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2003.5.26
 
 


話題のシリコン製造法…

 高純度シリコンの原料モノシランは複雑な化学プロセスを経て製造される。このため、どうしても製造コストが嵩む。半導体や太陽電池の製造プロセス技術が進歩したため、製品化コストは劇的に低下しているが、原料の高純度シリコンのコストが下がらないため、画期的な低価格の実現までには至っていない。

 ところが、2003年5月、突然、Natureに新しいシリコン製造技術の論文が掲載された。溶融塩電解を適用すると低温反応が可能になるという、京大伊藤靖彦教授等の研究結果である。Natureの審査を通過したのだから、これはひょっとしたら大物技術ではないかと話題を呼んでいる。 (http://www.nature.com/cgi-taf/DynaPage.taf?file=/nmat/journal/vaop/ncurrent/abs/nmat900.html&dynoptions=doi1053336856)

 伊藤教授は、溶融塩電解でシリコンが安価に製造できると提起してきた方だ。
 溶融LiCl-KClを電解質として、400℃の環境下で電気化学反応を進めると、水素ガスと粗シリコンの還元反応が陰極で発生し、モノシランガスを製造できるという話しは関係者なら一度は耳にしている筈である。

 溶融塩電解反応のメリットは、極めてシンプルなプロセスという点だ。当然、装置も簡素なもので済む。(http://130.54.38.171/researchj.html)
 しかも、反応過程でエネルギー消費量を低く抑えられるなら、シランガス製造費用の大幅低減が可能になる。

 しかし、このようなコスト低下論議はほとんど意味がない。

 問題は、この反応プロセスが、高純度化に向いているかどうかである。溶融塩電解法ではどのような不純物が発生し、その除去がどの程度面倒なのかがわからないと、コスト低減につながるとは言いきれない。
 もともとわざわざシランガスにするのは、高純度化するためにはガスプロセスが便利だからだ。膨大なコスト発生の源は、シリコン化プロセスというより、不純物低減プロセスである。

 今までの常識からいえば、この観点から、溶融塩の産業研究は避けた方が無難だと考えられていた。
 しかし、この常識は変わるかもしれない。燃料電池研究が進んでいるため、溶融塩の化学反応技術が急速に進歩しているからである。


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