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2004.2.8
 
 


200億円判決に関する「常識」…

 青色発光ダイオード訴訟で200億円の支払い命令の判決が出てから、様々な意見が飛び交っている。

 しかし、その議論の内容には、がっかりさせられた。
 支払い金額の大きさばかりが強調されたからだ。
 典型は、「判決は常識を超えたものとの印象だ」というもの。

 当たり前だ。この訴訟は、他の特許紛争とは意味が全く違うからだ。

 常識から外れているのは判決結果ではない。

 「報酬が2万円とあまりに少なかった」企業の姿勢が問題、と指摘する電機メーカーの見方こそ常識であり、被告企業が常識外れだったのである。
  (http://www.yomiuri.co.jp/business/news/20040130ib31.htm)

 この紛争は、日本の大企業が抱えている、従業員発明に対する「正当な」報酬問題とは全く違う。
 とてつもない大きな利益を生んだ発明に対して、特許報奨金1件1万円を2件支払っただけで済ました企業に対しての判決なのだ。
 (報酬額の妥当性で争っている訴訟ではない。発明に対する報酬を支払うつもりが無い企業に対する司法側からの回答といえよう。)

 非常識な企業に対しては、常識的な金額の判決を要求するのは間違い、と考える方が「常識」だと思うのだが。
 これを「常識」と見ない人は、訴訟を受けない限り、特許報奨金1件1万円を払っておけばかまわない、との判決を出せと主張しているのと同じことになる。
 しかし、先の電機メーカーの見方は少数派らしい。

 誤解なきよう、事実認定を、明確にしておこう。

 青色発光ダイオードは、発明者個人の努力による発明である。実験装置購入費用が出ただけで、当該企業の技術支援は無いとされた。実際、手伝った人は、新人を含めて2名だけである。しかも、試作プロセスなしで、本格生産を始めている。
 (この企業はライセンスアウトせず、自社で製造販売まで手がけているから、企業が努力してビジネスに仕上げたように見えるだけという訳だ。この技術を譲渡してもらえば、他の会社でも、すぐに大型事業化できたと考えたのである。)

 「会社の貢献度はないに等しい」と見なせるほど、技術完成度が高かったのである。
 この認定が間違っていない限り、他の訴訟での金額における「常識」が通用する筈がない。
  (http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/c617a99bb925a29449256795007fb7d1/857cf473624ccc5e49256e2b002f2054?OpenDocument)

 デバイス開発で、このような発明を、今まで見たこともなければ、聞いたこともない。
 しかし、被告企業側が、まともな反証を示せなかったのだから、事実と考えるしかあるまい。

 従って、日本の大企業における、特許創出/事業化の「常識」に照らして、判決結果を見るべきではない。

 日本社会の常識に照らして、非常識な姿勢を続ける企業に対する判決として妥当か、をコメントすべきである。


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