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2002.9.7
 
 


日本の半導体生産能力低下…

 この先の経済状況は不透明と言われているが、300ミリシリコンウエハの半導体工場の新増設が着々と進行している。2002〜2004年にかけての工場投資で、今後の半導体産業地図が大きく書きかわる。

 工場の新増設には1,500〜2,000億円という巨大な投資が必要であり、どの地域に投資されるかで、国の経済にも大きな影響を与える。将来の国力をも決めかねない分野でもあるから、極めて大きな問題である。
 そのわりには、当該産業外での関心は薄いようで、海外の動きが単発的なニュースとして時々取り上げられるだけだ。おそらく、景気の悪い話しを聞きたくない人が多いのだろう。

 2002〜2004年の海外の投資計画ニュースを簡単にまとめてみると、全体の流れが見えてくる。

地域 特徴
米国 インテル、AMD、IBM、TI、モトローラが積極的だ。インフィニオン、NECも進出する。判然とはしないが、マイクロンも動くから、総額で2兆円の投資規模に達するのは間違いあるまい。
欧州 インテル、STマイクロがすでに動いている。
韓国 サムスン電子は相変わらず果敢な大型投資を進める姿勢だ。これにマイクロンへの事業売却を取りやめたハイニックスが加わる。
台湾 TSMCの投資計画は巨大だ。UMCも、海外展開も加え、積極姿勢は変わっていない。これに加えて、ウィンボンド、パワーチップ、PROMOS、南亜テクノロジー等、計画乱立状態だ。中国への移転もあるが、文字通りなら、1兆5000億円〜2兆円になる。
シンガポール UMC(IBM、インフィニオン)、チャータードの計画がある。大きな計画だから、紆余曲折はあるだろうが、8000億円レベルになりそうだ。

 今後、半導体生産の中心を担うのは、米国と台湾だ。中国は不透明だが、台湾企業を中心にすでに進出競争が始まっている。こうしてみると、日本国内投資が一番低調になりそうである。

 90年代初頭に指摘され始めたが、日本工場の生産品の品質が優れているとはいえなくなった。こうなると、コストが嵩む日本立地の魅力は極めて低い。日本のエンジニアの報酬が高いといわれた時代は終わったにもかかわらず、日本人を活用するメリットを語る人もいなくなった。質の高い労働力という観点でも、日本立地の優位性はほとんど無い。巨大なユーザー産業があるといっても、成熟した企業が目立つから、長期的な関係を結ぶために日本に生産拠点を置こうと考える人も稀だ。
 しかも、設計と製造の技術部隊が一緒になって苦闘すれば競争力向上に繋がる大量生産品分野で、日本企業が地位を失なっている。日本企業にとっても、国内大規模工場投資の意義は無くなっているのだ。

 ついに、日本は世界の半導体生産基地ではなくなる。


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