↑ トップ頁へ

2003.7.14
 
 


地方大学の課題…

 大学を産業界と結びつける仕掛け作りが急だが、成果が期待でない、と嘆く地方大学の先生が増えている。
 これは、先生方の責任というより、教育行政のツケである。個人の頑張りでは、どうにもならない。

 一番の問題は、地方大学に特徴が無い点だ。

 全国津々浦々、教育の一律化を進め、どこでも通用する、均質な高等労働力を創出し続けたのだから、当然の結果である。
 特徴が無いにもかかわらず、独特な地場産業育成を目指すのは無理筋といえよう。無理な目標を掲げたところで、成果が得られる筈がない。
 地方大学は、基本に立ち返るべきだろう。

 もともとは、日本の高等教育は一律型とはほど遠い仕組みだった。「高等」や「専門」が付く、昔の学校名称を見ればすぐわかる。
 例えば、鉱山専門学校が秋田に存在する。養蚕関係でも、上田蚕糸専門学校や京都高等蚕業学校ができている。宇都宮は高等農林学校だが、千葉は高等園芸学校だ。アート・クラフトは京都市立絵画専門学校、京都高等工芸学校、東京高等工芸学校と京都と東京に固まる。高等商船学校は神戸と東京だ。工業についても、地場独特の技術を支える役割を高等学校や専門学校が担っていたと思われる。

 地方大学化の過程で、このようなコンセプトを完璧に捨て去ったのだ。いわば、このコンセプトを突然復活させようというのが、現在の産学協力方針である。

 本当に産学協働を実現したいのなら、「地場産業振興」の旗を振るのではなく、大学の体制変革から始めるべきだろう。遠回りに見えても、それが一番の近道である。

 今のままなら、看板を掲げただけで終わる。

 又、大学お得意の生き残り作戦でお茶を濁すつもりのようだ。
 冶金が金属材料になり、窯業はファインセラミックスに、繊維を有機高分子材料に、生物をライフサイエンスに、と名称を変えても、ヒトは全く同じだ。これで、新しいことができる筈があるまい。
 お化粧作戦は、学生集めには役に立つだろうが、ビジネスには通用しない。

 大学の先生方は、地場に蓄積されている知識基盤を知ることから始めるべきである。そして、知恵を生み出せそうなキー人材を地場から急いで招聘すべきだ。こんな簡単なことさえできないなら、地域との協力などせず、自らの研究に没頭した方が成果があがる。


 教育の危機の目次へ>>>     トップ頁へ>>>
 
    (C) 1999-2004 RandDManagement.com