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2008.3.4
 
 


箒草の話…

年々や 三本作る 箒草  虚子  浅学なので、理由はわからぬが、虚子は箒草を気に入っていたようだ。

 開高健が作ったコピーと噂される“畑のキャビア”との宣伝文句で有名になった“とんぶり”は、今や、真空パックや瓶詰めとなってスーパーの棚に並ぶ定番品である。最近は、チルドの生を、よくみかけるようになった。
 古くから米代川一帯で作られていたらしいが、(1)別に珍しい草という訳ではない。

 海外では食用にされていないようだが、蒟蒻同様、食感を楽しむだけの食材だし、格段の香りもないから、見向きもされないということだろう。

 その程度のものであるにもかかわらず、食べるためには結構面倒な処理が必要である。
 まずは、適度に実った時期を見計らって、刈り取らないと失敗する。その後、脱穀し、乾燥させる。そうして得た籾を茹でて、皮をむく。当然ながら、籾殻を完全に取り去る作業をしなければならないし、実の余分な水分もとらないと美味しくなかろう。
 「とんぶりをこしぇるまでが容易でねがった。」のだ。(2)

 そこまで手間をかけるほどのものではなかろう、と考えるのが普通だと思うが、この面倒な処理をなくす手法を一生懸命開発したようである。お陰で、今のように簡単に食べられるようになったのである。
 ポイントは、クエン酸添加らしい。

 なにせ、1975年以前は、秋田県北部のごく一部の地域で自家用としてわずかに食べられていた程度だったのである。(3)

 これが瓶詰め化できるようになったので全国展開が始まった訳だ。
 プチプチ感を愉しめる稀有な食材だから、コピーの巧さと、熱心な売り込みが効いて、人気が出たというところだろう。

 特に、納豆か擂りおろした山芋で粘りを与えると、その食感が強調され秀逸だと思う。ザクザク感も加えたいなら、さらに大根の千切を加えるのもよい。
 もっとも、山芋の短冊切りにとんぶりでシンプルに味わうのが基本かも知れないが。
 まあ、味や香りがほとんどつかない食材だから、そのまま加えることができる料理ならなんでもOKということ。
 尚、本当に好きな人は、大根おろし味等でそのまま食べるという。

 --- 参照 ---
(1) 美食・秋田の食文化 とんぶり http://www.pref.akita.jp/fpd/shokubunka/shoku-22.htm
(2) 秋田の食材『とんぶり』と新技術の開発  http://www.pref.akita.jp/kagaku/2f/nousan/2/menu9/c.html
(3) http://www.e-komachi.jp/rakushoku/seven/tonburi/index.htm?PHPSESSID=339a57d1bfd048b22b3cb9a296d38226
(虚子の俳句) [虚子軸 明治41年] http://www.kyoshi.or.jp/j-huuten/nihonha/nihonha4/01.htm#4
(箒草の写真) (C) カールおじさん 草花写真館 http://kusabanaph.web.fc2.com/


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