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2000.1
 
 


今後の戦略部品、システムLSIで力を発揮できるか…

 システムLSI(プロセッサ、メモリ、カスタムロジック、信号処理、といったブロックがチップの上に載ったもの)の時代が始まった。携帯電話の普及が象徴するように、これから様々な製品が急速に生まれるが、こうした製品の心臓部となる半導体だ。パソコンでないコンピュータ製品が生まれるということで、張りきる人も多い。

 なかには「いよいよ日本企業の出番だ。」と言う人さえいる。

 研究者・技術者を鼓舞するつもりなのだろう。もちろん誰だって、頑張って頂きたいと思う。というのは、この技術が弱体だと、すべての産業の競争力に直接響くからだ。機能を左右するソフト自体が半導体に搭載されてくるから、この技術が製品差別化の鍵を握る。まさに、戦略部品だ。

 日本企業は、90年代に、半導体分野で急速に弱体化した。にもかかわらず、戦略部品のシステムLSIで技術優位と主張する根拠は何だろう。

 おそらく、日本企業にチャンスがあると見る人は、システムLSIは複雑なので、職人芸的な力を発揮できる日本企業が有利と考えるのだろう。しかも、日本企業は、比較的分野を絞らずに事業を進めてきたから全ての分野の知識が豊富だ。それなら、日本企業は圧倒的な力量を持つとの論理だ。
 確かに、フルカスタムやASICの設計・製造は理屈だけでなく、職人芸的な対応を必要とする。従って、一理あるように見える。

 しかし、そうしたモノ作りの仕組みでは大量のマンパワーと時間を必要とする。従って、大量に利用される半導体ならペイするが、少量で採算をとるのは簡単ではない。システムLSIとは、このような事業モデルとは違う。少量生産でも十分ペイするよう安価で短時間の開発を志向している。多種多様な製品を次々にグレードアップしていくためには、開発に大量のマンパワーや時間がかかるのはこまる。これを突破しようというコンセプトだ。

 この技術の本質は、ブロック毎の設計を集めて全体を作り上げ、設計を合理化しようというものだ。特に、既開発ブロック取り入れ可能という点に意味がある。もちろん、設計を標準化するので、他社製品を自由に用いることができる。

 果たして、日本の技術がこの技術体系に合うだろうか。

 どう見ても、日本の「優れた」職人芸技術は、この体系とは違う。上手に組み込むために、相互調整しながら各ブロック設計を進める仕組みは、このコンセプトと矛盾するからだ。

 今の技術体系を温存すれば、システムLSI化の波に乗れない。従って、システムLSIで成功しようと思ったら、ブロック毎に最適設計する仕組みに変える必要がある。しかし、これは簡単には進むまい。研究者・技術者に、ゼネラリストからスペシャリストに変われと、迫ることになるからだ。

 まさに正念場だ。優位だとはとても言えまい。


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