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■■■ 「古事記」解釈 [2024.5.3] ■■■
[877]読み方[47]
「古事記」を読もうとするに、国史をわざわざ参照するのは考えものと、しつこく、書いているが、何が言いたいのかさっぱりわからず、大いに不快に思う方も多かろうが、肝心要の主張でもあるのでご容赦のほど。
多少、解り易く云えば、好き嫌いに無関係に、日本史は必ず学ぶことになるので(国史教育がなされない国家の存在などおよそ考えられまい。)、その程度の知識さえあれば十分ということ。つまり、それ以上細かいことを参照して「古事記」を読もうとするのはよした方がよいと云えば、なにか感じるところがあるかも。

特に、○○天皇は実在するか否かを考えるために、両書を並べて検討するような類の頭の使い方は最悪。一寸法師が実在するか、じっくり考えて結論を出したところで、どれだけの価値があるのか、というだけのことだが。

それよりは、くどいが、「古事記」の全体構成を味わった方がよい。天武天皇が巻建を指示したとは思えず、太安万侶が思案の末に思い至ったのだろうから、作品の根底思想を知る上では一番の手掛かりの筈だし。・・・
㊤ 🈠序文[漢文]
  🈜㋟高天原之~ ㋑伊邪那岐命・伊邪那美命 
  🈭㋜速須佐之男命 ㋔大國主~ 
  🈝㋐天照大御~・太子正勝吾勝勝速日天忍穗耳命
     ㋥天邇岐志國邇岐志天津日高日子番能邇邇藝命 ㋭火照命
     ㋒天津日高日子波限建鵜葺草葺不合命

㊥ 🈜❶~倭伊波禮毘古命 
  🈭❷~沼河耳命〜若倭根子日子大毘毘命
  🈝❿御眞木入日子印惠命〜品陀和氣命
㊦ 🈜⑯大雀命〜穴穗御子 
  🈭㉑大長谷若建命〜小長谷若雀命 
  🈝㉖袁本杼命〜[妹]豐御食炊屋比賣命  ㉞岡本宮天皇

初代天皇から、新たな巻になるのは、誰でもが納得だろうが、大雀命から次の時代が始まり、[妹]豐御食炊屋比賣命で完了する点については、すぐにわかる訳ではない。
しかし、聖帝登場が頭で、なにも記載されていないものの十七条憲法制定の天皇を末とする、一括りの時代とするコンセプトは素晴らしいの一語に尽きる。
これは、㉞舒明天皇から、≪飛鳥≫の律令時代が本格的に始まったことを示唆しており、天武天皇〜元明天皇期の朝廷の人々にとって、それは"常識"ということも意味していそう。(㉝代の宮が小治田宮@飛鳥であるとの記載も特筆もの。それ以外の事績など書いてなくとも、この名称から時代背景が読めるからだ。地形的に稲作が向くとはとうてい思えない地に、渡来人の持ちこんだ技術で大規模開発を進めて大成功を収めたことになろう。換言すれば、渡来神(仏像)によって護られる新たな統治の地誕生。)

言うまでもないが、中巻と下巻では、社会の倫理観が180°違ってしまったのである。
初代天皇の平定や倭建の西征の勝利譚がいみじくも物語るが、現代感覚で解釈すれば、卑怯でずる賢いだけの所作となる。これでは尊崇の対象にはなるまいと考えてしまいがちだが、それは現代人の"常識的"発想か(もっとも、反常識の社会になってしまうこともあるが。)、天子独裁による社会安定を志向する儒教の考え方。(部族時代の価値観をママ引き継いでいたとも言えそう。突然の裏切りや計略競争での勝利は族長の"知"と"勇気"の素晴らしさの象徴的伝承譚となるのが普通だからだ。儒教圏であっても、天子独裁制度である以上、官僚層の政策転換には権謀術数の駆使は必要不可欠であり、儒教的"倫理"性の意味はこの領域では違ってくる。)

【付記】
信仰(宗教)に基づく倫理領域での議論は止めた方がよい。気付かずに、その領域に踏み込んでいることも少なくないので。話はかなり跳ぶが、老爺心ながら、その説明。・・・
例えば、一般常識としては、人殺し教団は極めて異常な反社会的勢力。にもかかわらず、我々が住む社会では、その様な勢力を褒め称えたりすることもある。後になって、その教義など知らないし、支持していた訳でもないとか、そんなトンデモ集団とは全く知らなかったと云い訳して済ますことになる。無視するどころか、皆で注目していたにもかかわらず。
少数とはいえ、その手のカルトからの脱退を説得する人達が存在するので、社会がなんとか異常化せずに済んではいるものの、小生は、その手の活動で、カルト教徒を社会常識の世界に戻すことができるとは見ていない。そのお蔭で、当該カルト構成員の周囲の人々がカルトに引きずり込まれないことに繋がるので、社会変質を防ぐという点で効果抜群と考えている。一般的なカルト批判の効果は期待薄どころか、注目を煽っているようなもの。



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