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2003.2.18
 
 


有機トランジスタの登場…

 2003年1月、Alien Technologyがジレットから5億枚のICタグを受注したと発表した。 (http://www.alientechnology.com/library/pr/alien_gillette.htm)
 RFIDタグ自体は珍しくないが、微細なICチップをタグ上に簡単に搭載させる技術「Fluidic Self Assembly」の商用化が始まったという点で目を引く。

 これで、センサー等の微細な部品を低コストでフィルムに実装する技術の見通しができたことになる。「安価」なフィルム型機器実現への大きな一歩といえる。

 一方、フィルム型の表示装置についても、電子ペーパー技術が実用度を急速に向上させている。(例えば、http://www.eink.com/やhttp://www.cdtltd.co.uk/)

 ここまでくると、全フィルム化された機器が登場してもおかしくない所まで、技術が進歩してきたといえる。

 しかし、フィルム上に実装したとは言うものの、今までのシリコンICの延長技術が多い。これでは、コスト面で大きなインパクトを与えることになるまい。
 フィルム化がインパクトを与えるのは、リソグラフィープロセス不要の非シリコンICが登場した時だろう。高額投資を要するマスク作りや、コストが嵩む露光作業が不要になれば、格段に安価なチップが登場するからだ。

 ところが、こちらも実用化の目処が立ってきたようだ。

 2000年に創立した英国のベンチャーPlastic Logicはインクジェットによるトランジスタ回路製造技術を固めつつある。(http://www.plasticlogic.com/thinfilmtransistors.php)
 もちろん、シリコンICと比較できる性能は発揮できないが、ICとしての基本機能は実現可能なようだ。
 インクジェット生産が商用化できれば、少量生産もできるし、安価な大量生産にも対応できる。このICを活用した様々な応用が生まれると思われる。

 有機材料のネックは安定性だが、知見が深くなっているので、困難とは言えなくなっている。液晶ディスプレーでは克服済みであるし、ポリマーを用いたメモリーも使える時代に入っている。[ノルウェーの研究開発企業Opticom ASAがインテルを取り込んで立ち上げた子会社Thin Film Electronics ASA(TFE)は全ポリマー化メモリにも挑戦している。] (http://www.opticomasa.com/)

 全有機トランジスタの提案は、もともとは日本発らしい。(肥塚裕至「有機FETのルーツは日本にあった!:導電性ポリマーから超伝導まで」化学 2001年10月号)
 しかし、日本企業は有機のコンセプトには消極姿勢で望み、上記のベンチャーや、先進技術志向のフィリップスやルーセントに先行されたようだ。
 今では、欧米の大手エレクトロニクス/化学メーカーもこの分野で研究開発を進めている。

 これに対応すべく、日本でも、目立たないが、独自の要素技術開発が行われているようだ。まだ遅くない、というのだろうが、有望性が濃厚になってから、後発で参入して、成功のチャンスが掴めるだろうか?
 後発なら、新しい技術体系や斬新なコンセプトで戦うか、先発と協力してチャンスを探るのが普通だと思うのだが。


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