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2009.5.14 
 
 


大学におけるマネジメント教育の欠陥…

 このウエブ(RandDManagement.com)では、雑多な話題を取り上げているが、雑学的知識を披瀝したい訳ではない。   → 「雑学大王化の理由」 (2005.4.25)
 もともと、“頭にガツンと一撃”(常識的な発想、当然の論理、を壊すという意味)を狙ったサイトだから、面白知識の探索とは方向が逆である。従って、あえて失礼な表現を用いる場合もあり、お怒りをかったりする位。   → 「創造力を生む「ガツン」とは何か」 (2007.2.27)

 しかし、こんな話を聞かされても、「魚」や「食」といった話題も多いから、どうしてそれが「ガツン」に繋がるのという気分になろう。
 書く方からすれば、“スコープ”を広げ、頭を使ってみた実例を提示してみたのだが。頭を使うことが好きな人なら、素人話がかえって刺激になると踏んだということ。その結果、突然、物事の深奥が見えてきたりすると嬉しいのだが。
 ・・・これでは、かえってわかりにくいか。

 この話はここまでにしておいて、別な話。

 日本は、専門家が個人として意見を公表する場が余りに少ないし、まともな議論も滅多に行われない。そのため、外部の人間には、専門家の思考発展プロセスを眺める機会が極めて乏しい。その結果、専門家とは、地道に努力して、情報をまとめる仕事ばかりしていると考えてしまう。(実際そうかも。)
 これを裏返して言えば、日本の専門家は情報ばかり抱えており、その主張には“冴え”がないと見なしていること。
 この見方が妥当か否かはわからないが、新しい見方を提起できる専門家は稀と考えられているのは間違いないのでは。このことは、ズブの素人が時に鋭い指摘をすることに気付いているということでもある。

 だが、どうして素人がそんなことができるのか。

 思うに、これは雑な思考のお蔭ではないか。
 素人は知識量が乏しいから、「俯瞰→仮説→論理」を一気に行うしかない。それこそ、座興とか、気分転換に考えたりしているから、いい加減なのだ。
 従って、幼稚な話になったり、トンデモ論化することも少なくない。しかし、これは専門家の常識の範囲を無視するということでもあるから、“凄み”を感じさせる斬新な見方に繋がることもあるということ。

 それでは、どういう能力があると“冴え”が出るのか。

 おそらく、「鋭い勘」と「全体像を描く能力」だろう。
 無理に用語に直せば、前者は「洞察力」とか「直観力」だろうし、後者は「構想力」とか「大局観」。
 「分析力」や「論理構成力」も不可欠だが、それは専門家の得意分野。それが決め手ではないのだ

 ・・・これが、2つ目の話。

 この2つの話を合体させると、小生の問題意識がお分かり頂けるのではないかと思って書いてみたのだが。

 まあ、簡単に言えば、これから先、「直観力」や「大局観」を持つ人材に国を支えてもらう必要があると見ているということ。しかし、そんな人材はさっぱり育っていない感じがするのである。
 このままなら、座して、日本の衰退を見物することになりそうなので、「ガツン」を企画している訳。

 おそらく、一番の問題は、大学教育。

 日本の大学も、実務家を投入することで、純アカデミズムから、実践性重視に変えてきた。それはそれで結構な話。しかし、それが直観力や大局観を養うことに繋がる保証はない。逆かも知れないのである。

 よく考えて欲しい。
 実務家を入れれば、一般に視野は狭くなる。直接役に立たない話は、無駄とされて当然だからだ。そして、組織を動かすスキルを重視するようになろう。「分析力」や「論理構成力」をベースとしたコミュニケーション能力向上に力が入る訳だ。
 これはこれで、極めて重要。だが、斬新なアイデア創出のスキルが身につく訳ではない。ここを間違うとえらいことになる。

 イノベーション創出には、常識では無駄と思えることまで頭を使う必要がある。視野を広げ、対象分野全体を広く見渡し、全く異なる分野での話から類推したりすることで、新しい見方を作りあげる必要があるからだ。
 だが、こんな話を聞いて、別な分野の勉強をしても、斬新な発想が出ることは稀。スキルが無いからだ
 本来は、大学の教養課程を通じて、視野を広げ、「俯瞰」する力を養ってきた筈なのだが、実際にはそうなっていない。それでも、昔は、授業以外の刺激があったからなんとかなった。今はそれも期待薄。

 しかも、専門課程でのマネジメント的な教育がマイナスの効果を発揮している。
 内容が優れているものも少なくないが、問題は、実利的な応用になっている点。マネージメントを「アート」の側面で考えるなら、視野は広がるのだが、分析と論理の力を磨く教育が多い。
 これだけではこまるのである。「ガツン」を加えなければ、要領よく効率的に仕事がこなせる人しか育たない。能才だから、そんな人が加わることで既存組織は強くなる。
 ミクロで見れば、よさそうな施策だが、マクロではたいした効果は期待できない。そんな人は世界に五万といるからだ。しかも育成方法もわかっているから、世界中で増産されるのは間違いない。
 若い労働力人口が減っていく国が、そんな人材を育てていて、国力衰退を止めることができるとは思えないが。

 --- 参照 ---
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