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1999
 
 


職人芸的なオンリーワン技術の賞賛は避けたい…

 最近、他社には真似できない技術で成功したということで賞賛を浴びている中小企業がある。携帯電話を始めとする小型電子機器に用いる電池ケースのメーカーである。

 この企業はもともとライター用ガスボンベのステンレス容器メーカーだったそうで、同業他社も沢山いたらしい。ところがプラスチックス製の100円ライターが登場したことにより、多くの企業が撤退し、こうした製品を作れる企業が激減したという。小型電池開発には液漏れしない小型容器が不可欠なので、当時の技術が復活した訳だ。

 こうした成功例は教訓を読み違え易い。「古いが優れている技術は勃興する産業への応用を図るべき」というマネジメント原則を指摘するだけならよいのだが、職人芸的に技術を突き詰めることに注力すれば成功の道が見つかると考えがちだからだ。
 
 極端な話、1000年の歴史を持つ筆作りの職人しか作れないような製品がハイテク分野で重要な役割を担っているからといって、そのような技術を磨くことを推奨すべきとは思えない。CDが登場したことで廃業の危機に直面したレコード針メーカーに対して、新しいハイテク応用がそのうち見つかる筈だから、ダイヤモンド・ピックアップ技術をずっと磨き続けるべきとアドバイスすべきとも思えない。

 魅力がなくなり研究者がいなくなるような技術を延々と追求し、「残り物には福」があると説くのは、無理があろう。時代の波に合った技術展開を図ることを重視すべきではないだろうか。

 技能の塊である職人芸を鼓舞するべきでない。どちらかといえば、こうした技能を技術にまで高める方策への挑戦が推奨されるべきだ。例えば、「試作品用金型を上手に作る職人のノウハウを、若いコンピュータ技術者がソフトに移し変え、新製品の金型製作期間とコストを半分に短縮した」というような研究開発での成功が、賞賛されるべきだ。情報通信技術を利用すれば、自らの強みを徹底的に利用することができるし、様々な応用発展も期待できるからだ。


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