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魚の話  2018年1月19日

うみたけはぜ の話

🀤  静かなり 姿潜める 竹林
 世の中は広い。海竹上で穏やかな生活を送る一生もある。

海竹=木賊海楊[トクサヤギ]だと思う。
珊瑚礁を造る花虫の仲間であり、テーブルサンゴのような骨格を形成しないので通常はソフトコーラル/海鶏冠(八放系)と呼ばれるタイプ。

南の海の珊瑚礁といえば、炭酸カルシウムの骨軸を持つ枝珊瑚のシーンを想い浮かべてしまう。海底はその骨粉だけの白砂。そしてテーブルサンゴの入り組んだ枝のなかに色とりどりの小魚が群れる"平和な楽園"というイメージ。
そんな魚の典型が"小判鯊"だった。[→]
ところが、実は、そこは過酷な環境であり、他の魚を寄せつかない毒魚が一角を支配していたりするのである。それこそ平和な世界どころではないのが実情。

一方、ソフトコーラルだと、隠れ家を提供してはくれない。
そうなると、場所取り合戦は不要となるが、そんなところに不用意に留まっていたら即座に食われてしまうから、底棲を出自とするハゼ一族にとっては進出しがたい場と考えがち。ところが、豈はからんや、擬態でそこにひっついている種がいるのだ。
それらのコーラルは色とりどりだから、底棲のように、砂礫や泥の色というわけにいかない。厄介だが、それを実現しているのである。

その典型を海団扇/Sea-fan(八放 棘海楊[トゲヤギ])上で見ることができる。
  海竹鯊
身体が透明なので、海団扇の一部にしか見えない。
従って、英語名称ではghostgoby。
海竹鯊的な直接的表現もあるにはあるのだが。
  Soft-coral goby/助六海竹鯊

命名から見て、同様に、海菖蒲という海草の表面にくっついて生活する手合いもいるのであろう。それなら甘藻でも可能だろう。もっとも、甘藻鯊と呼ばれる種はいないようだ。
  海菖蒲鯊

花虫には、角珊瑚(六放系)もあるし、ヤギ(海楊)以外にも、ムチカラマツといった類縁もあるから、職人芸的にそれぞれに合わせた擬態を考えぬいた末の適応で、細々とした分化が進んでいるかも。

考えてみれば、身体が透明なら、ひっつく対象はいくらでもある。
環境に溶け込む術を心得ていればそれなりに生き抜いていける訳である。アクアショップでよく見かけるのはこちら。
  硝子鯊

【鬚鯊、等の《Gobiinae》グループ】
 ○Pleurosicya・・・ウミショウブハゼ類
  海菖蒲鯊/Bilobed ghostgoby(bilobata)
  助六海竹鯊/Soft-coral goby(boldinghi)
  端太海竹鯊/Staghorn ghostgoby(fringilla)
  垂口海竹鯊/Barrel-sponge ghostgoby(labiata)
  赤筋海竹鯊/Toothy goby(michel)
  背星海竹鯊/Ghost goby(mossambica)
  海竹鯊(muscarum)
  Scaly-nape goby(annandalei)
  Caroline Islands ghostgoby(carolinensis)
  Blue-coral ghostgoby(coerulea)
  Cling goby(elongata)
  Michel's ghostgoby(larsonae)
  Plicata ghostgoby(plicata)
  Folded ghostgoby(prognatha)
  Sponge ghostgoby(spongicola)
  -/(australis)
  -/(occidentalis)
 ○Bryaninops・・・ガラスハゼ類
  硝子鯊/勇氏珊瑚鰕虎魚/Whip coral goby(yongei)
  赤目鯊/紅眼珊瑚鰕虎魚/Redeye goby(natans)
  人見知鯊/Upside-down goby(nexus)
  大硝子鯊/Large whip goby(amplus)
  色分硝子鯊/Erythrops goby(erythrops)
  小人硝子鯊/Isis goby(isis)
  染分鯊/Ridens goby(ridens)
  筋黒硝子鯊/Black coral goby(tigris)
  Loki whip-goby(loki)
  -/(annella)
  -/(dianneae)
  -/(discus)
  -/(earlei)
  -/(spongicolus)
  -/(tectus)
  -/(translucens)

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