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2002.12.15
 
 


金探鉱技術…

 政治情勢が不安定になると人々がゴールド買いに走り価格が急上昇する、との説が喧伝されている。価格が320ドル近辺に回復したことで、営業マンの説得にも力が入っているようだ。
 しかし、欧州の中央銀行が、金利を生まないから売却したり、貸株ならぬ貸ゴールドで利子を稼いでいるのに、こうした説を信じる人はいまい、と思っていたら、実際に、購買し退蔵する人が増えているという。
 ゴールドを大量に保有する米国にとっては、価格復活に繋がる動きは有り難いだろうが、今後も価格が上昇するとは思えない。

 ゴールド価格急騰で有名なのが、ソ連のアフガニスタン侵攻相場である。1980年に一挙に888ドルになった。お蔭で、産出コストが高い鉱山からも出荷が始まり、一挙に価格低迷状態に突入、というのが1990年代の実相だろう。
 このため、南アフリカは昔のような圧倒的な地位を失った。米国とカナダの合計産出量の方が多いし、オーストラリア、ロシア、中国も産出に積極的だ。
 90年代後半は、要するに、需要供給バランスの是正期だったといえる。よく言われているように、300ドルを切る価格になると、コスト割れを起こす鉱山が撤収し、供給が細くなる筈なのだ。
 といっても、政治的に閉山は難しいから、我慢比べが続いていたのである。

 しかし、300ドルを切る価格が長く続いた理由は、我慢ではなく、探鉱の技術革新によるコスト低減といえる。確実に優良新鉱脈が発見できるようになったため、政治リスクの少ない先進国での低コスト産出が可能となり、供給が細くならなかったのである。

 カナダのBarrick Goldは、企業買収で規模を拡大し続けてきた巨大金鉱山企業だ。この企業の業績を見ると実態がわかる。探鉱活動により、90年代中頃に埋蔵量を大幅に増加させることに成功しており、2001年のコストは162ドルである。[産金シェア世界2位と言われている。](http://www.barrick.com/)
 今後も、技術革新は進む。金は希少ではあるが、革新技術でペイする鉱山を見つければ、既存鉱山が成熟しても、供給が細ることはない。

 実際に、技術革新は始まっている。

 2001年、オーストラリアの巨大国際企業BHP Billitonは、探鉱のイノベーションに繋がると評価されている「Airborne Gravity Gradiometer」の詳細を発表した。[精密な重力測定システム] (http://falcon.bhpbilliton.com/docs/PreviewMagazineArticle.pdf)

 こうしたイノベーションの背景にあるのが、産官学の鉱物資源探鉱国家プロジェクトである。大学、研究機関、小企業が互いに負担し合い、活躍の場を構築しているのだ。
(http://leme.anu.edu.au/)
 ここで、長期的に、3D探鉱、GIS、エキスパートシステムといった技術を、徹底的に深堀りしている。

 当然のことながら、このような展開を糧にして、探鉱ソフト業界が急進展中だ。すでに、探鉱ソフト分野の世界シェアではオーストラリアが圧倒的1位と言われている。

 IT技術の進歩によるハイテクの嵐が、鉱山業界を席巻している状況と、その波を活用する産業が急成長する様がよくわかる。
 オーストラリアは鉱山業という一見ローテクに見える産業を活用して、輸出できるハイテク戦略産業を確立したのである。


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