「古事記」解釈[900](20240526)

■■■　「古事記」解釈 [2024.5.26]　■■■

[900]

21本居宣長の神の定義はそれだけ読めば極めてわかりやすいが、余りに情緒的で概念化されているとも言い難い。(自然現象神と実体神は同じなのか、人格神か否か、等々の基本的な考え方がよくわからないこともある。・・・偶像化問題も係る。)もっとも、だからこそ正しいとするのが、日本教の心髄と言えなくもないのか。・・・
　　　迦微と申す名義は未だ思ひ得ず。[舊く説ることゞも皆あたらず。]
　　　さて凡て迦微とは、古御典等に見えたる天地の諸の神たちを始めて、
　　　其を祀れる社に坐す御霊をも申し、又人はさらにも云ず、
　　　鳥獣木草のたぐひ海山など、其餘何にまれ、
　　　尋常ならずすぐれたる徳のありて、可畏き物を迦微とは云なり。
　　　　　　　　[「古事記傳」三之巻]

・・・聖書の"神"を念頭において語るのであれば、一番肝心な点は、霊魂と肉体という問題に神がどう関係しているかでは。信仰は論理でないとはいえ、それなりの説得力のある説明は必要だろう。

そもそも、創造神と単純に言うが、至極曖昧な定義である。神が肉体(アダム)に魂を吹き込んでヒトが生まれるとすると、その子孫はどうなるのかという疑問が湧くからだ。・・・神は吹き込みを止めたにもかかわらず、肉体を受け継ぐ子孫の霊魂はどうして自動的に生まれるのか。肉体と霊魂を分ける以上、常識的には説明不可能。
但し、子孫はアダムの魂を受け継ぐことになるのだから、原罪はすべて引き継ぐことになると考えるのは論理的。

ここらを考慮すれば、「古事記」的には、青人草を始めとして、生命体すべて霊魂ありということになるのだろうか。換言すれば、その"葦牙"の様な生命力こそが霊魂の本質ということになる。しかし、生命力を失えば、魂も消滅することになってしまうし、魂の継承はどうなるのだろう。

まあ、神学とは縁遠いので、答が出せる訳もないが、「古事記」はここらあたりの考え方の問題提起をしている書でもある。
神統譜-皇統譜を記載しているということは、形而上学的ではあるものの、倭の国魂がどの様に受け継がれたのか系譜にしてみたということでもあり、その継承の仕方がどうだったか見えるように事績も加えていることになろう。
現代人には、はなはだ理解が難しい題材であるのは間違いない。