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2000.9.17
 
 


無線通信機器搭載OSの戦い…

 MicrosoftとQualcommがWireless Knowledge LLCを設立した。

 Microsoftが、無線通信機器分野でのポジション獲得の姿勢をさらに鮮明に打ち出したといえよう。代表的通信キャリア(AirTouch Communications、AT&T Wireless Services、Bell Atlantic、BellSouth、Bell Mobility (加)、GTE、Leap Wireless International、Sprint PCS、U S West Wireless)に対するサービス事業を行うようだ。
 ということは、携帯電話技術の粋を濃縮したQualcommの無線通信用半導体チップに、MicrosoftのOS「Windows CE」を搭載することを意味する。これにより、MS Exchangeのようなソフトとリンクさせて、ネットワークの仕組みを一挙に起ちあげようとの計画といえよう。

 Microsoftは様々な形で、「Windows CE」の浸透を図ってきたが、ハンドヘルド・コンピューター/PDAの分野では、相変わらず、圧倒的な地位を獲得できずにいる。そこで無線通信分野のリーダーと連合を組むことで、優位に立とうという目論見と考えられる。

 ここでの競合OSは「Palm」だが、こちらは、すでに、Nokiaとの連携が発表されている。

 さらに、モバイル時代を意識して作られたPsionのOS、「EPOC」 も、携帯電話の雄(EricssonとNokia)が支援する体制ができた。Psion、EricssonとNokiaはSymbianを設立し、アブリケーション展開を開発中である。EricssonとNokiaが絡むからには、安価な近距離無線通信標準となったBluetoothの活用がメインにならざるを得まい。

 このような動きを眺めると、どうしてもOSのヘゲモニー争いに目を奪われがちだ。しかし、勝負の鍵をにぎるのは、あくまでもアプリケーションだ。どのように、モバイルを活用するのかのコンセプトが重要なのである。例えば、Bluetoothがいかに優れた技術であっても、これを活用した魅力的なアプリケーションが開発できなければ、宝の持ち腐れとなる。どのような顧客が、どのように機器を用いるかという、コンセプト開発ありきだ。

 従って、Wireless Knowledgeを設立したからといって、Qualcommが「Palm」軽視に方向転換する訳ではあるまい。「Palm」ベースのスマートフォンも重要なのだ。現状のPDAの主流である、「Palm」の発展形でも、斬新なコンセプトは開発可能なら、こちらも重要な筈だ。

 当たり前だが、OSが決まらないで、いくら素晴らしい製品コンセプトを描いても、砂上の楼閣である。従って、OSの動きが最初に現れる訳だ。OS無しでは、アプリケーション開発ができないから当然のことだ。その動きが、今、始まっているのだ。
 ところが、日本メーカーは、この点で大きなハンディを背負っている。独占的通信キャリアの機器開発方針に従わざるをえないからだ。通信キャリアがOSベンダーと交渉する仕組みである。メーカーには、OSを検討し、様々なアプリケーション開発を試行できる自由度が極めて少ない。従って、無線ネットワーク構築といった本質的な領域のアプリケーション開発には踏み込みようがない。官納型の「共同開発」に加えてもらう以外、手の出しようが無い。メーカーは、末梢的なアプリケーション開発で頑張るしかない。
 そうなれば、おそらく工芸品的な素晴らしい機器は登場するだろう。しかし、ベーシックな技術領域での技術力は落ち込むだろう。

 その上、日本メーカーは、さらに大きなハンディキャップを抱える。通信インフラである。インフラ構築は膨大な投資を要するから、簡単に変更できない。ところが日本の場合は、携帯電話インフラの抜本的更新を急がねばならない。現行のインフラは、標準論議に載せられるようなものでない。
 一方、欧州はGMS、米国はCDMA(TDMA等も入るが)という現状のシステムで検討してもかまわないのだ。次世代は、このインフラが強化されていく仕組みであり、日本のような断絶的なものでなく、段階的な発展形で次世代システムに移行する。研究開発も、現行システム対応から始めてかまわないのだ。
 日本では、こうはいかない。現行システムを対象にしても、その成果は結局無駄になる。当然、次世代携帯電話のシステムに注力せざるをえない。しかし、次世代通信の浸透が急速に進む保証はない。ケータイ景気に翳りがでたら、日本メーカーは苦しくなろう。

 現行のGMSやCDMAというインフラのままで、有効なアプリケーションの開発を進めている欧米企業の動きを、日本企業は眺めるだけかもしれない。しかも、欧米でキーアプリケーションが登場しても、インフラが異なるから、日本に導入できない可能性さえある。

(参考) 「動きはじめた日本語PDA市場…」


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