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■■■ 「古事記」解釈 [2022.9.8] ■■■
[615]五七定型歌への道
「古事記」からすれば、21代天皇こそ歌会創始者ということになるとの話の続き。📖歌会創始者は誰か

「萬葉集」は、冒頭の21代天皇御製だけが例外で、基本は五七定型歌。「古事記」とは随分と違う。
これは、「古事記」は話語の叙事詩に含まれる口誦歌の文字化であるのに対し、「萬葉集」は収録歌の歌人自身が文字で創作した作品集であるという違いを反映しているだけのこと。📖「古事記」所収歌は歌謡ではない

しかし、リズム感を考えると、五七定型歌への変化が突然発生するとは思えないので、「古事記」にその流れを生み出す原動力となった"素"があった筈。
そこらを探ってみようと思う。📖倭歌のみなもとは古事記

今まで、「古事記」では、収録歌は全面的に音素文字表記されているという点を中心に色々と気付いた点を書いて来たが全体を一瞥できるように整理して検討した訳でもないので、ダブルところもあるが、できる限りまとまった形で状況を見ておくことにしたい。

すでに触れてきたが、和歌のリズムは五七五・七七のように思いがちだが、それは後世の感覚。
文頭ではなく、文末を重視する言語なので、七七で終わることが収まりが良いというだけのこと。それは口誦倭歌からの伝統と言えばその通りだが、形式の本質は異なる。
  7句以上型…五七(・五七)(・・・)(・五七)・七
  5句型…五七・五七・七
  例外型…3句 6句
  3句型は五七・七。俳句17文字とは無縁。
(小生は、音素や音節の概念を勝手に自己流にしているが、ここらはご自分で設定されることをお勧めする。表立って書くと、どうしても批判めいてしまうので避けてきたが。・・・
太安万侶は、上記"五七"を必ず音素文字表記にしている。文字数に揺らぎがあるが、字余り・字足らずの表記上の問題はおそらく重要ではない。ここらは、ご自分の常識を再確認しておいた方がよい。
例えば、Sоngの歌詞が文字表記で"五七"であるからといって、"五七"として耳で聴ける訳では無かろう。つまり、「古事記」の歌の"五七"とは、本来的には、口誦の<拍>数であって、<文字>数ではない。「萬葉集」は指折り数えての作歌であるから、両者が一致するのは当たり前だが、伝承叙事詩の一部分たる「古事記」の歌はそういう訳にはいかない。表記上は、字余り・字足らずでも、聞こえる<拍>数としてはピッタリ感が生まれることは稀ではない。)


ただ、「古事記」は「萬葉集」と違い、字余り・字足らずの句が少なくないというところから、かなり違った印象というか、古代感覚かナと思わせる雰囲気があるだけの話。
小生は、この文字数に余り神経を注ぐ必要は無いと思う。
基本は五七のリズムだが、指で音素を数えて創作するような「萬葉集」の文筆歌と、感覚的に身に着いてしまっている感覚が籠っている伝承歌の文字化したものの単純比較にそれはど大きな意味がある訳がない。
倭語に五十音的な<音素>観が持ち込まれたのは、サンスクリット観念が渡来したからで、それを理解して記述しているのが「古事記」。
つまり、長母音や二重母音的な曖昧な音、さらには鼻音的な伸びる音が無かったというよりは、表記ではそれが見えないというに過ぎないからだ。
字余り・字足らずは表記上であって、リズムは五七に近い句である場合があっておかしくはないということ。

それに、歌集ではなく、叙事詩文字化の書の歌なので、読み違いしやすいので注意が必要である。
特に、歌集では省かれてしまう"掛け声"が挿入されたり、同じ句を繰り返して歓ぶことなど、ほぼ当たり前の風習の筈である。
そうなれば、見かけ上は、句のリズムが崩れているように映ることがあって当たり前。これを古代観として取り上げないようにしないと、本質を見誤る可能性があろう。
酒宴での末尾の独立2音素語彙になれば、流石にわかるものの、それ以外のこうした挿入部分はなかなかわかりにくいので厄介である。

そうそう、太安万侶文法という視点で全体を読んでおくことも、重要な視点を形成してくれるので、この点も強調しておきたい。
くどいが、「古事記」は歌集ではない。従って、文法的には地文と歌に同一基準が適用されている筈。
と云っても、地文は"誦み"の揺らぎというか、アドリブ容認。一方、歌は音素文字通りの発音で固定化されているから、そこらを勘案して考える必要がある。それでも、五七句の構造的形状はほぼ自明と言えよう。

なんといっても、倭語文法的で厳格なのは、は文章末に伝えたいことを凝縮すべしとの点。
従って、五七句の後部"七"句とは叙述部ということになる。たとえ、動詞や形容詞が無くても、さらに述語とは思えない助詞がついている名詞であっても、そこには暗黙の了解があり、叙述部としての常識的語彙が隠されており、聴衆は想定させられることになる。
そして、この叙述部は独立している訳ではなく、必ず5-7となる。従って、前置句の五は、提示の意味(〜は)、語気(なんと)、述部修飾(枕詞/比喩・主語・情緒・場所/時)といった役割を果たすことになろう。
おそらく、この取り決めを破ることは、尋常ならざる事態の時だけである。
そのような例が「古事記」に無い訳でもなく、すでに触れた倭健命の段の表現で見るとよくわかる。・・・
例えば、5-4である「たたなづく あおかき」は、述部が短くておかしい。なにか省略されているように「あおかきムムム」と嘆息して詠う箇所かもしれない。
もっとも、得体の知れぬ戯歌にも思える「うだのたかきに しぎわなはる」では、後ろの句にもう1音つけるのは簡単で、それによって短い感は消えるのに、句末の"-る"に拘っており、勝利の宴では大騒ぎの酒宴ということで、リズムを壊す面白さがあるのかも。

<大御葬儀歌>では、この叙述部の句がその前の句より短くなっており、五-七調のリズムをわざわざ壊している印象を与える。

ついでながら、述部句たる7音素句だが、"(わ-が)(ふた-り)(ね-し)"という3節1句や、"(やましろ-がは)-を"といった表現も可能であり、一塊になっていて、意味さえ伝わるなら、おそらくどの様に記載してもかまわない筈。しかし、7音素であるから2節1句が基本となろう。
重要なのは、SVО構文のような言語の述部として読まないことでは。
上の例も、あくまでも五七。・・・
  つぎねふや やましろがはを
長句な上に、助詞"を"があるので、これを目的語と考えて、その述語部分を後続の5音素句にあてがちだが、そうなると57565となってしまい和歌風に見えるが、これは拙い。
  __5__ やましろがはを かはのぼり
    わがのぼれば かはのへに
ここは、57・56・5(5)との並びと考えるべきだと思う。これこそが、太安万侶流の倭語文法。

話がダラダラ長くなってしまったが、こうなると、当方の考え方を真逆に受け取ったり、いい加減なことが書いてあると感じること請け合い。読む気がしなくなるような時点でとりあえず止めて、追記は別途。

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㊤9首
[__1]【速須佐之男命】作御歌大神初作須賀宮之時
やくもたつ いづもやへがき つまごめに
やへがきつくる そのやへがきを   ㊄5-7-5-7-7

[__2]【八千矛神(大国主命)】婚高志國之沼河比賣幸行之時
やちほこの かみのみことは やしまくに
つままきかねて とほとほし こしのくにに
さかしめを ありときかして
くはしめを ありときこして
さよばひに ありたたし
よばひに ありかよはせ たちがをも いまだとかずて
おすひをも いまだとかねば をとめのなすや いたとを
おそぶらひ わがたたせれば ひこづらひ わがたたせれば
あをやまに ぬえはなきぬ
さのつとり きぎしはとよむ
にはつとり かけはなく
うれたくも なくなるとりか このとりも
うちやめこせね
いしたふや あまはせつかひ ことのかたり こともこをば

[__3]【沼河日売】未開戸(婚姻拒絶)
やちほこの かみのみこと ぬえくさの めにしあれば
わがこころ うらすのとりぞ いまこそば わどりにあらめ
のちは などりにあらむを いのちは なしせたまひそ
いしたふや あまはせつかひ ことのかたり ことも こをば

[__4]【〃】婚姻承諾
あをやまに ひがかくらば ぬばたまの よはいでなむ あさひの ゑみさかえきて たくつなの しろきただむき あわゆきの わかやるむねを そだたき たたきまながり またまで たまでさしまき ももながに いはなさむを あやに なこひきこし
やちほこの かみのみこと ことのかたりことも こをば

[__5]【大国主命】嫡后の嫉妬の抑制
ぬばたまの くろきみねしを
まつふさに とりよそひ
をきつとり むなみるとき はたたぎも こればふさはず
へつなみそに ぬきすて
そにとりの あをきみねしを
まつふさに とりよそひ
をきつとり むなみるとき はたたぎも こもふさはず
へつなみそに ぬきうて
やまがたにまきし あたねつき そめきがしるに しめころもを
まつふさに とりよそひ
をきつとり むなみるとき はたたぎも こしよろし
いとこやの いものみこと
むらとりの わがぬれいなば ひけとりの わがひけいなば
なかじとは なはいふとも やまとの ひともとすすき
うなかふし なかなかさまく あさあめの さぎちにたたむぞ
わかくさの つまのみこと ことのかたりごとも こをば

[__6]【須勢理毘賣命】~語契り再確認
やちほこの かみのみことや わがをふくにぬし
 なこそは をにいませば うちみるしまの さきさきかきみる
いそのさきをちず わかくさの つまもたせらめ あはもよ
めにしあれば なをきて をはなし なをきて つまはなし
あやかきの ふはやがしたに むきふすま
 にこやかしたに たくふすま さやぐかしたに あわゆきの
わかやるむねを たくづのの しろきただむきそだたき たたきまながり
またまて たまてさしまき ももなかに いをしなせ とよみき たてまつらせ

[__7]【伊呂妹 高比賣】夷振阿治志貴高日子根~者忿而飛去之時
あめなるや をとたなばたの うなかせる
たまのみすまる みすまるに あなだなはや みたに ふたわたらす
 あじしきたかひこねのかみぞや

[__8]【豊玉比売】獻歌 via 弟 玉依毘賣山幸彦への愛
あかだまは をさへひかれど しらたまの きみがよそひし たふとくありけり
[__9]【比古遲】答歌妃への愛
をきつとり かもつくしまに わがいねし いもはわすれじ よのことごとに
①13首 ⑩1首
[_10]【自軍兵】@東遷戦闘勝利
うだのたかきに しぎわなはる
わがまつや しぎはさやらず
いすくはし くぢらさやる
こなみが なこはさば
たちそばの みのなけくを こきしひゑね
うはなりが なこはさば
いちさかき みのおはけ-を こきだひゑね

---
[_11]【久米人】@東遷敵を騙し討ちにする合図
をさかの をふむろやに ひとさはに きいりをり ひとさはに いりをりとも みつみつし くめのこが くふつつい いしつついもち うちてしやまむ みつみつし くめのこらか くふつつい いしつついもち いまうたばよらし
[_12]【〃】@東遷戦いに当たって気勢を上げる
みつみつしくめのこらがあはふにはかみらひともとそねがもとそねめつなぎてうちてしやまむ
[_13]【〃】@東遷我慢
みつみつしくめのこらがかきもとにうゑしはしかみくちひひくわれはわすれしうちてしやまむ
[_14]【〃】@東遷神風をめぐって気勢を上げる
かみかせのいせのうみのおひしにはひもとほろふしただみのいはひもとほりうちてしやまむ
[_15]【〃】@東遷兵士空腹
たたなめて いなさのやまを このまよも いゆきまもらひ たたかへば われはゑぬ しまつとりうかかひがとも いますけにこね
[_16]【大久米命】地場婚姻推奨
やまとの たかさじのを ななゆく をとめとも たれをしまかむ
[_17] 【天皇】嫁(皇后)選び
かつかつも いやさきだてる えをしまはむ
[_18] 【伊須氣余理比賣】大久米命の目の入墨の珍奇性
あめつつ ちどりましとと などさけるとめ
[_19] 【大久米命】回答
をとめに ただにあはむと わかさけるとめ
---
[_20] 【天皇】伊須氣余理比賣との夜を懐かしむ
 あしはらの____…5
 しげしきをやに__…7
 すがたたみ____…5
 いやさやしきて__…7
 わがふたりねし__…7

---
[_21]【伊須氣余理比賣】御子に危機迫る
[_22]【伊須氣余理比賣】御子に危機を知らせる
[_23]【少女】謀反の陰謀あり、と告知
  [_21]
 さゐかはよ____…5
 くもたちわたり__…7
 うねびやま____…5
 このはさやぎぬ__…7
 かぜふかむとす__…7
  
[_22]
 うねびやま____…5
 ひるはくもとゐ__…7
 ゆふされば____…5
 かぜふかむとぞ__…7
 このはさやげる__…7

  [_23]
 みまきいりひこはや…7+2=9
 みまきいりひこはや…7+2=9
 おのがをを____…5┐
 ぬすみしせむと__…7┘
 しりつとよ____…5┐
 いゆきたがひ___…6┘
 まへつとよ____…5┐
 いゆきたがひ___…6┘
 うかかはく____…5
 しらにと_____…_+4=9
 みまきいりひこはや…7+2=9

倭建命15首
[_24]【倭建命】出雲健討伐自賛
[_25]【(后)弟橘比賣命】入水辞世
[_26]【倭建命】「吾妻はや」と歎息@甲斐国酒折宮
[_27]【御火燒之老人】
[_28]【倭建命】初夜@所期の地
[_29]【美夜受比賣】答御歌
[_30]【倭建命】伊吹山より敗走@尾津岬一本松
[_31]【倭建命】伊吹山より敗走思國歌
[_32]【倭建命】伊吹山より敗走思國歌-無事な人へ
[_33]【倭建命】辞世的[片歌]故郷を見上げ感慨
[_34]【倭建命】辞世的草薙剣と美夜受比賣を思って
[_35]【倭建命后御子等】<大御葬儀歌>逝去悲嘆
[_36]【倭建命后御子等】<大御葬儀歌>倭建命白鳥に化身
[_37]【倭建命后御子等】<大御葬儀歌>白鳥追走@海辺
[_38]【倭建命后御子等】<大御葬儀歌>白鳥飛翔@磯伝い
  [_24]
 やつめさす____…5┐
 いづもたけるが__…7┘
 はけるたち____…5┐
 つづらさはまき__…7┤
 さみなしにあはれ_…8┘

  [_25]
 さねさし_____…4┐
 さがむのをぬに__…7┘
 もゆるこの____…5┐
 ほなかにたちて__…7┤
 とひしきみはも__…7┘

  [_26]
 にひばり_____…4┐
 つくばをすぎて__…7┤
 いくよかねつる__…7┘

  [_27]
 かがなべて____…5┐
 よにはここのよ__…7┤
 ひにはとをかを__…7┘

  [_28]
 ひさかたの____…5┐
 あめのかぐやま__…7┘
 とかまに_____…4┐
 さわたるくび___…6┘
 ひはぼそ_____…4┐
 たわやがひなを__…7┘
 まかむとは____…5┐
 あれはすれど___…6┘
 さねむとは____…5┐
 あれはおもへど__…7┘
 ながけせる____…5┐
 おすひのすそに__…7┤
 つきたちにけり__…7┘

  [_29]
 たかひかる____…5
 ひのみこ_____…4
 やすみしし____…5┐
 わがおほきみ___…6┘
 あらたまの____…5┐
 としがきふれば__…7┘
 あらたまの____…5┐
 ときはきへゆく__…7┘
 うべなうべなうべな…9○○○
 きみまちがたに__…7
 わがけせる____…5┐
 おすひのすそに__…7┤
 つきたたなむよ__…7┘

  [_30]
 おはりに_____…4┐
 ただにむかへる__…7┤
 をつのさきなる__…7┘
 ひとつまつ____…5○
 あせを______…3○
 ひとつまつ____…5┐
 ひとにありせば__…7┤
 たちはけましを__…7┘
 きぬきせましを__…7
 ひとつまつ____…5○
 あせを______…3○

  [_31]
 やまとは_____…4┐
 くにのまほろば__…7┘
 たたなづく____…5長
 あをかき_____…4短
 やまごもれる___…6
 やまとしうるはし_…8

  [_32]
 いのちの_____…4
 またけむひとは__…7
 たたみこも____…5
 へぐりのやまの__…7
 くまかしかはを__…7
 うずにさせ____…5
 そのこ______…3○

  [_33]
 はしけやし____…5┐
 わぎへのかたよ__…7┤
 くもゐたちくも__…7┘

  [_34]
 をとめの_____…4┐
 とこのへに____…5┘
 わがおきし____…5┐
 つるぎのたち___…6┤
 そのたちはや___…6┘

  [_35]
 なづきのたの___…6長
 いながらに____…5短
 いながらに____…5
 はひもとほろふ__…7
 ところづら____…5

  [_36]
 あさじのはら___…6長
 こしなづむ____…5短
 そらはゆかず___…6
 あしよゆくな___…6

  [_37]
 うみがゆけば___…6長
 こしなづむ____…5短
 おほかはらの___…6長
 うゑぐさ_____…4短
 うみがはいさよふ_…8

  [_38]
 はまつちどり___…6
 はまよはゆかず__…7
 いそづたふ____…5

⑮14首
[_39]【忍熊王】反逆失敗で入水辞世@琵琶湖
いさあぎ ふるくまか いたてをはずは にほとりの あふみのうみに かづきせなわ
[_40]【神功皇后】天皇勝利凱旋の酒宴
このみきは わかみきならず くしのかみ とこよにいます いはたたす すくなみかみの かむすき ほきくるほし とよほき ほきもとほし まつりこし みきそ あさずをせ ささ
[_41]【建内宿禰】酒楽之歌崩御後実質天皇位の皇后を補佐し祭祀進行
このみきを かみけむひとは そのつづみ うすにたてて うたひつつ かみけれかも まひつつ かみけれかも このみきの みきの あやにうただのし ささ
[_42]【天皇】行幸で国の繁栄を寿ぐ
ちばの かづのをみれば ももちたる やにはもみゆ くにのほもみゆ
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[_43]【天皇】矢河枝比売を迎えた大御饗酒宴での喜びの発露
このかにや いづくのかに (5-6)
ももづたふ つぬがのかに (5-6)
よこさらふ いづくにいたる (5-7)
いちぢしま みしまにとき (5-6)
みほどりの かづきいきづき (5-7)
しなだゆふ ささなみぢを (5-6)
すくすくと わがいませばや (5-7)
こはたのみちに あはししをとめ (6-7)
うしろでは をだてろかも (5-6)
はなみは_ しひひしなす (4-6)
いちひゐの わにさのにを (5-6)
はつには_ はだあからけみ (4-7)
しはには_ にぐろきゆゑ (4-6)
みつぐりの そのなかつにを (5-7)
かぶつく_ まひにはあてず (4-7)
まよがき_ _______ (4-_)○
こにかきたれ あはししをみな (6-7)
かもがと_ わがみしこら (4-6)○
かくもがと わがみしこに (5-6)○
うただけだに むかひをるかも (6-7)
       いそひをるかも (_7_)

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[_44]【天皇】皇子に美女を譲り渡した時
いざこども のひるつみに ひるつみに わかゆくみちの かくはし はなたちばなは ほつえは とりゐからし しづえは ひととりからし みつくりの なかつえの ほつもり あからをとめを いなささば よらしな
[_45]【天皇】皇子に女を譲り渡して後悔
みづたまる よさみのいけの ゐくひうちか さしけるしらに のなはくり はへけくしらに わかこころしそ いやをこにして いまそくやしき
[_46]【(太子)大雀命】天皇から女を譲り受けて喜んだ
みちのしり こはだをとめを かみのごと きこえしかとも あひまくらまく
[_47]【(太子)大雀命】得た妃の性情を喜んだ
みちのしり こはだをとめは あらそはず ねしくをしそも うるはしみをもふ
[_48]【吉野之國主等】16代天皇の帯刀剣褒め
ほむたの ひのみこ をふささき をふささき はかせるたち もとつるぎ すゑふゆ ふゆきの すからかしたきの さよさよ
[_49]【吉野之國主等】<獻大贄之時>皇嗣即位前に新酒贈呈
かしのふに よくすをつくり よくすに かみしをふきみ うまらに きこしもちをせ まろかち
[_50]【天皇】渡来名酒多飲酩酊時
すすこりか かみしみきに われゑひにけり ことなくし ゑくしに われゑひにけり
[_51]【大山守命】反逆失敗で川に流され救助要請
ちはやふる うぢのわたりに さをとりに はやけむひとし わかもこにこむ
[_52]【宇遅能和紀郎子】反逆者大山守命討伐成功時
ちはやひと うぢのわたりに わたりせに たてる あづさゆみまゆみ いきらむと こころはもへと いとろむと こころはもへと もとへは きみををもひて すゑへは いもををもひて いらなけく そこにをもひて かなしけく ここにをもひて いきらずそくる あづさゆみまゆみ
⑯23首
[_53]【天皇】皇后を恐れ帰郷した妃への恋慕
をきへには をふねつららく くろさやの まさづこわげも くにへくたらす
[_54]【天皇】帰郷した妃を追いかける
をしてるや なにはのさきよ いてたちて わかくにみれば あはしま をのごろしま あぢすさのしまもみゆ さけつしまみゆ
[_55]【天皇】帰郷した妃と再会し悦楽
やまかたに まけるあをなも きびひとと ともにしつめば たのしくもあるか
[_56]【黒比売】帰都に際し、別れを惜しむ
やまとへに にしふきあぎて くもばなれ そきをりとも われわすれめや
[_57]【黒比売】帰都時に思いを伝える
やまとへに ゆくはたがつま こもりづの したよはへつつ ゆくはたがつま
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[_58]【大后】皇后激怒し家出を決意
つぎねふや やましろがはを
かはのぼり わがのぼれば
かはのへに おひだてる
さしぶを_ さしぶのき
しがしたに おひだてる
はびろ__ ゆつまつばき
しがはなの てりいまし
しがはの_ ひろりいますは
      おはきみろかも

---
[_59]【大后】家出皇后帰郷途上時
つぎねふや やましろかはを みやのほり わかのほれば あをによし ならをすぎ をだて やまとをすぎ わかみかほしくには かづらきたかみや わがへのあたり
[_60]【天皇】家出皇后を追いかける使者を派遣
やましろに いしけとりやま いしけいしけ あかはしづまに いしきあはむかも
[_61]【天皇】家出皇后を気遣う
みもろの そのたかきなる をふゐこかはら をふゐこか はらにあれ きもむかふ こころをたにか あひをもはずあらむ
[_62]【天皇】家出皇后に元の鞘に収まって欲しい、と
つぎねふ やましろめの こくはもち うちしをふね ねしろの しろたたむき まかずけばこそ しらずともいはめ
[_63]【口日売】皇后に天皇の使者に会って欲しい旨懇願
やましろの つつきのみやに ものまをす あかせのきみは なみたくましも
[_64]【天皇】志都歌之歌返家出皇后を迎えに出向く
つぎねふ やましろめの こくはもち うちしをふね さわさわに なかいへせこそ うちわたす やかはえなす きいりまゐくれ
[_65]【天皇】妃への愛一途
やたの ひともとすげは こもたず たちかあれなむ あたらすかはら ことをこそ すぎはらといはめ あたらすかしめ
[_66]【八田若郎女】一途に、貞節をまもり抜く、と
やたの ひともとしぎは ひとりをりとも をふきみし よしときこさば ひとりをりとも
[_67]【仁徳天皇】異母妹 女鳥王に求愛
めとりの わかをふきみの をろすはた たがたねろかも
[_68]【女鳥王】返歌求愛拒絶
たかゆくや はやふさわけの みをすひかね
[_69]【女鳥王】夫に天皇暗殺を期待
ひばりは あめにかける たかゆくや はやふさわけ ささきとらさね
[_70]【速總別王】愛妻と共に反逆逃避行
はしたての くらはしまを さかしみと いはかきかねて わがてとらすも
[_71]【速總別王】愛妻と共に最期を覚悟
はしたての くらはしやまは さかしけと いもとのほれば さかしくもあらず
---
[_72]【天皇】雁卵の問
[_73]【建内宿禰】雁卵問への答
[_74]【建内宿禰】祝歌片歌雁卵で寿ぎ
[72]
たまきはる うちのあそ
なこそは_ よのながひと
そらみつ_ やまとのくにに かりこむと きくや

[73]
たかひかる ひのみこ
うべしこそ とひたまへ
まこそに_ とひたまへ
あれこそは よのながひと
そらみつ_ やまとのくにに
かりこむと いまだきかず

[74]
ながみこや つひにしらむと かりはこむらし  🈪5-7-7
---
[_75]【人々】木船琴
からのを しほにやき そかあまり ことにつくり かきひくや ゆらのとの となかのいくりに ふれたつ なづのきの さやさや
⑰3首
[_76]【天皇】宮焼き討ちで焼殺寸前
[_77]【天皇】なんとか助かったことがわかった時
[_78]【天皇】敗走逃亡中に乙女に道を尋ねた時
 5[タジヒノに] 7[ねむとしりせば] 5[たつごもも]
   8[もちてこましもの] 7[ねむとしりせば)]
 5[ハニフザカ] 7[わがたちみれば] 5[かぎろひの]
   7[もゆるいへむら] 9[つまがいへのあたり]
 5[オホサカに] 7[あふやをとめを] 5[みちとへば]
   7[ただにはのらず] 7[タヂマジをのる]

軽皇子・軽大郎女12首
[_79]【木梨之輕太子】志良宜歌同母兄妹婚決意
あしひきの やまたをづくり やまたかみ したびをわしせ したとひに わかとふいもを したなきに
わかなくつまを こそこそば やすくはたふれ

[_80]【〃】夷振之上歌同母兄妹婚実現の喜び
ささはに うつやあられの たしだしに ゐねてむのちは ひとはかゆとも うるはしと さねしさねてば かりこもの みたればみたれ さねしさねてば
[_81]【穴穂命】輕太子討伐
をふまへ をまへすくねか かねとかけ かくよりこね あめたちやめむ
[_82]【大前小前宿禰】宮人振輕皇子を匿う趣意
みやひとの あゆひのこすず をちにきと みやひととよむ さとひともゆめ
[_83]【木梨之輕太子】天田振捕囚後に同母妹の心情への思いを発露
あまだむ かるのをとめ いたなかば ひとしりぬへし はさのやまの はとの したなきに
[_84]【木梨之輕太子】天田振捕囚されても尚つのる同母妹への愛
あまだむ かるのをとめ したたにも よりねてとふれ かるをとめとも
[_85]【木梨之輕太子】天田振伊予配流時愛しの同母妹を想って
あまとぶ とりもつかひそ たづかねの きこえむときは わかなとはさね
[_86]【木梨之輕太子】夷振之片下愛する同母妹の貞節を願う
をふきみを しまにはふらば ふなあまり いかへりこむそ わかたたやゆめ ことをこそ たたみといはめ わかつまはゆめ
[_87]【軽大郎女】軽皇子の愛が移らぬよう
なつくさの あひねのはまの かきかひに あしふますな あかしてとふれ
[_88]【軽大郎女】どうにもならず軽皇子のもとへ
きみがゆき けなかくなりぬ やまたづの むかへをゆかむ まつにはまたじ
[_89]【木梨之輕太子】愛する同母妹の来伊予時
こもりくの はつせのやまの をふをには はたはりたて をさををには はたはりたて をふをにし なかさためる をもひづまあはれ つくゆみの こやるこやりも あづさゆみ たてりたてりも のちもとりみる をもひづまあはれ
[_90]【木梨之輕太子】心中に当たっての相思相愛確認
こもりくの はつせのかはの かみつせに いくひをうち しもつせに まくひをうち いくひには かかみをかけ まくひには またまをかけ またまなす あかもふいも かかみなす あかもふつま ありと いはばこそよ いへにもゆかめ くにをもしのはめ
㉑14首
[_91]【天皇】皇后との結婚
くさかへの こちのやまと たたみこも へくりのやまの こちごちの やまのかひに たちさかゆる はひろくまかし もとには いくみたけをひ すゑへには たしみたけをひ いくみたけ いくみはねず たしみたけ たしにはゐねず のちもくみねむ そのをもひづま あはれ
[_92]【天皇】志都歌婚姻の約束を忘れたままだった
みもろの いつかしかもと かしかもと ゆゆしきかも かしはらをとめ
[_93]【天皇】志都歌若かりし頃睦合えばよかった、と
ひけたの わかくるすばら わかくへに ゐねてましもの をいにけるかも
[_94]【赤猪子】志都歌待たされ続けた、と
みもろに つくやたまかき つきあまし たにかもよらむ かみのみやひと
[_95]【赤猪子】志都歌日下の皇后に入り浸りで忘れられた、と
くさかえの いりえのはちす はなばちす みのさかりひと ともしきろかも
[_96]【天皇】吉野で童女を見初める
あぐらゐの かみのみてもち ひくことに まひするをみな ここよにもかも
[_97]【天皇】吉野行幸時の蜻蛉島寿ぎ
みえしのの をむろかたけに ししふすと たれそ をふまへにまをす やすみしし わかをふきみの ししまつと あくらにいまし しろたへの そてきそなふ たこむらに あむかきつき そのあむを あきづはやくひ かくのこと なにをはむと そらみつ やまとのくにを あきづしまとふ
[_98]【雄略天皇】猪に襲われ木の上に逃げた
やすみしし わかをふきみの あそばしし ししの やみししの うたきかしこみ わかにけのほりし ありをの はりのきのえた
[_99]【雄略天皇】袁杼比売に求婚
をとめの いかくるをかを かなすきも いほちもかも すきはのるもの
[100]【三重の采女】粗相で殺される寸前
まきむくの ひしろのみやは あさひの ひてるみや ゆふひの ひかけるみや たけのねの ねだるみや このねの ねばふみや やふによし いきずきのみや まきさく ひのみかと にひなへやに をひだてる ももだる つきがえは ほつえは あめををへり なかつえは あずまををへり しずえは ひなををえり ほつえの えのうらばは なかつえに をちふらばへ なかつえは えのうらばは しもつえに をちふらばへ しずえの えのうらばは ありきぬの みへのこがささがせる みずたまうきに うきしあふら をちなずさひ みなこをろこをろに こしも あやにかしこし たかひかる ひのみこ ことのかたりごとも こをば
[101]【大后】三重の采女に仕切り直しを勧める
やまとの このたけちに こだかる いちのつかさ にひなへやに をひだてる はひろ ゆつまつばき そがはの ひろりいまし そのはなの てりいます たかひかる ひのみこに とよみき たてまつらせ ことの かたりことも こをば
[102]【天皇】天語歌酒宴では享楽三昧でよし、と
ももしきの をふみやひとは うずらとり ひれとりかけて まそばしら をゆきあへ にはすずめうずすまりいて けふもかも さかみずくらし たかひかる ひのみやひと ことの かたりごとも こをば
[103]【天皇】浮歌続く求愛
みなそそく をみのをとめ ほだりとらすも ほだりとり かたくとらせ したがたく やがたくとらせ ほだりとらすこ
[104]【袁杼比売】静歌応じる、と
やすみしし わがをふきみの あさとには いよりたたし ゆふとには いよりたたす わきずきがしたの いたにもが あせを
㉓9首
[105]【即位前天皇】逃亡を止め帰京し皇嗣となる端緒
たつるあかはたみれば
いかくりぬる やまのみをの たけを かききり すゑおしなびきなす
やをのこと ととのふるごと あめのしたをさめたまへる
いざほわけのすめらみことのみこ
いちへのおしはのみこのやっこらまあなすゑ

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[106]【志毘臣】@歌垣経緯選んだ女に臣が手を出す
[107]【即位前天皇】@歌垣経緯嫌がらせに対抗
[108]【志毘臣】@歌垣経緯あからさまな敵対意識
[109]【即位前天皇】@歌垣経緯無礼な態度批判
[110]【志毘臣】@歌垣経緯さらに強烈な敵愾心表明
[111]【即位前天皇】@歌垣経緯無礼千万と
  5(おほみやの) 6(をとつはたて) 7(すみかたぶけり)
  5(おほたくみ) 6(をぢなみこそ) 7(すみかたぶけり)
  5(おほきみの) 7(こころをゆらみ)5(おみのこの)
     7(やへのしばかき) 7(いりたたずあり)
  4(しほせの_) 7(なをりをみれば) 5(あそびくる)
     7(しびがはたてに) 7(つまたてりみゆ)
  5(おほきみの) 7(みこのしばかき) 5(やふじまり)
     7(しまりもとほし) 7(きれむしばかき) 7(やけむしばかき)
  5(おふをよし) 7(しびつくあまよ) 5(しがあれば)
     7(うらこほしけむ) 7(しびつくしび)

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[112]【天皇】大恩媼を毎日召していた時
あさぢはら をだにをすぎて ももつたふ ぬてゆらくも おきめくらしも
[113]【天皇】老いた大恩媼の帰郷時に別れを惜しむ
おきめもや あふみのおきめ あすよりは みやまかくりて みえずかもあらむ

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