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2004.9.7
 
 


超スパコン用チップだけの登場…

 2004年8月20日、超高速処理チップ開発成功との発表があった。
 1チップの演算性能が230ギガフロップスだという。(1)

 分子動力学シミュレーション計算に特化した専用計算機用ではあるが、衝撃的な数字である。というのは、このチップを用いたコンピュータを作れば、その性能はペタフロップスを越えるからだ。

 もっとも、発表では、注意深い表現になっており、「今後製作経費が確保できれば」実現できるそうである。

 スーパーコンピュータにしては、チップやボードは安価でできそうな構造である。このため、かなり早くペタフロップスを実現できるのではないかという噂もあったが、そうはいかないようだ。実際は結構難しそうである。
  → 「超スパコンの登場」 (2003年10月2日)

 そう考えるのは、性能が、どうもはっきりしないからである。

 Pentium 4(3.6GHz)の32倍の演算能力で、消費電力は1/4という数字は語られているが、このチップ上で走らせるソフト開発の進捗状況は曖昧なままである。「世界中で使われているタンパク質の分子動力学シミュレーションのためのソフトウェアAmber, Charmm等への対応を進めています。」というのだ。実際、動くことが検証できているのか、稼動には問題があるのか、はっきり語っておらず、気になるところである。

 発展性があるかどうか、はっきりしないのは、この技術の基盤となっているのが東大のGRAPEシステムだからだ。大変優れたシステムであることは、Gordon Bell 賞の受賞でわかるが、汎用性には欠けるのである。天文シミュレーション専用なのだ。
 天文学のために、年間電力料金10億円のコンピュータを400億円かけて、開発するのは、どう考えても難しいから、5億円で開発したというのが実情らしい。(2)
 素晴らしい成果だが、余りにニッチ色が強い。

 しかし、分子動力学シミュレーションが稼動するとなれば、話は別だ。使いたい企業は、目白押しの筈だ。
 そこまで行くだろうか。

 もっとも、成功しても、問題は残る。

 分子動力学シミュレーションのリードユーザは、どう見ても、海外の企業だからだ。
 日の丸プロジェクトにこだわり続けるつもりか、問われることになろう。

 --- 参照 ---
(1) http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2004/040820/index.html
(2) http://jun.artcompsci.org/press/2003-gbprize.html


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