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2005.8.24
 
 


「調理革命」本を読んで…

 超高速調理ができるオーブンが登場して、料理が簡単にできるようになった。(1)
 といっても、日本の家庭はオーブン調理をしないから、関心をひきつけることはなかったようだが。

 しかし、電子レンジ分野を眺めると、新しい技術の適用は結構活発である。
 2002年秋には、スチームオーブンレンジが販売されている。(2)
 量販店にきいてみると、健康志向の風が吹いており、売れ行き好調らしい。

 IT技術が進歩したから、調理器の温度コントロール精緻化は難しくない。機器の高度化で、美味しい料理が簡単にできると期待していたが、残念ながら、なかなかそうはいかないようだ。材料が多岐に渡るし、レシピが多すぎ、なかなかやっかいなのである。
 残念ながら、調理の標準化は簡単ではないのだ。

 と言うことは、調理器具の技術革新の前に、調理技術そのものの革新が必要なのである。
 料理のパターンを変えずに器具の機能の高度化を図るだけでは影響力は小さい。先ずは料理を作る側の考え方を変え、イノベーションを創出し易くしない限り、画期的な調理器は登場しないのではないかと思う。

 ところが、調理技術の革新に挑戦する人は滅多にでてこない。古典的な調理手順を守るのに熱心な人が多いから、革新派は嫌われるのかもしれない。残念なことである。

 ・・・と思っていたら、突然、「調理革命」と称する料理本が登場した。(3)

 センセーショナルだが、確かに、調理技術の革新と言えそうである。

 そんな印象を抱いたのは、次の一言。
 “炊飯器1台でいろんな料理が出来ちゃうなんて、嬉しいよね。”(4)

 既存の調理器具を徹底的に使い回そうとか、炊飯とおかず調理を同時に行って省エネルギー化といった発想ならがっかりだが、全く違うセンスである。
 炊飯器には優れた機能があり、この機能を使えば、様々な美味しい料理が簡単にできると主張しているのだ。

 今までの炊飯器利用方法は、頭で考えた“エコ”思想をベースにしたものがほとんどだった。こんな思想は御免被りたい。
 効果は僅か、利用は面倒だし、美味しくもない。そんな料理をいくら推奨されても試みる気にはならない。

 これからの時代の主流は、楽しくて心を豊かにする調理だろう。

 このクックブックは、そんな流れを感じさせる。
 炊飯器は優れた電気調理器という単純な主張が貫かれているだけの本である。実に爽やかである。

 要するに、炊飯器を3種類の調理器として使うのである。
  ・電気鍋:豆料理[とろ火]や野菜炊き[じっくり煮]
  ・電気蒸器:茶碗蒸や饅頭
  ・超小型電気オーブン:ケーキやパン

 蒸すには時間がかかりすぎるきらいはあるが、温度コントロールは抜群だから、鍋や小型オーブンとして使えば優れた調理器具であるのは間違いあるまい。美味しく作るのが難しかった料理がいとも簡単にできるのである。
 但し、レシピは5合炊用で、小型や大型への比例換算ができないから、若干やっかいではあるが、たいした問題ではない。
 拍手を送りたくなる。

 プロ、アマを問わず、様々な料理家がこうした「調理革命」に挑戦をしてくれると、そのうち「調理器革命」に繋がる可能性がある。

 インターネット電子レンジの試みは頓挫したようだが、レシピ情報を機器に簡単に取り込む方法を工夫すれば、調理シーンは一変すると思う。

 --- 参照 ---
(1) http://www.turbochef.com/press_room_video/all_products_nra.wmv
(2) http://panasonic.co.jp/products/story/oven/case01/case01.html
(3) 村田裕子「炊飯器で調理革命」 講談社 2005年7月
(4) 村田裕子「炊飯器でラクラクおかず」 永岡書店 2004年12月 http://www.yukomurata.com/suihanki.html
(類似書)
  TJムック「本格料理をクイックに!スゴ技!炊飯器で魔法のクッキング」 宝島社 2005年1月
  江端久美子 「飯器でラクラク手間なしクッキング―スイッチ・ポン!で、時間節約!あとはおまかせ! 」 学研 2005年5月


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