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■■■ 「古事記」解釈 [2023.6.2] ■■■
[707] 「古事記」仮名 半母音 夜由餘延用
やゆ𛀁よyoY行は、「萬葉集」とは違って、太安万侶は練りに練って漢字を選別している様子が見てとれ、なかなかに面白い。

(乜:也の省画変形)(〃) [萬]…夜

夜  ・・・もちろん"yo【甲】"でもある。"ヤ"が音で、"よ(る)"が訓。a⇔oの特徴を示しているともいえよう。
八 捌  捌拾参歳
矢 箭    [+「萬」]
屋 舎 殿  [+「萬」]室家
乎 哉 耶
祖  玉祖命・・・普通は"ソ"だが。
  [+「萬」]也野楊陽益笶移破聴歟
     …「古事記」では"ゾ【乙】"。
どうして"〜ぞ。"とするのかは定かではない。現代常識的には"〜なり。"として扱う文末箇所用法だからだ。
普通は、この文字の音は"ヤ"だが、「古事記」では用いない。
   [呉漢音]ヤ [訓]なり か また し [吳語]hha[客家語]ya
   [巻十五#3703]也之保能伊呂尓:八入の色に
漢語では、この文字は所謂、文末/句末での語気詞的な助字。叙事表現に使う文字としてなら、断定的表現に用いる筈。それ以外には呼び掛け的雰囲気を醸し出すとか、共感表明に用いるしかあるまい。太安万侶は、その用法での発声に"ヤ"を使われたりしたら気分悪しだったことがわかる。

(由の終画変形)(〃) [萬]
由  由布佐礼婆
   [巻五#802]胡藤母意母保由:子等思ほゆ
湯  有湯津香木
   [巻四#754]面影二三湯:面影に見ゆ
弓  絶弓絃
   [巻十六#3885]御弓之弓波受:御弓の弓弭(ゆはず)

(工:江の旁)𛀁(〃) [萬]…延

平安初期の仮名誦文「あめつちの詞」を復元・解釈すると、"を"という句の存在が見て取れ、ここから、ア行の"え"📖愛惠延とヤ行の"𛀁"の<e>が区別されていることが判明したとされている。
平安中期に、この両者は後者の"je"として統合されたと推定されているそうだ。ところが約500年前の"e"類統合で、再び変化し、現在に至ると見られているらしい。・・・蒸し返しの発生ということになるから、素人には、納得しがたい変遷説である。
延  美延受加母阿良牟
   [巻五#896]吉許延許婆:聞こえ来ば
江  墨江
   [巻二十#4372]阿例波久江由久:我れは越え行く
兄  兄宇迦斯
   [巻二#213]百兄槻木:百枝槻の木
枝  上枝
   巻二#141]浜松之枝乎:浜松が枝を
所  所殺神於身生物者
   [巻三#269]所焼乍可将有:焼けつつかあらむ
見  見欺
   [巻十六#3815左注]夫君見棄改適他氏也
被  被還之事
   [巻十七#3927題詞]被任越中國守
  曳叡要柄吉

(與の一部画)(〃) [萬]…余/餘【乙】
余/餘  登余本岐
   「萬葉集」は自由自在。・・・
   <れ>[巻三#416]磐余池尓
   <あ>[巻七#1293]余跡川楊
四  駅使班于四方
肆  壱佰弐拾肆歳
予  予母都志許売
善  善事
与/與  登理与曽比
   <と>与登美毘古戦之時
代  神世七代
   <で>糠代比売
葉  欲流後葉
   <は ば>竹葉 青葉山
世  常世國
   <せ>波都世:泊瀬
節  河嶋一節
  [+「萬」]吉好俗歯生誉依歳齢尋

yo [萬]…用【甲】

用  用波伊伝那牟
   [巻五#871]比例布利之用利:領巾振りし因り
   [呉音]ユウ [漢音]ヨウ [訓]もち-ゐる [吳語]hhion[客家語]yung
宿  一宿為婚
   [巻八#1520]余宿毛:あまた夜も
夜(=𡖍)  常夜往
   [巻三#428]伊佐夜歴雲者:いさよふ雲は
  [巻十五#3624]欲布祢波許具登:夜船は漕ぐと
     ・・・大した意味はないが、"む"でとりあげた。

   [呉漢音]ヨク [訓]ほしい [吳語]hhioq[客家語]yuk

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