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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.9.4 ■■■

騾馬の胃石

反乱分子には、凶を予見させる奇異なモノがあってしかるべしという趣旨の話。・・・
阻命之時,臨洛市中百姓有推磨盲騾,無故死,因賣之。
屠者剖腹中得二石,大如合拳,紫色赤斑,瑩潤可愛。
屠者遂送,乃留之。
  [續集卷一 支諾皋上]
賊とされた劉[n.a.-844年]が造反していた頃の話。
[=臨洛,@河北邯鄲永年]の市に居た百姓が
推磨使役用に、盲目になっていた騾馬を飼っていた。
ところが、故無くして死んだのである。
そこで、死体を売り払った。
屠殺者が開腹すると、中に2個の石があった。
拳程度の大きさで、赤色斑模様があり紫色をしていた。
つややかで潤いを感じさせるので、実に可愛らしい石だった。
そこで、屠殺者はに送り届けたのである。
当然ながら、これを留め置いた訳である。


腹から石ということは、胃石か。
知る人ぞ知るの世界では、恐竜の胃石(胃中での擂り潰し用途)が注目されている。現生鳥類に見られる砂肝的な機能に相当する訳だが、これは呑みこんだ石である。
  「ギザストーン」(C)三重県総合博物館
驢馬も流石にこんなことはすまい。

ヒトにもできるが、こちらは植物由来。柿やコンフリーを多食する地域ではそれなりの数らしい。大きさはそれなりだが、美麗な"石"とは言い難い。
哺乳類では、海獣が知られているようだが、陸棲では山羊と、相場が決まっている。山羊に限る訳ではない筈だが、特別高貴薬とされているから、限られた人々のなかでは有名だったのである。・・・ペルシア語で"Pad-zahr"。(毒消し)[英語化するとBezoar]

中華帝国では、仙丹に命をかける人々だらけであり、なんらかの効能ありとされていた筈だ。
その体質は現在の華人世界にも受け継がれている位なのだから。(e.g.⇒"人間最后的仙丹─馬来西亜神奇的箭猪棗"2011-04-07新浪博客 [ヤマアラシの胃石])
ただ、驢馬だと駄目か。
だからこそ反乱分子にはお似合いということかも。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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