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■■■ ジャータカを知る [2019.4.4] ■■■
[25] 金色ジャッカル
[→]、狼[→]に続いてジャッカルを取り上げたかったが、登場譚があまりに多いのでどうしようか迷ってしまった。
  ●金色ジャッカル"common" Jackal/[野干 or 豺狼](現代生物名:亞洲胡狼)

日本では余り馴染みのない動物である。

単独もしくは一夫一妻の小家族で生活しており、狼的な常時群れ生活の動物とは体質が違うようだ。地域によっては、集団狩猟を行ったりもするらしい。ともあれ、肉や卵ならえり好みせず何でも食べると言われ、インドでは死骸漁りが多いようだ。

兔 猿 ジャッカル 獺が登場する「月の兎」譚[#316][→]はすでに取り上げたが、それの翻案「今昔物語」では兎 狐 猿となる。ジャッカルは狐に代替される訳だ。
手塚治虫の漫画ではさらに変更があり、兎 狐 熊だそうな。[「ブッダ」@1972-1983年]明らかに、菩薩道の意味を語っている話だが、お布施捨身話に焦点を当てたかったようだ。

ちなみに、ジャータカには、狐は登場しないようだ。インドにいないということではないのだが。
 《狐系》
  ●ベンガル狐Bengal fox/孟加拉狐
  ●赤狐Red fox/〃

狐について触れない訳にはいくまい。

言うまでもないが、カーリー侍女役ダーキニーḌākinī/荼吉尼天[空行母]のコト。
実に、血生臭い神で、ヒトの死肉というか心臓を喰らう話まである。そのため、ジャッカルの精霊と見られたりもする。調べてはいないが、小生はもともと無縁と見る。(日本ではよく知られる天部の神だが、ヒンドゥーの神々は数が多いから、インドではマイナーと見てよいのではなかろうか。キリスト教的見方だと、生贄としての死体を呪術に用いる黒魔術師の信仰対象神と見なされかねまい。)

それが、どういう訳か稲荷神になる。その経緯の解説は色々あるがよくわからない。ストーリーを描くとしたら、こんなところか。・・・
日本では、狐は人里にノコノコやって来る動物で、古代から霊的な動物とされて来た。その白狐崇拝と荼吉尼天が習合し辰狐王菩薩信仰が始まったのは間違いないようだ。
一方、中国北方民俗神にも狐王=胡王があるように、狐は霊的な存在だったようで、西王母@崑崙山にも九尾狐がつきもの。しかし、インドには類似の信仰は知られていないのだから、西王母のお遣いたる使徒狐が倉稲神のお使いに起用され、名称も稲荷神と変ったと考えるのが自然だ。
神仏習合を進めるに当たり、稲荷神に該当する天部の神は、荼吉尼天となったにすぎまい。

ただ、狐とジャッカルを同一視するのは避けた方がよい。

荼吉尼天同様に血生臭い神がジャッカルを乗り物にしているからだ。

死を司る女神チャームンダーChamunda(シヴァ妃ドゥルガーの化身:7母神)
ほとんど骨と皮の痩せ細った体躯で、死体の上で踊っている姿が多い。腑を喰らうとされており、まさにジャッカル的である。
遺骨をガンジスに流すための火葬場に住むと言われていたりする。
日本的感覚からすれば、まさに不浄の最たる神ということになろう。

この神の読み方は難しい。

遠藤周作が取り上げたことを知っている方もおられよう。・・・
「深い河」1993年では、聖なるガンジス・仏跡訪問の日本人ツアーが題材。そこで、この神が描かれている。
汚いヒンズー教寺院を拝観することになるが、そこには、清純で優雅なマリア像とは対照的な、ハンセン氏病に襲われ、飢えで痩せ、老婆のように萎んだ乳という、醜い女神が祀られている。しかし、その身体で貧困に喘ぐ民衆に授乳するのである。

インドの人々はジャッカルには優しい気持ちを抱くのかも知れない。
その行為はオドロオドロしいものがあるにもかかわらず。そこには仲間感覚があるのかも。

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