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2000.9.2
 
 


次世代携帯電話開発のリーダー…


 日本が次世代携帯電話で先鞭をつける。このことで、技術が進んでいると見る人もいるが、本当だろうか。

 「初商用化」だから、技術が進んでいるとはいえまい。日本が次世代にいち早く移らざるを得ない別の理由もあるからだ。

 ひとつは、従来のケータイの規格「PDC」が世界的に孤立しているだけでなく、遅れた仕様になっている点があげられる。
 PDCの世界シェアなどを云々しても、日本だけで使うものだ。片や、トップ規格は世界100ヶ国以上に普及している。どうして、このような規格を何時までも使い続けるのかという声が上がるのは当然だろう。電気掃除機が普及しているなかで、箒とハタキを上手に使う方法を検討している風に見えるからだ。

 もうひとつは、致命的な問題である。現在のケータイがこのまま普及し続ければ、使用周波数を考えれば、満杯になってしまい、重大トラブルが発生してしまう。おそらく、混雑による回線品質の低下は始まっている筈だ。多くの回線を確保できる仕組みに、いち早く移ることは不可欠の課題である。

 日本にとっては、抜本的に対応する必要があるから先走る、と言えなくも無い。
 しかし、一般に、そのような先走りの規格が広がる保証はない。
 機器メーカーにとっては、市場ができれば有り難いから、早く次世代が欲しい。消費者への対応というより、キャリアの資金狙いである。W-CDMAを本格的に開始すれば、投資額は1兆円に達するだろう。規格問題の議論より、早い投資の方がビジネスにとっては有り難い。ともかく走らざるをえない状況に追い込まれてしまった。
 この先走りが、さらなる「孤立」に繋がらないことを願うしかあるまい。

 次世代携帯電話の技術というと、CdmaOne/Cdma2000対W-Cdmaという図式で語られ、後者はNTTドコモの主張ということでとりあげられる。一方の旗頭というイメージだ。しかし、携帯電話規格の本質は、ケータイ端末ではなく、土台の方である。
 CdmaOne/Cdma2000やW-Cdmaというのは、無線基地局とケータイ間の接続の話しである。当然ながら、通信の本質はネットワーク構造だ。無線基地局と他の通信をどのように結合するかが大きな問題なのである。データ通信やインターネットが入ってくるから、このインフラのデザインは極めて重要といえよう。無線基地局とケータイ間の接続規格は、こうした課題に直接係わる訳ではない。従って、技術力を云々しても、末梢的な議論といえよう。
 ネットワークインフラ技術での力量が問われる時代なのである。従って、それに合わせて、接続規格は変わっていく可能性が高い。
 iモードの普及のインパクトは極めて大きかった。しかし、iモード技術が普遍的とはいえない。そうなると、データ通信中心の新しい接続規格が取り込まれ、大幅な変更の可能性もある。ドッグ・イヤーで進む業界なのだから、変化は凄まじいと見るべきだ。この変化に、日本企業が対応できるかが問題といえよう。

 実際、日本企業にとっては、接続規格が揺れれば大事だ。これに対して、欧米企業はさほどの問題ではなかろう。というのは、ネットワークの基本領域での次世代規格は、すでに決着しているからだ。CdmaOneの土台である米国のANSI-41と、欧州中心のGSM-MAPの並立が決定しているからだ。といっても、独自2方式でなく、CdmaOne/Cdma2000もW-Cdmaも、ANSI-41とGSM-MAPを使えるようにしたのである。端末は意志一致しなかったが、基本は決まった。
 即ち、インフラ部分は、端末がどうなろうと、グローバルに使えるようにした訳だ。ということは、現行のインフラをなるべく活かしながら発展させる方針がとられたということだ。(日本だけは、新インフラから始めることになる。)

 当然のことだが、GSMを除けば、無線インフラは北米勢(ルーセント、ノーテル、モトローラ、クアルコム)が主導している。一方、世界に広まったGSMは北欧勢(エリクソン、ノキア)が圧倒的な力を持っている。孤立した規格を続けてきたため、世界的な力を発揮できる日本企業は育っていない。
 ちなみに、NTTドコモが99年4月に発表した基地局開発メーカーには、両グループのトップ企業、ルーセントとエリクソンが入っている。日本企業は松下通信工業、NEC、富士通が選定された。


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