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■■■ 「日本の樹木」出鱈目解説 2014.6.11 ■■■

ごちゃごちゃ命名木

ズミは、林檎の仲間。そのため、時に小林檎と呼ばれたりする。
しかし、小さな林檎と言えば普通は「姫林檎」を指す。にもかかわらず、林檎を称すのは、主として食用としていることを意味していそう。
一方、中国ではズミは「三葉海棠」、ヒメリンゴは「海棠果」。ズミは「果」物の木と見なされていないのかも。まあ、もともと、海棠は観賞用樹木だから当然といえば当然の話だが。
ちなみに、西洋林檎は「蘋果」で、和林檎は「沙果」である。
尚、海棠だが、日本では「"本"海棠」と呼ばれる。観賞用として人気が高い海棠は,花が下垂する「花海棠」(Ch.:垂絲海棠)の方。

さて、ここからが本題。
それでは、ズミという言葉は何ぞや。

普通は漢字では「酸実」と書く。実が酸っぱいことを強調している訳だ。従って、「酢」(スミ)から来た言葉だろうという説明には説得性がある。
しかし、よく考えれば、それなら「林檎」の一種であることを示す必要があるのではなかろうか。

ということもあってか、異なる語源説も有力らしい。「染」のソミだったというのだ。
と言うのは、樹皮が黄色染料に使われていたから。今と違って、コレ、極めて重要な用途な筈。従って、こちらの方が当たっていそうな感じもする。

ズミは、この程度でよかろう。

実は、検討対象にしたいのはズミではなく、ガマズミだから。ズミの一種とされた命名なのだろうが、どういう理由で「ガマ」なのか、さっぱり合点がいくまい。カマツカと言う樹木名なら鎌の柄に使われる丈夫な木とわかるが、「蒲」「ズミ」ではなんのことやらだ。

それはまずかろうということで、「神の実」と考える人もいるようだ。しかし、それは、さらなる飛躍的理屈付けでしかないように思える。祭祀に使われているとは思えないからである。
だが、なんといっても圧巻なのは、全国で見れば、200を越える名称があるという点。
なかには、そりゃそんな名前がつくかも、と思わせるものもあるとはいえ、余りに勝手かってな呼び方。・・・
赤豆、鼬の桁返し、牛の涎、烏の実、猿柿、ブラブラ(原文は漢字化されていない。)

『山形県「植物方言」誌』(鹿間廣治 東北出版企画 2007)には、下記の名称が収録されているという。似たものが多いとはいえ、ナンダカね状態であるのは間違いないところ。・・・
かすのは・よすずみ・あがすっかんこ・ぞみ・じみ・じょーみ・ぞーみ・そーみ・よつぐみ・みつずみ
まあ、ズミとほとんど変わらない印象。両者を区別できない表現だとしたら、疑問を感じざるを得ないが。

極めて、生活に密着している樹木だったから、目的に合わせて場当たり的に呼ばれたり、綽名がついたりしたということだろう。それが、そのまま、現在まで残ってしまったということか。

ところが、漢字表記だけは標準化されている。
」と実に難しい文字を使用する。誰が考えても、これをガマズミとは読めないから、中国での表記文字をそのまま利用することに決めたことになる。

そこで、中国語で眺めてみると、この植物への関心が高そうなのに驚かされる。
植物学的には、五福花科(J.:連福草)属とされており、世界で約200種だが、中国には74種存在するとされている。大陸の地域毎に別な種が育っている状況と見てよさそう。
シンプルなが基本形なのかは定かではないが、地域の冠名称の種だらけである。
朝鮮,蒙古,西域,甘粛,巴東,陝西,浙江,湖北,琉球(長筒),臺灣,南方,海南,雲南,欧洲,宜昌
もちろん、形態を示唆する名称を冠にした莢も少なくない。グループ分けもできているようだし、特徴的なものをピックアップすると、こんなところ。
鷄樹条,烟管,壺花,合軸
尚、珊瑚樹もこの仲間に該当するようだ。

和名にしても、このように冠名称をつけた莢にすればよさそうなものだが、そうはいかない。せいぜいが「丁子」ぐらいのもの。それぞれ独特な呼び方がされているところを見ると、昔から、そういう呼び方をしていた地域があり、無碍にする訳にもいかなかったと思われる。
胡麻木、大亀の木(虫狩)、肝木、藪手毬、男杳染

それは致し方ないが、訳のわからぬ名称がある。「男杳染」(オトコヨウゾメ)。
の実は食べられるし、果実酒は人気だったようだが、コチラは駄目。
解説によれば、だからこそ「男」という冠がついたというのである。男系社会であり、男尊女卑が徹底した時代が続いたというのに果たして本当かいな。
そんな疑問に答えられる筈もなく、語源わからずとしてお茶を濁すのが普通のようである。
思いつき的な語源解説が多いというのに、莢の場合に限っては、「不明」で納得するらしい。不思議な現象である。

でも、素人なら、語源など自明。
杳杳とした色に染め上げる材料という意味以外に考えられないからだ。
それをさっぱり「わからない」とする説明の方が余程解せぬ。
しかも、染める話からの命名なのに、冠言葉の「男」を説明するのに、実が食用になるか否かという視点を持ち出したりする。普通はこのような検討の仕方は、精神分裂症的と呼ばれ、避けるもの。ところが、そんな発想を当たり前と考える人が五万といるようだ。驚異的。
極く普通に考えれば、男性用衣に用いる染料となろう。

命名がゴチャゴチャというより、その解説がゴチャゴチャなのである。こまったもの。

(レファレンス事例詳細@NDL) さいたま市立中央図書館 (2210012)2013年03月13日 莢(がまずみ)という言葉について・・・http://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000128825

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