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2010.3.29
 
 


ゲームの最優秀賞選考を眺めて…

ゲーム産業の動きが気になる。
 任天堂の株価は高額で有名だが、それがさらに高騰。
 2009年3月23日、眼鏡無し3D映像が楽しめる、次世代「ニンテンドーDS」を来年発売すると発表したことによるもの。(1)
 詳細はわからないが、ゲーム市場はまたまた大波乱ということか。

 それはそれ、ゲームソフトの動きを覗いてみようか。

 2009年3月、Game Developers Conference 2010(2)がサンフランシスコで開催され、年間最優秀ゲーム[GOY]が決まった。続いて、“British Academy Video Games Awards for 2010”も発表に。
 この辺りを眺めて、流れを確認しておくのもよかろう。

 GOYは、結局のところ、「アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団」(Uncharted 2)に落ち着いた。部門賞(Writing,Technology,Visual Arts,Audio)も獲得し圧勝。英国でもAction、 Story、 Original Score、 Use of Audioで受賞。要するに、映画同様に大作の評価が高いということ。
 しかし、ノミネートされているものを見ると色々。少し見てみよう。

日本発ゲームは健在であるが、
 日本発もGOYにノミネートされている。(3)  さらに、部門賞ノミネートも含めた総数は3本。この数を少ないと見るか、立派と見るかは、人それぞれ。
 その企業とは、フロム・ソフトウェア、キュー・ゲームス、任天堂である。

 フロム・ソフトウェアは「デモンズソウル」でGOYとInnovation部門でノミネート。
 これは日本で人気があるアクションゲームの海外版のようだ。(4)徹底的に習熟するほど面白くなる手の戦闘モノである。
 キュー・ゲームスは「PixelJunk シューター」が Downloadable部門で。(5)こちらは、独特のグラフィックと音楽が人気を呼んだと思われる。

 小生が気になったのは、これらより、GOYに唯一ノミネートされている面白キャラクターゲームが日本発ではなかったこと。
 驚くようなキャラクターで人の心を虜にするゲームは日本発でもよさそうな感じがしたからだ。“可愛い”がお好きな日本市場を生かせるので、日本企業優位かと思っていたのだがそうでもなさそうである。

今後とうなるかは不透明。
 まあ、なんと言っても、一番面白いのはハンドヘルド部門の状況。
 任天堂の「ゼルダの伝説 大地の汽笛」が登場するのは当たり前だろう。ニンテンドーDSの特徴を生かし、4人対戦できたりして、よく作りこまれたゲームであるし。
 しかし受賞作は、全く違うもの。iPhone&iPod Touch向けなのである。

 こちらは、ゲーム機ではないから、ゲームをじっくりというのではなく、片手間対応に優れているということか。
 もっとも、片手間にやるようなものではなさそうな、“Spider: The Secret Of Bryce Manor”もノミネートされているが。
 要するに、ハンドヘルドゲーム機の土俵外に市場が急速に拓けつつある訳だ。日本のケータイなど昔からで、ハンドヘルドからの移植が進んではいるが、iPhone登場で米国も市場が開けてしまった訳だ。まあ、iPod Touchは結局のところ、ハンドヘルドゲーム機ということか。

 当然ながら、すべてのプラットフォーム対応版ゲームソフトも強さを発揮している。「グランド・セフト・オート:チャイナタウン・ウォーズ 」は、GTAシリーズをニンテンドーDS、PSP、iPhone&iPod Touchに適用したそうだ。

日本は、Socialタイプは向かないかも。
 そうそう、Sony Online Entertainmentの「Free Realms」がSocial/Online部門にノミネートされていることにも触れておこう。
 開発企業はソニーグループだが、純然たる米国の作品である。この部門、人気があるのは“Facebook”でプレイできるものらしい。そうなると日本での普及は今一歩だから、日本発は難しそうだ。
 特に、アフィリエイト・ビジネスと関係するようなプログラムが必要となる分野は苦手かも。そう思うのは、売れていると言われるゲーム企画者のブログを眺めた印象で言っているにすぎないが。
 もちろん仕事にパソコンを使っている方だが、どう見ても、ITの知識を欠いている。これでは、Socialタイプは作りようがなかろう。
 それでも、ディレクターがこうした作者の能力を使える仕組みがあればなんとかなるが、そんなものがあるとは思えない。
 下請け・孫請け構造が出来上がっているからだ。有能な専門家を急遽集めて新しい取り組みを始めるには向かない環境なのである。
 要するに、気が合う仲間内でなんとかこなす体制と言えよう。人材流動性はあるといっても、このなかでの話。これで対応できるならよいが、下手をすれば、工賃が高い何でも屋の集まりになりかねない仕組みである。まあ、これはゲーム産業だけの話ではない。

 ここら辺りは、韓国の開発企業が大活躍していそうだ。「Dungeon Fighter Online(アラド戦記)」がノミネートされているから、そう想像するだけだが。
 尚、Socialタイプのベストは定番ものらしい。

勝手なインプリケーション・・・。
 折角、世界に冠たるゲーム機器産業を作りあげたのに、ソフト産業の方はますます内向きになっているような気がしてならない。
 国内市場は人口構成から見て、革新的な取り組みがしない限り衰退化しかねないのは明らか。産業構造もなにもない時代なら、革新的な取り組みができるが、成熟すると組織維持のための保守的な取り組みしかできなくなるのが日本の特徴。
 そろそろ、その域に入ってきたのではなかろうか。

 海外市場は巨大である。
 しかし、そこでの主流は、GOYの「アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団」のような大作もの。映画と同じで、膨大なお金がかかり、リスクも高い。
 そんなことができる投資家不在の国でまともに戦えないのはわかるが、日本のよさをウリにすればそれなりの位置を占めることができるのではないか。

 日本のよさは、多分職人芸的な雰囲気。ただ、それは詳細さをアピールするのではなく、それを表に出さないようにすることだと思うが。つまり、単純に見えても、実は手がかかっていたり、一本筋が通っているので、触れているうちになんとなく心地よさを感じるようになる。
 特に、色調や造形でこの力が発揮できるかが勝負なのではないか。安価な労賃で類似なものを作ることはできるが、北斎や伴大納言絵巻で見られるような感性は真似はできまい。
 日本の問題は、この感性の評価技術を認識しようとしない点では。

 どこが日本の製品のよさか、どうして若い人が古い日本のブランドを選ぶのか考えてみたらよいかも。名前だけではなかろう。
 機能やデザインならもっと色々あるが、持っていると楽しいから欲しくなるのだとと思うが。
   Hermes v.s. 印傳屋
   Harrodsバッグ v.s. 一澤信三郎帆布
   ZWILLING J.A.HENCKELS v.s. 有次

 折角、ここまで質の高いゲーム開発者人口が増えたのだから、海外に打って出て欲しいものだ。

 --- 参照 ---
(1) http://www.nintendo.co.jp/ir/pdf/2010/100323.pdf
(2) http://www.gdconf.com/japan/index.html
(3) http://www.prnewswire.com/news-releases/uncharted-2-flower-assassins-creed-ii-lead-finalists-
   for-the-tenth-annual-game-developers-choice-awards-82054972.html
(4) http://www.jp.playstation.com/scej/title/demons-souls/
(5) http://pixeljunk.jp/library/Shooter/
  [受賞リスト]
(i) http://www.gamechoiceawards.com/winners/index.htm
(ii) http://static.bafta.org/files/games-0910-winners-release-547.doc


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