↑ トップ頁へ

2004.8.9
 
 


携帯HDDミュージックプレーヤーの競争…

 2004年7月24日、日本でも「iPod mini」(1)が発売された。好評のようだ。

 一方、7月10日には、世界最小、最軽量の20GBハードディスク内蔵「ネットワークウォークマン」(NW-HD1)が発売された。(2)
 「"いつでも、どこでも、手軽に"音楽を楽しむウォークマン新世代へ」とのふれこみである。(3)
-- ソニーの25年 --
カセットテープ 「ウォークマン」
CD 「ディスクマン」
MD 「MDウォークマン」
HDD 「ネットワークウォークマン」
 しかも、発表の場で、社長自ら「HDD内蔵ネットワークウォークマンはiPod を追い抜く」と話したから、マスコミの話題になった。(4)

 東芝も参入しており、景気の良い発言があったお蔭で、米国のコンピュータメーカーのヒット商品に対して、日本の家電メーカーの追撃なるか、といった調子のコメントが溢れ返った。
 当然ながら、日本企業の飛躍を期待するようなトーンの意見が多い。

 期待はわからないでもないが、応援のパターンには違和感を感じる。

 と言うのは、HDD内蔵ミュージックプレーヤーは、現時点ではどう見ても家電製品ではないからだ。
 MD機器とは全く違うのである。
 パソコン無しで、HDD内蔵ミュージックプレーヤーに入れる数千曲をコピーしたり、管理しようと思う人がいるとは思えないからだ。
 「ネットワークウォークマン」は、あくまでも、パソコン周辺機器なのである。

 その点で、次世代ウオークマン構想は誤解を与えがちだ。一日中何処でも音楽、という文化では連続性はあるが、録音ライブラリーを作るという点では非連続だからだ。
 予め、ライブラリーなど作らないで、その場で好きな音楽を選ぶという、全く新しい文化が発生したと考えるべきだと思う。

 この観点で製品仕様を見ると、「ネットワークウォークマン」はこの流れに乗ろうとしているのか疑問を感じる。

 まず第1は、パソコンにおける音楽ファイルとして普及しているMP3 規格でなく、ATRAC3 を基本にしている点だ。
 もともと、ATRAC はMDに用いられてきた規格である。MD用として、すでにネットワークからATRAC3 の音楽ファイルダウンロードの仕組みも稼動しているし、ATRAC 用の半導体やプログラムも揃っている。MDの流れを受け継ぎたいのなら、こうなるのも必然かもしれない。
 しかし、MDは世界に普及している製品ではない。しかも、今後、パソコン無しで、HDD内蔵ミュージックプレーヤーを使うようになるとも思えない。
 すでにパソコン上に大量にファイル化されている音楽情報が簡単に使えるようにしないと、パソコンユーザーに嫌われかねない仕様といえる。

 第2は、付属プログラムの機能が比較的弱い点である。核となる機能は、音楽ファイルをパソコンから携帯プレーヤーにコピーすることだ。単純に見えるが、数千もあるファイルをどう管理するかで、使い勝手は相当違う。「ネットワークウォークマン」v.s.「iPod」といった性能や使い勝手の勝負も重要だが、それ以上に重要なのは、コピーマネジメントのソフトでの優位性ではないだろうか。つまり、主戦場は、「SonicStage」v.s.「iTunes」である。家電とは違うのである。
 現時点では、大量のファイルをどのように整理するか、という点で見ると、使い勝手には相当な差があるようだ。ここで勝てないと、追い抜くのは難しいのではないだろうか。

 さらに不可思議なのは、騒がれていないが、一寸前に発売された「VAIO Pocket」(VGF-AP1)もHDD 内蔵ミュージックプレーヤーだ、という点だ。(5)
 こちらは、正真正銘のパソコン周辺機器である。
 このコンセプトでは、後発として扱われ、目立たないから、家電のウォークマンのブランドイメージにのったのかもしれないが、そのような発想がプラスに働くとは限るまい。
携帯
MP3
プレーヤー
「mpman」、・・・
携帯
HDD
プレーヤー
Apple 「iPod」、
Toshiba 「Gigabeat」(6)
Creative Technology 「NOMAD Jukebox」(7)
Rio 「Nitrus」(8)
Sony 「VAIO Pocket(VGF-AP1)」、「(NW-HD1)」、
・・・

 実は、将来を考えれば、携帯HDDミュージックプレーヤーはパソコン周辺機器と位置付けるのは間違いかもしれないのである。
 フラッシュメモリの場合なら周辺機器であるのは間違いないのだが、HDD 内蔵となると話が180度変わるのだ。音楽プレーヤーと言っても、仕様としては、外付けの巨大なハードディスクでしかない。となれば、パソコンを音楽プレーヤーのHDD からパソコンを立ち上げることも可能である。

 つまり、全く新しい携帯HDD の利用方法がありうるのだ。当然ながら、PDAとしても使える。これからどのように発展するかは、全く予想がつかないのである。

 おそらく、「iPod 」が普及すれば、新しい用途が見つかり、それに合ったプログラムが開発され、市場が変わり始める。その時に、携帯HDD のリーダーが誰になるかは、現時点では想像がつかない。

 携帯音楽プレーヤーを家電製品と考えていると、この波に乗りそこねる可能性は高い。

 --- 参照 ---
(1) http://www.apple.co.jp/ipodmini/index.html
(2) http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/200407/07-0701/
(3) http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/200407/04-033/
(4) http://pcweb.mycom.co.jp/news/2004/07/02/011.html
(5) http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/200405/05-0510/
(6) http://www.gigabeat.net/mobileav/audio/
(7) http://www.nomadworld.com/products/Jukebox/
(8) http://www.rioaudio.jp/products/hddindex.html


 技術力検証の目次へ>>>     トップ頁へ>>>
 
    (C) 1999-2004 RandDManagement.com