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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.7.8 ■■■

蟹観察三昧[1:垂涎の食材]

中華帝国では、中秋節の御馳走といえば蟹というのが習わし。美味食材として、「周礼」天官 庖人に記載されているほど。・・・
荐羞之物謂四時所膳食,若荊州之魚,青州之蟹胥。

魯迅さえ、[「今天的兩種感想」1932年]こんなものを食物にするとは頭が下がる思い、と語っているほど。・・・
許多歴史的教訓,都是用極大的犧牲換來的。
譬如吃東西,某種是毒物不能吃,我們好象全慣了,很平常了。
不過,還一定是以前有多少人吃死了,才知的。
所以我想,第一次吃蟹的人是很可佩服的,不是勇士誰敢去吃它
蟹有人吃,蜘蛛一定也有人吃過,不過不好吃,所以後人不吃了,像這種人我們當極端感謝的。


蟹は、ともあれ、とびつきたくなる食材なのである。もちろん、危険はあるが。・・・

蟹八月腹中有芒,芒真稻芒也,長寸許,
向東輸與海神,未輸不可食。


なんなんだ、稲の"芒"が蟹の腹にあるというのは。「カニを喰っても、ガニ喰うな。」とは漁師が良く言うから、この俗称"ガニ"と呼ぶ、袴あるいはビラビラを指すのだろうか。毒がある訳ではないのだが。
ただ、時期の指定があるし、必ず神に捧げてから食すべしとなっている風習が残っているとすれば、たいていは毒蟹の存在を意味している。河豚同様に、当該個体に有毒成分を合成する能力は無いのだが、有毒藻を食べてその毒を濃縮する可能性はある。蟹中毒は必ずしも細菌感染だけではないのだ。

そう言えば、段家の名菜リスト[→食材一覧]に蟹が欠けている。
垂涎の蟹は、上海蟹ではないことがわかる。・・・

平原郡貢糖蟹,采於河間界。
毎年生貢,斬冰火照,懸老犬肉,蟹覺老犬肉即浮,因取之。
一枚直百金。以氈蜜束於驛馬,馳至於京。


梁の文官何胤の大好物の1つが、活蟹蜜漬"糖蟹"との記載があるが、[→]それとは違うようである。
平原郡@山東コ州の名物の河蟹のようだ。おそらく青蟹/鋸/ノコギリガザミ/Mud Crabと思われる。
日本の市場ではマイナーなのは、マングローブ地帯を好む種だからだろう。"糖"と名付けたのは、甘いというよりは、抜群の旨さを意味しているのだと思われる。棲む環境からみて、適当な布で包んで急送すれば、寒い時期なら、都で活蟹が食べれたのは間違いない。老犬肉のお味のほどはわからぬから、その辺りの評価は困難である。
唐以前書傳,凡言及糖者皆糟耳,如糖蟹、糖薑皆是。 [南宋 陸游:「老學庵筆記」卷六]

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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