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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.11.18 ■■■

針鼠と耳

/針鼠 or 彙/ハリネズミ/Hedgehogの話。・・・

見虎,則跳入虎耳。  [續集卷八 支動]

蝟形動物とされており、どうも毛が密集する状態を謂うらしく、虫偏の文字も使用されるようだ。

そういうことだと、豪豬/山荒/ヤマアラシ/Porcupineもその手の名前になりそうなものだが、そうはならない。
こちらはえらく攻撃的な体質だから、針がはたして防御用か疑問が湧くから一緒にされないのかも知れぬ。
針鼠は昼の間はたいてい丸まって寝ている。従って、夜間に主に昆虫や草の根を食べて生活していると見られている。ユーラシア大陸では、場所によっては沢山棲息しているポピュラーな種なので、その生態はかなりのレベルまで知られている。そして、防衛的な大人しい動物という記載だらけ。(それがはたしてこの動物の本質なのか、疑問が残るものの。)

そんなイメージしかないので、何故に虎と関係するのか、さっぱり想像がつかない。
しかも、虎耳。と言うことは、野生の猫類には必ずあるが、家のペットには皆無である"状斑"(裏にある白い斑点模様)に繋がるモノがあるのだろうか。

あるいは、四川〜甘粛〜西域〜蒙古に生息する大耳/"long-eared"タイプや、さらに東北部まで広がっているその類縁の達烏爾の目立つ耳に注目したということか。
つまり、同じような生活パターンの動物は毒蛇にやられるのに、そのようなことがないようだから、これは耳の能力がとんでもなく発達していると見られていたのかも。(もしかすると、幼蛇食愛好者かも。もちろん対蛇毒性だったりして。…大ハズレか?)虎もそんな能力を頂戴しているのではないかと考えれば、針鼠が虎の中に居るということになる。
もしそうだとすれば、皆、毒蛇除けということで争うようにして針鼠肉を食べていたかも。

只、常識的には弱い動物であるから、虎の威を借りて、安心して一休みということか。その代わり、下々の下世話な話に聞き耳を立てていましたから、それをお伝えいたしましょうと。
そのような人々を揶揄したお話の可能性も捨てきれない。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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