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2006.11.29
 
 


PS3用ゲーム開発は米国主導になりそう…

 世界中の主用新聞・雑誌に、PS3に関するコスト分析リポート(1)が引用されている。製造原価の高さが注目を浴びたのである。もっとも、原価の割りに、安いからといって、購入するような商品ではないが。

 発売直後に、製品を分解して紹介したり、(2)その原価を推測するのは恒例だが、そんな記事に興味を持つ人は限られていた。それが、今や、投資家や一般の人までが関心を払うようになったようだ。

 確かに、小売価格は499ドルにもかかわらず、原価は800ドルといえば、その差の大きさに、誰でも驚くことだろう。ゲーム機ビジネスは、実質的にソフトのバンドル販売事業だから、両者の収入を合わせて考える必要はあるが、ゲームソフトが高額化している訳でもないから、“0円”ケータイのような、継続的サービス(3)で利益を確保できる仕組みがないと辛そうである。
 機器単体で、これだけ大きな差額があると、立ち上げ時のキャッシュフロー管理は大変そうだ。大量販売で一気に市場制覇を狙うと、大きな財務リスクを背負うことになりかねない。

 そもそも、ゲーム機と言っても、構造はパソコンと同じだから、製品仕様発表時点で、素人でも、コスト負担が重くなることは見えていた。例えば、概算では、こんなものだろうか。
  ・ 心臓部の特注半導体---$150〜200
  ・ メモリ/ハードディスク---$50〜100
  ・ ブルーレイディスクドライブ---$100
  ・ 筐体/電源/冷却装置---$100
  ・ その他---$50〜100

 それが、ここまでやるのか、と言うほどの“てんこもり”機器にした。当然、コストも嵩む。
 “てんこもり”とは、様々な要求に応えることだから、利用者側に様々な用途開発を任せる方向を意味しているが、のようなな動きは目立たない。となると、高度なハードを提供して、先端ユーザーの心をつかんで市場を開こうという考え方ということになろう。
 このことは、日本市場を念頭におかないことを意味しそうだ。

 パソコンで高度なグラフィックを楽しんでいる層を引き込もうという方針になるからだ。
 その手のゲーム開発の中心は米国。従って、ゲーム産業の中心は日本から離れることにならざるを得まい。

 よく考えれば、そうなるのは当然かも知れぬ。
 この製品の目玉はスーパーコンピュータ並の処理能力を持つCPUだが、フルハイビジョンの画素数で、高速描画可能な能力に特化したパソコンと見ることもできる。iSuppliがリリースした推定価格表を見ると、CPUチップより、Nvidiaの描画プロセッサ(Reality Synthesizer)の方が4〜5割高価。しかも、このチップに合わせ、グラッフィク用のメモリにSumsungのGDDR3を4個搭載している。描画性能が決め手ということだ。
 (お蔭で、PS2用チップ(EE+GS)を別途搭載せざるを得なくなって、さらなるコスト高を招いている。)
 このことは、今までのゲームソフト開発者のレベルでは、すぐにPS3に対応できないことを意味しそうだ。このグラフィック能力を生かすプログラムを書ける開発者人口を考えれば、米国主導にならざるを得ないということだろう。

 と言うより、この人達が流れ込まなければ、PS3人気は今一歩で終わりかねない。
 今やパソコン用の描画プロセッサの巨大化は目覚しい。Reality Synthesizerは、どう見ても同じNvidia製品のGeForce 8800(4)に凌駕されている。

 --- 参照 ---
(1) iSuppli's Applied Market Intelligence:
  “PlayStation 3 Offers Supercomputer Performance at PC Pricing, iSuppli’s Teardown Analysis Reveals”
  http://www.isuppli.com/news/default.asp?id=6919&m=11&y=2006
(2) 【速報編】http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/1111/ps3.htm
  【部品編】http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/1111/ps3_2.htm
(3) http://www.p-tv.jp/special/HD/index.html
(4) http://jp.nvidia.com/page/geforce8.html


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