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■■■ 今昔物語集の由来 [2020.11.22] ■■■
[508] 二百巻暗唱
📚「大般若波羅蜜多經」は最大の仏典で全600巻。文字数約500万と言われている。そのうち200巻を暗唱できる僧が登場する。
現代でも、サヴァン症候群の方々の中には、1〜2万程度の記憶能力を持ち合わせておられえる方は見つかるだろうが、100万となると流石に桁外れである。
一般人だと、僅か300字足らずの「般若心経」さえ努力を擁するというのに。

ただ、音楽的に聴力を使った記憶であると、苦も無く頭に入ってしまうこともあるから、ベーダ経典暗誦に熟達している天竺の婆羅門は結構なレベルまで行けるのかも知れぬ。それに夜通し読誦となれば、暗誦している部分しかできかねる訳で、暗記能力が低ければ僧としては惨めな気分になるから、皆、暗唱研鑽に励んでいたのは間違いなく、そのレベルは相当に高かったと見てよかろう。本朝で言えば、法華経全巻暗唱ができる力があるからこそ、"持経者"と呼べる訳で。(それを考えると、しばらく籠りっきりの山林修行に拘るのも当然だろう。)
もともと、仏教にしても、あくまでも口承だった訳で、その後に経典化された訳だから、仏教教団最初期の頃の、僧の重要な能力は暗誦だったのは自明。当然ながら、仏典化されたところで、伝統が消えることも無かろう。(貝葉経典とは読経四用ではなく、記憶を呼び覚ます手がかりを与えるものと見るべきだと思う。)印刷本登場迄は、書写と口頭伝承は両立していた筈である。

思わず、「酉陽雑俎」卷五"一行玄宗"📖一行禪師伝を思い出してしまった。
「師は何がおできになるのか?」の答が「単に、よく記憶しておくだけです。」なので、人籍簿を閲覧させたところ、たちどころに記憶。玄宗皇帝は突然玉座から降り、拝礼し、"聖人"と呼んだ、というだけの話だが。

本来的には、200巻も経典を暗記できるなら、まさに"聖人"だ。しかも、生まれながらに霊威もあるというのに、200巻しか暗記できないので、牛の生まれ変わりとされている。どういうことなのだろうか。
  [巻七#_4]震旦僧智諳誦大般若経二百巻語
 都の僧 僧智の話。
 母親が香炉を呑む夢を見て懐妊して産まれたという。
 産まれるなり、「大般若経」と称えたので、皆、不思議な事と。
 10才になると、全600巻のうち200巻を暗誦でつように。
 ところが、残る400巻を覚えられない。
 出家し、100巻読誦を日課として、
 怠ることがなかったにもかかわらず、できないのである。
 どうしてか、祈念して原因を知ることにした。
 すると、夢に僧が出現。
 「汝の前世はつ牛。
  飼い主に「大般若経」200巻を背負わされ、
  寺に運んだことがある。
  泥の深水に足を取られ、躓きながらも、歩いて行った。
  その功徳で人間に転生し、僧侶となった。
  だから、「大般若経」200巻を暗誦できたのが、
  残りは、汝と結縁していないから暗誦はできない。
  汝は、その身で、雷音仏の国に転生することになる。」

   【註】雷音仏=天鼓雷音如来[涅槃](脇侍は弥勒菩薩。)📖胎蔵曼荼羅[1]大日如来
 そこで、目が覚めた。
 僧智は、この前世の因縁に感謝した。


ズブの素人から見れば、200巻と言っても、眺めて見れば、學觀品(應以無○而為方便,圓滿○○波羅蜜多。)があり、大乘品(六波羅密多 十地之修持)で"大乘最尊最妙"とし、天地品で善現等為天帝説發菩薩大心と謂う肝要な箇所があるのだから、十分な気もするのだが。・・・
 「大般若波羅蜜多經」第一會(上品般若)[卷1〜400]
 __ 序____ _1 起品__ _2 學觀品__ _3 相應品__ _4 轉生品__
 _5 讚勝コ品_ _6 現舌相品_ _7 教誡教授品 _8 勸學品__ _9 無住品__
 10 般若行相品 11 譬品__ 12 菩薩品__ 13 摩訶薩品_ 14 大乘鎧品_
 15 辨大乘品_ 16 讚大乘品_ 17 隨順品__ 18 無所得品_ 19 觀行品__
 20 無生品__ 21 淨道品__ 22 天帝品__ 23 諸天子品_ 24 受教品__
 25 散花品__ 26 學般若品_ 27 求般若品_ 28 歎衆コ品_ 29 攝受品__
 30 校量功コ品 31 隨喜迴向品 32 讚般若品_ 33 謗般若品_ 34 難信解品_

---
 35 讚清淨品_ 36 著不著相品 37 説般若相品 38 波羅蜜多品 39 難聞功コ品
 40 魔事品__ 41 佛母品__ 42 不思議等品 43 事品__ 44 衆品__
 45 真善友品_ 46 趣智品__ 47 真如品__ 48 菩薩住品_ 49 不退轉品_
 50 巧方便品_ 51 願行品__ 52 伽天品_ 53 善學品__ 54 斷分別品_
 55 巧便學品_ 56 願品__ 57 堅等讚品_ 58 囑累品__ 59 無盡品__
 60 相引攝品_ 61 多問不二品 62 實説品__ 63 巧便行品_ 64 遍學道品_
 65 三漸次品_ 66 無相無得品 67 無雜法義品 68 諸功コ相品 69 諸法平等品
 70 不可動品_ 71 成熟有情品 72 嚴淨佛土品 73 淨土方便品 74 無性自性品
 75 勝義瑜伽品 76 無動法性品 77 常啼菩薩品 78 法涌菩薩品 79 結勸品__
 第二三會(中品般若)[卷401〜537] 第四五會(小品般若)[卷538〜565]
 第六會(天王般若)[卷566〜573] 第七會(文殊般若)[卷574〜575]
 第八會(那伽室利般若)[卷576] 第九會(金剛般若經)[卷577]
 第十會(理趣般若經)[卷578] 第十一〜十六會(六分般若)[卷579〜600]


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