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2006.4.26
 
 


「ゆりかもめ」事故を振り返る…

 有明〜豊洲間が延伸開業したばかりの東京臨海新交通臨海線「ゆりかもめ」が、2006年4月14日に事故をおこし、鉄道事故調査委員会(1)が調査に入った。

 金属疲労で金属製部品が壊れたため、タイヤが外れたそうだ。

 “昨年10月から、3年に1度の保守点検で亀裂を見つける精密検査”が行われていたが、まだ対象になっていなかった車両らしい。“西武鉄道の新交通システムで、昨年夏、同型の部品に亀裂が見つかり”点検の仕組みはできあがっていたが、急いで臨時点検が必要とまでは判断しなかったのである。(2)
 さらに、“事故の3分前に・・・機器の故障を示す信号を出して停止し・・「もう脱落しそうになっていたのかもしれないが、信号をリセットすると正常の状態に戻ったので運行を再開・・」”したのだという。(3)

 「ゆりかもめ」は、基本的には神戸の「ポートライナー」のコピー版であり、閉じた専用軌道上を走る無人運転連結バスのようなものである。(4)
 東京の新交通が特に新しいことを追求したとは思えないが、全く同じではない。従って、「ポートライナー」で発生しなかった現象が、「ゆりかもめ」で発生することはありえる。又、他では、軽微な問題でも、「ゆりかもめ」では大きな問題になるかもしれない。
 新交通は歴史が浅いから、よくわからないのである。

 鉄道とは、そういうものである。

 例えば、新交通の、大阪市交通局「ニュートラム」も、1993年10月5日、事故を起こした。終点の住之江公園駅で車止めに衝突したのである。(負傷者215〜217名)(5)

 同じようなことが発生しないかと言われても、それは誰にもわからない。
 鉄道の限界である。

 自動車とは違い、鉄道は軌道が決まっている。従って、想定を大きく超えた条件での実験は難しい。しかも、様々な実車で事故実験もできかねる。データは限られているのだ。
 車両毎の違いや、荷重のかかり方など、条件の違いで、Gのかかり方は相当違う筈だが、極限状態ではどの程度差がでるか、想定するのは難しいのである。シュミレーションを数多くやったところで、もとのデータベースが限られているから、確実とは言いかねるのである。

 「ゆりかもめ」も、確か開業して暫くしてだから、1996年頃だろうか、オーバーランして動かなくなり大勢の乗客がとじ込められた筈である。

 想定と、現実は相当違うのである。

 それでは、その後、この想定を補正して、コントロールできるようになったかといえば、そうでもなさそうである。未だに、オーバーラン経験者がいるようなのだ。
  ・2004年12月31日、汐留駅で。(6)
  ・2005年10月27日、テレコムセンター駅で。(7)

 いくら優れたシステムを構築しても、一寸条件が違ってしまえば、上手くいかないこともある。しかも、歴史が浅い新交通では、それは避けられない。

 要するに、鉄道技術は、経験をベースにして改善を繰り返すことで発展していくものなのである。

 特に、「ゆりかもめ」の場合、素人が見ても、有明〜豊洲間の軌道は今までとはかなり違った道筋に見える。こうした軌道を走り続けると、車体にどのような影響が出るのかは、まだよくわかっていない。全く無視できるものかもしれないし、そうでないかも知れぬ。気付いていなかった複合要因でも加われば、想定外の大きな影響がでる可能性は否定できないのである。

 鉄道とは、そんなものである。
 もともと事故ゼロ要求は無理筋である。

 重要なのは、重大事故に至らないように、リスク管理をすることだ。そして、同じ事故や、想定できるような事故を防止する仕組みを作るしかない。

 従って、新式の鉄道を安易に作るのは間違っている。将来を見据え、必要な方式に集中すべきである。

 --- 参照 ---
(1) http://www.mlit.go.jp/araic/
(2) http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20060416STXKA025816042006.html
(3) http://www.sankei.co.jp/news/060416/sha096.htm
(4) http://www.n-sharyo.co.jp/business/tetsudo/pages/yuri7200.htm
(5) http://home.t01.itscom.net/jikoku/jiko1980.htm
(6) http://www.netlaputa.ne.jp/~lunming/_log/log1412c.html
(7) http://blog.so-net.ne.jp/kadenkozo/2005-10-27
(参考) 「ゆりかもめ」運行管理システム  http://www.kobelco.co.jp/technology-review/pdf/54_3/091-094.pdf


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