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2007.9.3
 
 


ワンセグ携帯ビジネスを考えると…

 2007年夏モデルの販売結果では、ワンセグ携帯の売れ行きが好調だという。(1)
 8月16日に、auだけで、ワンセグ対応機種が500万台を突破したという。(2)

 ふ〜む。

 2006年の幕開けの頃、薔薇色の市場予測が発表されたことを思い出した。2007年424万台、2008年には1,000万台、2009年1,900万台の市場というもの。(3)

 景気づけ予測にしても、当時、この数字を見て愕然となった。固定テレビの番組を、外出時でも眺めたいという人が大勢いるとの裏づけデータがあるに違いないからだ。

 家庭でテレビを長時間見ている人は、たいていは時間潰しと言ったり、他のことをしながら、ついでにテレビを見ていると語ることが多い。しかし、実態からいえば、テレビを見ないと仲間と会話できないということだろう。
 特に、老眼になれば、活字を見るのは面倒だから、話題源としてテレビが重宝されるのはよくわかる。

 しかし、新型携帯の購入層はそんな人達ではなかろう。
 その多くは、仲間とのメール交換やゲームに熱中したり、パソコンを始終駆使している人達だと思っていた。
 早い話、インタラクティブに頭を使うのが嬉しいタイプと見ていたのである。カメラ付き携帯に飛びついた最初の人達である。そんな人が、垂れ流し型のテレビ番組を喜んで視聴する姿がとても想像できなかったのだが。
 もちろん、家の外でも、時間があれば好きな音楽を聴く人達であるが、音楽ならなんでも良いということなどあり得ないだろう。

 そんな人達が、テレビ放送を喜んで視聴するとは思えないが。しかも、テレビの場合は、視聴していてば、他のことはできない。
 どうも、腑に落ちない。
 パソコンで見るなら、“ながら族”的にテレビを見る可能性は高いだろうが、学生や勤労者が、外出中に家庭向けのテレビ番組を見たいものだろうか。

 ・・・などと考えていたが、その後、2006年夏に、調査会社が「2010年 国民の3割りがワンセグ携帯を所持」との普及予測を出した。(4)
 こちらは、2007年787万台、2008年1,835万台、2009年2,761万台とさらに大きな数字。

 その根拠は、ニュース・スポーツ・競馬中継といったリアルタイムの番組の視聴ニーズ。他の番組は録画するが、リアルタイム性が要求されるものは、ワンセグ携帯になるという。特に、北京オリンピックで普及は加速するとされる。
 競馬やスポーツ好きにしても、家の外でまでラジオを聞きたい気持ちはあるだろうが、実際にそこまでする人は少ないと見ていたが、そんな見方は間違っていたようだ。

 このことは、こんな売り方が行われることを意味するのではなかろうか。・・・
 “テレビが見れる携帯と、見れない携帯がありますが、どちらにしますか。”
 “皆、テレビ付きを買っていますが。”

 そこで、“まあ、無料でみられるなら、テレビ機能はついていた方がよかろう。”ということになる。
 この販売方法は、新技術をすぐに試してもらえるという点から、大概はプラスに働いてきたが、ことワンセグについてはプラスと言えるのか、疑問を感じる。ワンセグが普及するということは、旧態依然としたテレビ放送番組がエンタテインメントを主導し続けることを意味するからである。
 なんとなく、イノベーション創出の逆を歩むような気がする。新技術の登用で、ビジネスが、筋の悪い方向へ進まなければよいが。

 --- 参照 ---
(1) 「携帯電話・夏モデル検証」 GfK マーケティングサービスジャパン [2007.7.27]
  http://www.gfkjpn.co.jp/documents/070627mobilephone_summersales_pressrelease.pdf
(2) http://www.kddi.com/corporate/news_release/2007/0821/index.html
(3)「ワンセグの普及予測」 NRI News 2006.1
  http://www.nri.co.jp/publicity/n_letter/2006/pdf/nl20060101.pdf
(4) 「ワンセグ携帯の視聴スタイルに関する調査」 矢野経済研究所 2006.8.3
  http://www.yano.co.jp/press/pdf/169.pdf
(携帯電話折りたたみ式 のイラスト) (C) 3D+WEB MIX http://webweb.s92.xrea.com/


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