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2000.5.14
 
 


家電機器のリアルタイムOS…

 「日本発OS」の話題を嫌がる技術者が多い。
OS普及は事業の進め方で左右されるから、技術論議をしたくないのも無理はない。しかし、ソニー(Aerios)や松下電器産業(デジタルTV用)が新しいOSを発表しており、議論を避けるべきではなかろう。

 専門技術者の発言が少ない一方で、メディアでは「素晴らしい日本発OS」との発言が目に付く。リアルタイム用のiTRONのことだ。軽くて(容量が小さい)使い易く、携帯機器に最適なものと、賞賛しているようだ。特定分野ではすでに標準的に利用されており、世界に誇れる、と語る人さえいる。

 このような発言を黙認すること自体、この分野の技術マネジメント力欠如を示す。この姿勢がソフト構想力の弱体化を招いているのではないか。

 iTRONが軽快なのは、構造がシングル(カーネルという核とアプリケーションが分れない)なため。必要な情報内容が小さいうちはよいが、情報が増えると問題がおきる。大きくなれば、当然バグは飛躍的に増える。しかも、カーネルとアプリケーションが分れていないのだから、バグは致命傷になりかねない。バグ1つで全体が動かなくなる危険性は否定できまい。仕様変更や機能追加も基本的にゼロベース設計だ。
 こうしたOSの技術優位性を議論しても意味は薄い。

 企業にとって、OS技術論議で重要なのは、発展の仕組みだ。個々の機能の評価ではない。
 日本の技術マネジメントが決定的に弱体なのは、この部分である。

 例えば、バグをゼロにすることなどできない。にもかかわらず、バグ潰しに過度に力をいれる。その一方で、コスト削減を追及している。どういう根拠でコスト削減を図ろうというのだろうか?
 場合によっては、「技術者の良心」と言い出す企業もあるという。研究者やエンジニアの良心に期待するようなら、技術マネジメントなど必要はなかろう。
 「バグがあっても致命的問題に繋がらないアーキテクチャーとは?」、「バグをシュミレーションで発見する方法論をどのように開発するか?」が議論できないから、このような態度をとるのだ。


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