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2003.1.10
 
 


金型産業の衰退…

 日本、台湾/中国、韓国における金型供給体制が大きく変化している。台湾での展示会で日本企業の存在感がなくなった点だけでも、地殻変動は誰の目にもあきらかだ。

 2002年8月に発表された業界分析によれば、韓国、台湾の産業規模はそれぞれ、日本の8分の1程度という。中国は輸入国であり、まだまだ基盤が脆弱だが、市場規模は日本の5分の1に到達したらしい。日本の金型産業はいまもって世界で突出している。日本が、アジア全域の製造業を支えているといえる数字である。(大阪経済大学経済学部斉藤栄司教授 「アジアにおける金型供給構造と日本の金型産業−中国、台湾、韓国、日本の金型産業の現状比較から−」国民生活金融公庫総合研究所「調査季報」62号)(http://www.kokukin.go.jp/pfcj/chokihj.html)

 ところが、よく知られているように、「繁忙で赤字」の日本企業が多い。
 一方、韓国企業や台湾企業は高収益といわれている。驚くべき産業構造である。

 基本的には、日本の金型産業も、過剰設備なのである。生産性向上を図ったところで、競合の低価格にはとても対応できない。このため、90年代は急速に競争力を落としているのだ。生命線であるIT投資もままならないまでに追い込まれている。

 ところが、韓国企業は90年代後半に果敢なIT投資を行ったため、顧客対応では日本製品とすでに同等のサービスが可能になっている。日本製品が韓国製品に代替される例も増えている。通常の金型製造の技術水準は日本を越えつつあるといえよう。
 一方、台湾は、早くから中国進出を図っている。価格競争力上、中国移転が進んでおり、中国とのすみわけが進んでいるようだ。このため、華人ネットワークを活用している企業は好調である。中国市場の拡大に応えるだけでも収益があがるから、先端技術開発に進む気配はないが、基礎力は一貫して向上しているといえよう。

 こうしたなかで、日本はマスマーケットでの開発と、精密金型/大型金型といったハイレベルな開発に注力している。この点だけ見ていれば、いまもって技術力を保持しているようにも見える。

 しかし、問題はマスマーケットだ。この分野では、ユーザーの海外進出した日本企業が、実質的にフリーで、海外金型メーカーへ金型技術を移転しているようだ。図面、データ、放電電極まで、日本の金型メーカーのものを海外に持ち出し、現地企業に使わせているからだ。このような動きが常態化すれば、日本の金型企業の技術と海外企業が並ぶのは時間の問題といえよう。

 知的所有権を無視しているのは、海外企業ではなく、日本企業である。そして、その動きは最終的には自分の首を締める。
 いまや「スタイリッシュ」が製品差別化の鍵を握るようになっている。こうなると、デザイン品質やモジュール化対応の要石である、金型技術が極めて重要になる。日本の強みであった金型産業の競争力が失われれば、競争力低下必至といえよう。


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