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2003.6.22
 
 


プラズマディスプレー技術のリーダー…

 日本の大手家電メーカーが揃ってプラズマ・ディスプレーTVを戦略商品としている。ここのところ、市場は毎年倍々で拡大しているから、当然の姿勢に映る。
 揃って生産設備増強に動いており、トップを目指して争うと語る。しかし、どうしてトップになれるか、理屈は定かではない。
 もちろん、韓国企業にとっても戦略商品である。こちらも、生産増強路線だ。

 このパターンは、液晶ディスプレー産業で発生した競争とそっくりだ。
 韓国企業は、後発で出発し、タイミングを見計らって大型投資を敢行した。これにより、技術の先頭集団に入ると共に、圧倒的なコスト競争力を発揮し、一気にリーダーの座を奪った。
 全く同じような動きがおきている。

 2003年5月20日、LG Electronicsは、2005年までにトップの地位(25%シェア)を獲得、との威勢のよい リリースを出した。3つのラインの合計年間生産能力が160万台だというから、宣伝とは思えない。本気である。(http://www.lge.com/about/news/news_read.jsp?cnews=1&seq=3001)
 すでに、北米市場ではLG製品はシェア2位だというから、販売基盤は整ったことになる。これでコスト競争力がつけば、一気に伸張する可能性がある。 (http://english.donga.com/srv/service.php3?bicode=030000&biid=2003051680748)

 Samsungがこのまま放置する訳がない。間違いなく熾烈な競争が始まる。
 もともと、Samsung SDIは2003年3月に生産能力増強を発表している。(http://www.samsungsdi.co.kr/sdi_en/news/news_view.jsp?page=1&no=998&type=null&searchtext=null)
 それと同時に、技術競争も仕掛けている。パネル大型化競争だ。2002年秋には、東京で開催されたWPC WXPO 2002に63インチ製品を展示して技術力をアピールした。そして、2003年5月14日の発表によれば、2004年に70インチ(155x100cm-1920x1080画素)を発売するという。(http://english.chosun.com/w21data/html/news/200305/200305140005.html)
 一方で、低コスト(重要な部分で、製造ステップ削減で約1割生産性向上、材料3割削減)・高水準画質製品(明るさ15%、解像度38%向上)が2003年末から生産開始予定である。こうなると、とても後発とは呼べまい。一気に、先頭を走り始める訳だ。(http://www.samsungsdi.co.kr/sdi_en/news/news_view.jsp?page=2&no=955&type=null&searchtext=null)

 といっても、この技術「ブレード成型法」の発祥元は三菱マテリアルである。もとは、日本の技術なのである。 (http://www.mmc.co.jp/japanese/corporate/news/news20021126.html)
 エレクトロニクス産業の構造変化を如実に示しているといえよう。
 この変化に無頓着なまま、伸びる産業だから、積極果敢に進もうと考える企業は、早晩、没落することになろう。

 日本は、エレクトロニクス製品のモノ作り技術ではピカイチと言う人が多いが、自動車とは違い、全体設計やアセンブル技術が特に優れていた訳ではない。又、優れた仕様と品質が実現できたのも、技術力というより、日本の顧客の高度な要求に真面目にエンジニアが応えた結果と見た方がよい。
 日本が強いのは、材料の作り込み技術と、材料特性に合った利用方法である。異なる技術分野のエンジニアが上手く協業しながら、最適解を見つけ出す体制が、この強さを引き出している。

 最適材料を最適プロセスで使うのは、思った以上に難しい。実験計画法ですぐに解が見つかりそうなものだが、現実には簡単ではない。材料とプロセスの関係は複雑であり、両者を調整して、最適条件を見つけるのは思った以上に大変な仕事なのだ。
 このスキルは貴重であり、各社とも、極く小人数の研究者・エンジニアしか持っていない。この力をどう生かすで勝負がつく。
 日本企業が強かったのは、この力を生かせるプラットフォームを持っていたからだ。両方の分野の少数の黄金の腕が生み出した成果を、大勢のエンジニアが強力に支援していたといえる。

 今、この体制が急速に変質しつつある。企業関係がオープンになってきたため、スキルを活かす仕組みが崩れて始めている。本来なら、この仕組みの補強策を急ぐべきだが、残念ながら、知恵が無い経営者が多い。というより、問題意識そのものが無いのかもしれない。
 勝ち組みと負け組みに大きく分かれるのは当然のことと言えよう。


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