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■■■ 「古事記」解釈 [2021.10.11] ■■■
[283] 樂舞の補遺的事項
序文の天武天皇讃での"儛詠停於都邑"から、舞踏について検討した。📖祭祀舞踏の意味要するに、笹を両手に持って舞蹈歌詠することで神の降臨をもたらす儀式から舞が生まれたということ。
この場合、文字からはうかがえないものの、鼓歌(音と息)が不可欠な点を見逃すと拙い。

笹である理由は、"笹の葉サラサラ"という風で発生する音にある。(現代では、巫女用は笹ではなく鈴である。)
だからこその笹と鈴である。
【輕太子】
  《夷振之上歌》笹葉に 打つや霰の・・・
【大前小前宿禰】
  擧手打膝
  儛かなで[訶那傳]
  歌
  參來
  《宮人振》・・・宮人の 足結の小鈴 落ちにきと


従って、笹から発生される音を生み出すには、持物を選び、身体を大きく動かす必要がある。その洗練された様式が舞/𦨅ということになろう。(舞の舛は両足を下に向け跳踏する形象。片足の形"夊"x2[㐄]。)

この場合、神の気を引くような、目立つものではなくてはこまるし、愉しい仕草でないとうまくいかないことになろう。ただ、あくまでも特定者のみが関与する閉鎖的な祭祀である。それが次第に、御祭りのような開放的なものへと発展を遂げることになる。「古事記」成立時点では、その中間的な祭祀が挙行されていたと考えればよいのでは。📖"楽"文字の扱い

ただ、舞で用いられる"依り代的呪持物"は、笹とは限らない。音が余り出ない鳥の羽根を使う場合もある。これに当たる異体字は"𦐀"。
祭祀行儀と共に、忘れ去られた文字だが、古くに舞と分岐したと見てよいだろう。当然ながら、葬儀に当たっての踊りということになる。鳥の仮面を着用した舞踏が挙行されたと見て間違いないと思う。

そのように考えると、分岐はもう一つあっておかしくない。多分、それが𣞤/𣞣⇒𦨅であろう。持物は武具である。戦意鼓舞と戦勝祈願の舞であり、勝利の宴での舞ともなる。
「古事記」序文で示される舞がそれに当たろう。宴での騙し討ちだが、本文では、舞踊を行ったことが明瞭にされている訳ではない。
┌─<列儛> 📖序文冒頭要約部の補註
│┌─<攘賊>
└│<聞歌>
└─<伏仇>

こんなことがついつい気になったのは、「播磨国風土記」揖保郡鼓山に目を通したから。
  昔 額田部連伊勢 与 神人腹太文 相闘之時
  打鳴鼓 而 相闘之 故 号曰 鼓山々谷生檀

この風習は、大陸南部の貴州辺りの銅鼓が発祥という説がある。銅鐸も音器であり、この辺りがルーツと見ることもできる。

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