして、常に新しい面白さを提供するしかない。今の動植物園/水族館のマネジメント力では、こんなことは無理だろう。

 本当に素晴らしい動植物園/水族館を作りたかったら、1日じっくり見ても楽しい施設を作るべきだ。これなら、宿泊しても見に行きたくなる筈だ。

 そのような挑戦も始まっている。横浜・八景島シーパラダイス「アクアミュージアム」である。(3)
 コンセプトの解説は不要だろう。水族館を訪れれば、海中散歩の感覚で海の動物を眺めている自分に気付く。そして、この施設を核として娯楽施設が広がっている。遊園地が好きなら、時間が自然と過ぎ去っていく仕掛けである。
 このような取り組みが必要なのである。

 これが無理なら、所詮は2〜3時間の暇つぶし施設と割り切ることだ。面白くて、コストパフォーマンスが良い施設に変えるだけの話しである。
 デパートのように、なんでも揃える大型施設ではなく、特化した動植物園/水族館に変えるべきである。そうすれば、独自性の訴求もできるし、運営費用も少なくてすむ。
 但し、特化すれば、企画がうけないこともある。リスクは低くはない。しかし、どの分野でも必ずマニアがいるから、支援の仕組みを考えれば、なんとかなるのではないだろうか。

 どう見ても、動物園/植物園/水族館は抜本的な変革が必要である。

 ほとんどのコンセプトが実態と齟齬をきたしているのにもかかわらず、無理筋を強行し続けているように見える。動物園/植物園/水族館の役割が終わったのではなく、来園者から見て魅力あるパークをつくる気が無いから、こうなるのである。

 --- 参照 ---
(1) 動物園/植物園/水族館はそれぞれ70〜100程度あるらしい。複合施設もいれれば、全部で270箇所といったところのようだ。日本博物館協会のホームページにデータは掲載されていないようだ。
(2) http://www.chijihonbu.metro.tokyo.jp/hyokahp/h13/gaiyouban30.htm
(3) http://www.seaparadise.co.jp/


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