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2004.4.07
 
 


欧州半導体産業の課題…

 汎欧州マイクロエレクトロニクス共同研究プログラム「MEDEA+ 」が活動を開始したのが2001年1月。前期4年、後期4年の、長期プロジェクトだ。(1)

 「system innovation on silicon for the e-economy」との明確な目標を掲げ、技術のプラットフォーム構築作りに注力してきた。
 似たような共同研究プロジェクトは、日本や米国にもあるが、「MEDEA+ 」の特徴は、裾野が広いことである。
 小企業、大企業、研究機関、大学など280もの組織から、すでに3000人ものエンジニアが参加したという。

 「MEDEA+ 」プログラムの力だけとは言えないが、こうした動きが欧州のマイクロエレクトロニクス産業を支えているのは間違いない。

 半導体分野の発展のためには、このような共同研究が重要なのである。
 欧州は独自の仕組みを、全欧州規模で作りあげたと言えよう。

 と言っても、欧州が優れていたと言うより、日本の半導体産業のかつての成功を教訓にしたに過ぎない。
 日本の飛躍は、半導体メーカーと装置メーカーの共同研究とされているが、その本質は、技術課題を明確にして、技術ロードマップをはっきりさせたことにある、と見たのである。
 つまり、関係する様々な企業が、同一目標に向かって一気に開発を進めることができれば、イノベーション創出に繋がり易くなる、と考えのだ。
 但し、欧州版は、製造法と適用開発の、両方の技術分野を絡めた。様々な分野の企業や研究機関が参加する共同研究こそが、産業振興の鍵と看破したのである。

 その結果、欧州も、ついに、「a four-year success story」が語れるようになった。(2)
 (この成功物語は一読の価値がある。)

 と言うと失礼かもしれないが、業界を見てきた人なら、正直な印象だろう。
 欧州の半導体メーカーは、1990年頃は、日米企業に隠れて全く目立たなかった。当時は、欧州に注目する人など、稀だった。
 ところが、欧州半導体産業は、ケータイと自動車で飛躍を遂げたのである。
 (日本は、この成長分野で、メジャーな役割を果たせなかった。)

 そして、今や、強固なプラットフォームを作りあげていると見てよいだろう。
 なかでも、アーキテクチャーで先頭を走っている点が、欧州の強みと言えそうだ。
 この強みを生かし、さらに発展できるかが、欧州の課題である。

 歴史的に見れば、日本主導のメモリから、米国主導のプロセッサへと主流が移ったのだが、すでにプロセッサは成熟している。現在は、次ぎの波へと移行中と見てよいだろう。当然ながら、次世代は、システムチップだ。
 欧州が、3億人以上の人口を擁する地元で、新市場を切り拓けば、一大飛躍もあり得る。

 とは言え、中国が製造基地化するのに伴い、製造技術が急速に移転する可能性もある。
 もしもそうなれば、製造法と適用開発を両輪とした汎欧州の研究開発体制も崩れかねない。
 アーキテクチャーの強みが生かせるとは限らないのである。

 もっとも、この課題は、日本にも当てはまる。
 企業統合で効率性を向上させ、果敢な工場投資を行っただけでは、競争力向上に繋がるとは言い難いからだ。次世代商品は、なんといっても、市場開発が肝である。
 過去を振り返れば、日本企業はゲームでは成功したが、ケータイでは失敗した。この教訓を生かして、新市場を開くことができるだろうか。

 半導体産業は正念場にさしかかった、と言えよう。

 --- 参照 ---
(1) MEDEA+ はEUREKA傘下。以下のプログラムの継続版。
  1989-1996: JESSI(Joint European Submicron Silicon)
  1997-2000: MEDEA(Microelectronics Development for European Applications)
(2) http://www.medea.org/webpublic/medea_brochure.pdf


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