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2004.3.15
 
 


オンライン大学教育のコモディティ商品化…

 2004年に入り、インド政府は、オンライン大学教育の強化を進めると発表した。(1)

 Indira Gandhi National Open University(IGNOU)(2) の活動は、e-ラーニングが始まった時から、良く話題になっていた。
 すでに大量の学生を輩出しているのだが、政府の支援で、この活動が本格化することになる。

 これまでの活動で、どのような教育をすれば、学生のニーズに応えられるのかもわかってきたから、(3)カリキュラムの精緻化も進んでいると見てよいだろう。
 ウエブを用いたオンライン情報アクセスとフェース・ツー・フェースの教育だけでなく、ウエブを介した資料提供、自習の仕組み(インタラクティブな内容のCD-ROM)、通信サポート(インストラクターとのe-mail通信)が重要であることが判明しているから、全てを統合した教育サービスが実現することになろう。

 もともと、ディスカッション・グループ、オンライン・アサインメント/フィードバック、音声チャット、オンライン指導/アドバイス、が学生にとっては大きな魅力であり、学力向上の鍵でもあるのは間違いない。
 しかし、このような体制をe-ラーニングで、どのように作ればよいのかは、わかっていなかった。
 IGNOUは、いち早くこのノウハウを溜めたのである。そして、このノウハウを活かして、さらに大量の学生の教育を進めるつもりだ。

 この分野では、米国も先進的ではある。グローバルなe-ラーニングも行われている。
 しかし、高校を卒業して、大学に通わずに、e-ラーニングの大学教育に進むことを前提とした体制構築が進んでいるとは言い難い。
 e-ラーニングは、どちらかといえば、補助的な役割で発展しているように見える。

 例えば、大学卒業者が他の分野の展開するとか、科学の進歩に対応するためのアップデート、修士や博士といったより高い学位取得といったニーズに応えるものが多い。
 もっとも補助的といっても、市場の大きさで考えれば、教育の主流になる可能性は高い。

 これに対して、インドの場合は、大量の質の高いエンジニアを生み出すことを狙う。
 修士・博士コースも揃っているが、基本は大量の大卒者を生み出すための、教育システムである。
 理屈では、海外から、インドに対するディスタント教育も成り立つ筈だが、100万人を対象する仕組みはとても無理だろう。インドは、この大型教育システムに挑戦しているのだ。

 ここまで大型化した仕組みが動き始めれば、規模の経済が成り立つ可能性もある。
 そうなると、特段の高度な教育を望むのでなければ、コストパフォーマンスを考えれば、インドの教育システムがベスト、と言われるようになるかもしれない。
 (もちろんデファクト言語は英語である。)

 IGNOUの挑戦が大成功すれば、斬新なカリキュラムや魅力的な講師陣といった、プレミアム化のタネを持たない大学の価値は急落するだろう。
 大学教育は、コモディティ商品とスペシャリティ商品(プレミアム教育)に二分化されることになろう。

 --- 参照 ---
(1) http://pib.nic.in/release/release.asp?relid=819
(2) http://www.ignou.ac.in/aboutus/main.htm
(3) http://www.ignou.ac.in/news.htm#19survey


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